goo blog サービス終了のお知らせ 

蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

栽培 (27)

2006-10-30 | 栽培
最適な播種日を調べるために、98年には播種日の間隔を狭めた。
2m×2mの区画を4つ作り、8月10日から2日間隔に種を下ろした。各播種日に対応する収穫量は10a当たりに換算して示すと以下の通りであった。 8月10日:100kg 12日:90kg 14日:90kg 16日:85.5kg。

ところで、この年は、各種肥料、作付方法など様々な調査を行ったので畑を19区画にも分割したので、播種調査は各区画を4㎡と狭くせざるをえなかった。それゆえ、正確な数値が得られたかどうか確かではないが、前年よりもさらに早い時期に播種した方が収穫量が多くなることが示された。
また、この地域では、お盆は8月であるが、ソバを蒔くのはその前後というのが一般的とされているが、私の調査ではそれより少し早い播種日が好ましいと判明した。

しかし、この「丘の上の畑」では、借用し栽培している間は、8月16日を中心に播種することに決めていた。それは次の理由による。播種日が早いと徒長しすぎてしまい倒伏のリスクが高まるからだ。実際調査したときには、ひもを張り倒伏を防止して栽培した。より広い面積をいつも手をかけ栽培できるとは限らないので播種日を遅らせたのである。

最近私はいつ播種するかは、収穫日との関連においても考察しなければならないと考えている。それゆえ、次に収穫日について述べていきたい。



栽培 (26)

2006-10-28 | 栽培
1997、98年に、私の居住する地域で、一体秋ソバは何日に播種したら収穫量がピークを示すのかを調べた。この調査は「丘の上の畑」で行った。

まず、97年に、広さ18㎡の区画を6つ作った。これらの区画に5日間隔でソバを播種した。その播種日を8月5,10,15,20,25,30日とした。この異なる播種日毎の収穫量を、10a当たりの数値に換算して表すと次のようになる。8月5日:136kg 10日:94kg 15日:157kg 20日:135kg 25日:121kg 30日:46kg。 (なお、10日の収穫量が少ないのは、雨のために発芽が悪く、生育不良でもあった。) 

座標軸の縦軸に収穫量を、横軸に日付をとり、この座標平面上に10a当たりの数値をマークしていく(10日は除外)。そして各点を無理なく結んでいくと、上に凸の変形の放物線になる。問題はこの曲線の頂点が、何日になるかである。間違いなく、10日と15日の間となる。さらに、5日と20日の収穫量がほぼ等しいことから、単純にその中間と考えると12日あるいは13日となる。この辺りが収穫量が最大となる播種日と推測された。

この8月12日あるいは13日の播種が収穫量のピークとなるのではないかと考え、翌年には播種日の間隔をさらに狭めて栽培をした。

栽培 (25)

2006-10-24 | 栽培
③  播種日の「決定」

いつソバを蒔くかは難しい。
特に私のよう素人がソバの栽培を始めた場合、何もかも判らないのだが、まずは、いつソバを蒔いたらよいのか迷う。農家の方に聴いたり、播種しているのをみたりして次第に適期を特定していく。

ところで、興味深いことに、栽培に関心を持つと作物により播種適期の期間が長いものと短いものがあることに気付いていった。ソバは適期が非常に短いと思う。それゆえ、播種時期の確定は非常に重要である。

ソバは、周知のように、春ソバ、秋ソバ、中間型のソバなどがあり、それぞれの作期は決まっている。これを考慮に入れないと、ソバは収穫できない。
ソバ栽培の古老が、秋ソバは春に蒔いても実をつけないが、春ソバは、春でも秋でも実をつけると話すのを聞いたが、私自身は試していないので真偽のほどは判らない。
基本は、その時期と作型の合致したソバを選んで、播種することである。

次回、私が栽培している秋ソバの播種日をどのように決めていったかを書きたい。

栽培 (24)

2006-10-23 | 栽培
引き続きソバといえども発芽には水分が必要であることについて。

ある年、NBさんとソバを蒔いているときに次のような経験をした。仕事の都合上、大きな畑の一部分を、作の溝を掘ったままにしておいたことがある。翌日ソバの種子を蒔き、土を被せた。作たて後、即播種被土と翌日播種被土では、ソバの発芽に雲泥の差があった。溝を掘ったままでは、種子が接する土の部分が極度に乾燥してしまい、水分がまるでなくなってしまう。その結果、発芽率が低下したのではないかと考えている。
優れたソバ栽培農家は、夏の熱い日の日中に秋ソバを蒔くことなどしない。朝晩の涼しいときにソバを蒔く。乾燥が、発芽率を極度に低下させることを経験からよく知っているからである。

