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蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

栽培 (37)

2006-11-14 | 栽培
前回、10a当たり3kgの播種量を1つの目標にしたらどうだろうと書いた。もちろん、それは一度にその量まで減少させれば、リスクが伴うから、1つの「目標」とし、5kgから4,5kg、4kg、3,5kgと次第に少なくしてみたらという提案である。

しかし、本来的には次の意味を含めている。例えば、4kgの播種量にするには、誰でも、種子を精選するという意識が働くであろう。精選された種子ならば、5kgに満たなくても、それと同等の収穫量が望める。いい種子を使えば、発芽率も苗立歩合も高まろう。さらには、1個体がつける子実の数も多くなるであろう。これを毎年毎年続けていけば、播種量は減少できる。

すなわち、この種子の精選の継続は、単に播種量の減少のみでない大きな意味ももつ。それは、ソバの品質の絶えざる向上をもたらすのである。換言するならば、これは間違いなく育種(品種改良)である。長い年月をかけながらの、広い意味での紛れもない「育種」である。

すでに書いたが、「信濃一号」や「常陸秋ソバ」を遙に凌ぐ、本当にいいソバは、もう日本の幾つかの地域にしか残っていないという。おそらく、これらの極上の在来種は、その地域の気候とか様々な好条件が関与していようが、その地域を形成する農家の人達が、いい種子を選んで、何十年も、いや何百年も作り続けた結果なのではあるまいか。

隔離栽培でいくら上質の形質を持つ「ソバ」を固定しても、虫媒花のソバは開放区で栽培してしまえば、たちまち交雑してしまう。
選りすぐった種子を、地域全体で、営々と栽培し続けるよりも重要なことが他にあるだろうか。

栽培 (36)

2006-11-13 | 栽培
2) 適切な播種量
  
一搬に、10a当たりの播種量は約5kgと言われている。
『畑作全書』の「そば」の項では、次のように述べられている。「適当な栽植密度の基準を1㎡当たり立毛数100個体ていどとみている。」
これを「苗立歩合(播種粒数に対する立毛数の割合)」を「圃場試験」における「76%」を利用すれば、10a当たり約4.7kgとなる。『畑作全書』においても5kgに近い数字である。

私は、この約5kgという数値も、立毛数100個体/1㎡という数値も、基本的に多すぎるのではないかと考えている。倒伏回避という観点からだけみるならば、播種量は少なければ少ないほどよい。少ないほどソバの茎は太く、丈夫で、頑強になる。

もちろん播種量が少ない方が倒伏の恐れが減少するからといって、播種量をどこまでも減らせるものではない。なぜならば、播種量は収穫量と密接に関連しており、収穫量を全く無視することはできないからである。
それにしても、私は、最も多くの収穫量をもたらすのは、播種量5kgなどより遙かに少ない量が適切なのではないかと考えている。播種量を5kgから減少させていけば、収穫量は増加していく。しかし、収穫量の増加はどこかでピークをうち、減少に向かう。私は、このピークが3.5kgから2.5kgの間にあるのではないかと推測している。例えば、3kgの播種量とすれば、1㎡当たりの播種粒数約107粒〔{3000×(1000/28)}/1000〕となり、苗立歩合76%を用いれば1㎡当たり立毛数約81個体となる。

私は、この播種量3kg/10a辺りが1つの目標値ではないかと考えている。実は、この「目標」とするというところに重大な意味を含めている。

栽培 (35)

2006-11-11 | 栽培
ソバの倒伏は、茎そのものの脆弱さが解決されない限り、根本的に解決されることはない。しかし、手を拱いているわけにはいかない。栽培方法を工夫することから、何が可能なのかを探っていきたい。

倒伏を防ぐには、次の4つが必要である。 1)適切な施肥量 2)適切な播種量 3)播種日が適切であること。さらに、4)土寄せすることである。以下順次これらを検討していきたい。

1) 適切な施肥量  

倒伏の最大の誘因は、過剰な施肥と過剰な播種量である。ところで、「ソバはやせ地がよい」などの言葉をよく耳にする。私は、ソバも他の作物同様に植物体であるからには、適切な量の「栄養分」が必要であると考える。「栄養分」が供給されて始めて、充実した子実をつけられるのではあるまいか。では、なぜ人は「やせ地がよい」と言うのか。

ソバには他の作物とは異なる特別な「能力」がある。岩手大で長年ソバの研究に従事された菅原金治郎氏の『ソバのつくり方』には、「ソバの根は、ギ酸、酢酸、レモン酸やシュウ酸を分泌するので、水に溶けにくい肥料成分などを溶かして、土のなかの養分をよく吸収することができる。」という記述がある。
この吸肥力の強さゆえ、ソバは他の作物が生育できないところでも栽培されたために、いつしか「やせ地がよい」などと言われるようになったのではないか。
結局、正確に言えば、「ソバはやせ地でも育つ」ということになるのだが、それゆえにこそ、肥料を投入すれば、多肥になり易い。ソバの場合、この多肥が容易に過肥になりがちなのである。

