G20が開催されているが、その内容はなかなか悩ましいところがある。各国は直接名指しできないものの、本当はアメリカに対して自制を求めたい、というのが本当のところだろう。しかし考えてみると、トランプ大統領の登場から後、世界はグローバリズムから反グローバリズムの流れへと潮流を変えつつある。グローバリズムとは、言葉の聞こえは良く聞こえるものの、本質は企業が安い国の労働者を使ってものを作り、関税を低くして先進国へ輸出して儲ける。つまり簡潔に言えば世界的大企業のみ儲けが大きくなるグローバル企業中心主義、儲け中心主義である。その影で日本やアメリカのような先進国は国内産業が空洞化し、デフレ化して国民の所得がどんどん低下してくるという現象が起きた。一部の富裕層と全体的に貧しい大衆。逆説的だが、グローバリズムで格差は大きく拡大したのである。内需拡大には、グローバリズムの考え方そのものを考え直す必要があるのだ。トランプ大統領の考え方の筋にそのヒントがあるように思う。
ジャパン・ディスプレイ(JDI)が中国企業の傘下に入ることが決定されたそうである。JDIはもともと経産省が音頭をとり、日本の家電メーカーの液晶技術を集約させたメーカーである。これをマスコミはおかしいとも恥ずかしいと思わないのだろうか?お役所仕事という言葉があるが、まさにその言葉通りの結果だ。JDIは税金を7000億円以上投入されて立ち上げられている。いわば国民の財産だ。資本主義のルールといえばそれまでだが、これまで企業が血のにじむような努力で開発を続けてきた技術が、”少々”の援助によって、他国にそっくり持って行かれてしまう。マスコミは経済について無知も甚だしい。吉本興業の事件がにぎ合わせているが、私に言わせればそんなことは”どうでもいい”のである。大と小、重要と瑣末、この判断がつかないとはなんとも情けない限りではないか?
フェイスブックが仮想通貨を構想しているそうである。大きな夢を描いて実現していこうとするプロセスは世界企業にふさわしいと思う一面もある、しかし、本当にそこに危険はないのか?と、いぶかる声も大きい。結論から言うと、フェイスブックが構想しているのは「国家の上にある企業」構想であると思われる。これは言葉を変えるとグローバリズムが理想とする世界なのである。企業の所有者、つまり株主がプラットフォームを支配し、最大のソフトであるマネーを使って、国にお金を貸し付けるいわばビジネスだ。EU諸国がそうであるように、通貨発行権を奪われた国家は主権を奪われたも同然、国自体が緩やかなお金の奴隷になる流れがあるのだ。アマゾンの意向に中小企業がなかなか逆らえないように、国がまるごと個人が所有する企業に縛られる。こんな未来はごめん被りたいものである。
フェイスブックの新仮想通貨リブラが話題になっている。しかし、仮想通貨というのは持っていると価値が上がる...と思うから買う。それは株や金と同じだ。金のような資産は少ないほど価値が高くなる。つまり、価値が上がると思うと仮想通貨を使わなくなる、そうすると価値が上がる...これをなんというか?答えは”デフレ”である。貨幣が資産ならば、もともとデフレになる傾向が高いのだ。誰しも自分の資産の価値が高いほうがいいだろう。通貨とは負債であるべきなのだ。なぜ負債であるべきなのか?それは、国家が通貨を発行する際に、”負債”もしくは”義務”であればこそ、国民のために貨幣を使わなければならない義務が生ずるからだ。フェイスブックに国民を幸福にする義務があるか?ありはしないだろう。彼らにあるのは自らの社業の繁栄である。通貨発行は義務でなければならない。それは通貨発行には国民に対する責任が伴うということなのだ。