逆に水分が多すぎると思われる場合でも播種時のみに限って言えば問題はない。ある年、適切な立ち上げ本数を調べるために、30cm×30cmの6つの異なる広さに、種子数を変え播種した。この年は雨が多く、短い雨間を見つけて種を下ろした。狭い間を、区画を作るなど随分移動したので、畑はぬかるんで長靴が重くなるほどであった。しかし、発芽は平均的な年と較べてけっして遜色がなかった。最もこの畑は傾斜しており、水が下に流れやすい畑ではあったが・・・。

私は、ソバは水に弱くいかに水分を少なくするかが栽培の鍵であると考えているが、こと播種時にはこれが当てはまらない。発芽には適切な水分が必要である。



栽培 (23)

2006-10-20 | 栽培
②  発芽と水分

ソバは本当に水に弱い。畑に一部低地があり、降雨により冠水するなら、その部分のソバは全滅してしまう。しかし、成長の全ての過程で水分が少ない方がよいということではない。

唯一水分が特に必要な時がある。それは発芽時である。
『畑作全書』の「ソバ」でも、他の書物でも指摘されている通り、ソバの発芽時における水分要求量は低い。しかし、私の今までのソバ栽培の経験からは、次のように解釈した方がよいと思われる。すなわち、全ての作物には発芽時に絶対的水分要求量があり、ソバは他の作物と比較した場合その水分要求量は低い。その相対的差異は絶対的要求量からするならほんの些細な差異であると。私は、ソバといえども発芽には他の作物と同程度に近い水分が必要であると考えた方が、ソバの作付けは無難だと考えている。

播種時には、水分が必要であることを示す幾つかの例をあげよう。
1996年、ソバを播種する頃、雨も降らずよく乾燥していた。この地域では、秋ソバは通常4日で芽が出そろう。その年、私の畑のソバは、播種後10日経っても発芽しない。掘ってみると、種子はそのままの姿でいる。ところが、8月28日に雨がきた。すると翌日見事一済に発芽した。
明らかに水分不足であった。

栽培 (22)

2006-10-19 | 栽培
太陽の光をより多く受けるということは、朝早くから太陽が照らすということを意味している。それは、昆虫類によって受粉が行われるソバにとっては、好都合なのだ。
気象条件によって、ソバは夜露を受けてすっかり水分に覆われてしまうことがある。これでは、朝の訪花昆虫の数も少なくなってしまう。この受粉を行う昆虫類の活動は、午前中の早い時期にピークを向かえて、午後にはずっと少なくなってしまう。朝、勤勉な昆虫類がやってくる時に、依然水分が茎・葉に絡んでいるいるようでは、受粉もままならない。太陽の光によって、ソバの全体についた水分を速く蒸発させる必要がある。
この訪花昆虫のことを考慮しても、太陽の光をより多く受ける南東向きの傾斜地は、ソバ栽培に適している。

小高い丘の畑は、南東向きの傾斜畑で、その点では好適地であったのだが、問題点があった。それは、上方に雨が降ると長く水がしみ出してくる場所があった。やむをえず、上方に溝を掘って水を右左に流すようにしたのだが、上方一帯が他の場所よりも過湿になるのは避けられなかった。
この畑では排水を良好にするために、作たてを幾つかの方向で行ってみた。傾斜に対して平行でも、直角でも良くなく、斜めに作たてを行うことが良かった。この畑の傾斜の場合、傾斜面に引いた平行線に対して20度ほど角度をつけるのが最も好ましかった。

私は、現在、自宅の庭先の50㎡程にソバを栽培しているにすぎないが、ここは傾斜地ではないので、中央を盛り上げ高くした。土は少しでも移動させるのは大変だから、慣れない建設機械を操作して傾斜をつけた。これで、降雨による湿害もそれほど心配する必要はなくなった。

湿害を受け易いなど栽培が難しいソバも、適した地形を選べば、栽培は少しは容易になる。

栽培 (21)

2006-10-18 | 栽培
ソバは湿害を非常に受け易い作物である。成長の要所要所で、それほど多くない雨でも生育は阻害されてしまう。ましては、播種直後や長期にわたるの降雨の冠水にはひとたまりもない。

では湿害を避けるにはどうすればよいか。まずは、降雨があってもスポンジのように水分をしっかり吸収してしまう豊富な有機物を含む土づくりをすることであるが、ここで考えている地形的観点からは、傾斜地の選択、畑に傾斜をつけること、高めの畝立てなどをすることである。

私は今までに異なる数ヶ所でソバ栽培を行ってきたが、長期栽培の畑は次のような選択や施策を施した。
自宅から2キロほどの距離にある小高い丘の畑は、次のようにして決めた。総じて南向きの畑がよいのだが、南東向きの斜面はさらに良い。ある時、融雪の速度が気になった。最も速く雪が溶けるのは、平坦地でもなく、南向きの斜面でもなく、南東向きの斜面であった。すなわち、この南東向きの斜面が最もよく太陽があたるというわけだ。そこで、南東向きの傾斜地を探し、小高い丘の畑を借用した。

