化学系エンジニアの独り言

時の話題や記事の備忘録

天然ガスの価格

2006-05-22 | ガス
先週のNYMEXでの天然ガス価格(一月もの)は$5.997/MMBtuで15ヶ月ぶりの安値となった。直近の高値は2005年11月頃の$15/MMBtuであるから、大幅な低下である。しかし、昨年の冬はハリケーンの影響でガス生産設備は受け入れ設備が損害を受けていたという特殊事情がある。

今の時期から秋口にかけてはガス需要が減るので、地下貯蔵されるそうである。ところが今年はすでに2.08tcfになっており、この時期としては高い在庫になるそうだ。そのような影響で足元の天然ガス価格が昨年に比べて低下しているのだろう。

ところで、ガス価格は99年までは$2/MMBtu(British Thermal Unit)で安定したいたのだが、2001年に倍の$4、2003年は$5、2005年はついに$7となり、原油と同様に価格の高騰が続いている。基本的には石油よりも価格高騰になりやすいのだそうだ。

さて、ガスを扱う時の単位は熱量ならばBtu、体積ならばcf(cubic feet)という日本人にはなじみの無い単位である。それゆえ、$5/MMBtuといわれても日本に比べて安いのか高いのかどうもぴんと来ない。在庫が2tcfといってもどらくらいの量なのか見当がつかない。

そこでおよその換算をしてみた。Btu=1.055kJなのでMMBtuは1.055GJとなり、メタンの発熱量39.75MJ/Nm3で割り返すと、約25Nm3となる。つまりは、6$/MMBtuならばおよそ$0.24/Nm3ということになる。一般家庭のガス料金120/Nm3と比較してみると勘所が分かる。
一方、2.08tcfという在庫量を換算してみる。cfは28.3Lなので2.08tcfは約590億Nm3になる。日本の総一次エネルギー使用は24×10^18Jでそのうち天然ガスは13.1%なので3.14×10^18Jである。これをメタン熱量で換算すると790億Nm3となる。アメリカのガス在庫は日本の全ガス消費量に匹敵するくらいある、というのがおおよその理解であろう。

日中ガス田開発に関する協議

2005-10-03 | ガス
東シナ海のガス田開発に関する日本と中国の協議があった。
残念ながら協議は物別れというか、進展は無いようである。

中国は先日から日中の中間線付近(もちろん中国側)での天然ガスの生産を開始したようで、フレアでそのことを確認できた。また、プラットフォーム付近には護衛艦が待機しているという。

日本側は、そのガス田は日本側領海にも繋がっており、中国側の生産により日本の資源が吸い取られている可能性があると主張。中国側に地質構造データの開示を求めている。

中国のエネルギー事情は、今更言う必要もないくらい逼迫しており、アメリカ石油会社(Unocal)買収(結局は議会の反対で断念)や年中行事になった夏場の停電を見れば明らかである。なんとしても資源を確保したいと行動すること自体は自然である。
護衛艦まで出すのはやり過ぎと思うが、少なくとも中間線の自国側での採掘であるから、違法とはいえない。

日本は埋蔵量や生産量のデータではなく、地質構造のデータを要求しているのだから、中国側は開示すべきとしているが、果たしてそうだろうか。これらのデータはただで入手できるたぐいのものではないはず。それなりの時間とお金がかかったはず。
油田が繋がっていて自国の石油を吸い取られるとクウェートに侵攻したイラクの主張と今回の日本の主張にどれほどの違いがあるのだろうか。

そもそも資源開発は大きなリスクがありまた、資本投資も必要な事業のはず。人が掘り当てたフィールドにかんして、後から自分にも取り分があると主張しても、取り合ってもらえないのは当たり前だろう。
日本も中間線の日本側で早く採掘を始めればよいのであって、対抗策はそれ以外にないと思う。

中国が我が資源開発に躍起になるのは、資源が必要だからです。GDP1万ドルあたりの原油消費量は日本が1.20kL(世界一だろう)に対して、中国は8.23kLと7倍以上である。このエネルギー利用効率の低さこそが問題です。
東シナ海のガス田開発にかんする協議は局地戦(例えです。本当に戦争するわけではありません。念のため)として、大局的には日本の省エネ技術を中国に輸出する(原油価格が上がればあがるほど、省エネ技術の価値も上がる)ことが大事と思われる。