栽培 (20)

2006-10-17 | 栽培
①  地形について

ソバ栽培には、地形や畑の形状が重要な要素になると思われる。「霧下ソバ」という言葉をよく耳にするが、これは霧が発生するような地形がソバ栽培には適しているということである。
ではなぜ霧が発生するのか。それは昼夜の温度較差が大きいからである。日中気温が高く、夜間に空気が極度に冷やされると、空気中の水分が飽和状態を越え小さな水滴になる。これが霧である。

ではなぜ霧が発生するような、昼夜の温度較差が大きい場所が、ソバに適しているのか。ソバだけでなく植物は、日中太陽の光を利用し盛んに光合成をする。光合成により、栄養分すなわちデンプンを自分の体内に蓄積する。一方、植物とて生命を維持するために、生命活動すなわち呼吸を行う。呼吸を行えば、自ら蓄えた栄養分を消費する。夜間には光合成を行わないから、栄養分を使うだけである、この栄養分の蓄積と消費の差が、果実などとして植物体に貯蔵される。これが、ソバの場合種子あるいは実である。
だから、霧が発生するような、昼夜の温度較差の大きい場所がよいことになる。

ところで、霧と雲は、空気が冷やされて水分が小さな水滴になるというメカニズムは同じである。山の頂あるいはその上方にある白い塊を霧とは云わず雲という。地表近くから煙のように立ち上るのを雲とは云わず霧という。私達は、この地表近くに発生する霧が、通常谷間から立ち昇っているのを目にする。
それゆえ、昼間は太陽に照らされて温度が上昇し、夜間には急激に空気が冷やされるという条件を満たす、南向きの谷間に位置する畑がソバ栽培の最適地ということになる。

栽培 (19)

2006-10-16 | 栽培
栽培第3期 1998年から現在 現代の栽培技術に関心を持ちつつ依然模索の段階

1998年以降のソバ栽培も、栽培2年目の蕎麦に遠く及ばないために、失望の連続であった。
98年からは、その前年に『畑作全書』のソバの項を読んで、次第に現代の栽培法に関心を移行させて行った。90年代の終わりに、中嶋常允さんの著作を経て、現在では、武田健さんや東京農大の後藤逸男さんの土壌学の理論に基づく作物栽培法を注視するに至っている。

私は、この農法については学び始めたばかりであるが、この理論に則れば香りの高い美味い蕎麦がいとも簡単にできるとは思っていない。ではなぜそれに取り組むかと云えば、この土壌学に基づく栽培法が栽培の基本に思えるからである。これを考慮しなくてはいい作物はできないと思われる。十数年もソバ栽培をやってきて、やっと基本にたどりついたところである。
この土壌学を基礎にする土づくりを学び、何をプラスαすればうまいソバができるかを、今後探っていきたい。

ところで、98年から現在に至る、私のソバ栽培への取り組みについては後に詳述するとして、次回から、栽培の始めから取り組んできた幾つかの試みについて触れていきたい。

栽培 (18)

2006-10-13 | 栽培
⑤  リン酸が、ソバの生育には重要であるが、それは作物には吸収されにくいというのを、比較的早い時期に知った。ある時、『肥料便覧』(「農文協」)で、VA菌根菌という微生物資材があることを読んだ。この微生物は、植物の根に共生し、胞子から菌糸を土壌中にのばし、リン酸を効率よく吸収して作物の生育を助けるのだという。
このことを知ったので、JAのKIさんに相談すると、彼があるメーカーの方と掛け合ってくれた。その結果この微生物資材を提供していただけることになった。ネギには非常に良く共生し効果が確認できているが、ソバでは判らないので試行してほしいということから話が進んだ。
同じ肥料の対照区を作り、一方にこの資材を投入してソバを栽培してみた。残念ながら、ソバ栽培の結果では、収量でも香りにおいても特別な変化はなかった。

EM菌をソバ栽培に用いたのは、1994~97年までの4年間である。①~⑤の試みもほぼこれと同時期であった。とりわけ、それぞれの栽培結果について述べて来なかったが、十分満足のいくソバは収穫できなかった。ただし、EM菌のボカシは、間違いなく収穫量を増加させた。
微生物の扱い、ボカシ肥料の作り方には難しい面があるので、私のソバ栽培への利用が十全なものであったかどうかは確証がないが。

私は、今は、作物栽培において微生物を次のように把握していけばよい考えている。
自然界には無数の微生物がいる。所与の自然条件の中で、いい基質が与えられば、それに見合った微生物が爆発的に増加する。それゆえ、例えば、大量の落葉などの畑への投入が、いい作物をもたらしてくれるのではないかと考えている。これが、現在の私のスタンスである。