問題は、肥料をどの程度施したらよいかを知ることである。しかし、この適量を判断するのは難しい。おそらく、正確に知るには、土壌分析するしかない。その土壌分析で注目すべき項目は、EC(電気伝導率)である。実際のソバの生育具合とこのECの数値とを比較しながら、適切な施肥量を探って行くことである。

今年のソバ栽培で東区のECは、0.15mS/cmであった。この東区のソバの草丈が1m10cm弱であり徒長しすぎであったことを考えれば、この少ない値さえも下げる施肥設計をすることが必要だと考えている。


栽培 (34)

2006-11-10 | 栽培
ソバには倒伏し易い時期がある。
激しい雨や強い風があれば、ましてや台風が来れば、いつでもひとたまりもなく倒れてしまうのだが、容易に倒伏してしまう時期がある。それは2回やってくる。

最初は、徒長が最も著しい、播種20日頃から35日頃である。その中でも、その初期の頃の倒伏が一番心配される。しかも、悪いことに、この地域ではこのソバの成長段階が、雨の多い9月となる。不利な自然条件と急激な徒長期が重なってしまうのである。
この時期、徒長をいたずらに促すのは肥料が過多であること、播種時期が早すぎることである。

倒伏し易い2つ目の時期は、ソバの成長がほぼ頂点に達する頃である。この時期に葉の数も大きさも、すなわち葉の全表面積が最大となる。最大となった時に雨が降れば、葉に付着する水滴も最大となる。その重さにソバの幹は耐えきれず倒れてしまうのである。この時期には、ソバがそこまで順調に生育し、たくさんの小さい花を咲かせ、葉が青々としているので、収穫が保障されたものと考えてしまう。だから、ここで倒れると本当に悲しい。
この時の倒伏の最大の原因は、密植である。

次回は4つ目の論点として、倒伏を防ぐにはどのような方策があるのか、栽培方法の観点から探っていきたい。

栽培 (33)

2006-11-09 | 栽培
ソバの倒伏に内的要因があるとすれば、外的要因もあるだろう。おそらく、自然条件が好適であるならば、ソバは倒伏することはないかもしれない。もっとも、栽培方法が適切であればという条件がつくが・・・。
では、ソバ倒伏の外的要因とは何か。それは、雨と風である。

すでに、ソバが湿害を受けやすいことは述べたが、雨には実に弱い。ソバが小さい時に雨が多ければ、根が「とけて」なくなってしまうくらいだ。
ソバは成長し長雨にさらされれば、幹が弱り水分が葉に付着し重さに耐えきれず、上部から湾曲しついには地面についてしまう。その途中で、あるものは耐えきれず折れてしまう。折れてしまえば、そこで水分や栄養分の移動が遮断され、それよりも上部は枯れてしまう。折れないまでも、地面につくほど倒れたものは、植物の持つ屈光性の性質により頭を持ち上げるが、まともに子実をつけることはない。

倒伏を誘発するのは、雨だけではない。風もある。強い風が吹けば、それにもてあそばれ、ソバはやがては倒れてしまう。近くに木や家屋などの障害物があれば、風は舞ってしまい、倒伏方向は「むちゃくちゃ」になってしまう。こうしたソバの収穫の困難さは容易に想像されるところである。

雨と風、それらは単独でも、ソバ栽培には大きな影響を及ぼすのだが、その両方が同時やってきた時には、被害は何倍にもなる。台風は、雨と風が伴うのだから、ソバ栽培の最大の「敵」である。だから、台風の到来が予想される時には、ただ静かに通り過ぎるのを待つかあるいは進路が変わるのを祈るだけである。

今回は、倒伏の外的要因について考えてきた。次には3つ目の論点として倒伏し易い時期はいつなのか考えてみたい。

栽培 (32)

2006-11-07 | 栽培
⑤  ソバの倒伏について

ソバは本当に倒れ易い。全作物の中で最も倒れ易いかどうかは判らないが、間違いなく倒伏耐性が低い作物に分類されよう。
稲作は、作況指数が95にもなろうものなら大変なことである。それがソバならば、指数が50など驚くに値しない。20、30さえあり得る。(もちろん、稲作の場合指数が95でも問題にされるのは、米がメジャーな作物であるからだが・・・)このソバの収穫量の不安定さの大きな原因となるのが、倒伏である。

倒伏は、収量の減少をもたらすだけでなく、収穫作業を困難にさせるなど実に大きな問題である。
今年もNBさんの話によれば、生育は順調であったにもかかわらず、倒伏が広範囲に発生し、収穫量は意外に少ないとのことである。

では、なぜソバは容易に倒伏してしまうのか。
それはソバそのものが抱えている内在的要因がある。ソバは、自らの木につける葉などの重さに対して、茎を支える役割も果たす維管束が脆弱なのである。茎が脆弱であるならば、葉の数はもっと少なければならないし、葉の数が多ければ、茎はもっと丈夫でなければならない。この両者がアンバランスなのである。
このアンバランスを解決する1つの方法は、「信州大ソバ」のような丈夫な茎をもつソバを開発していくことである。

栽培 (31)

2006-11-06 | 栽培
播種日を遅延させれば、ソバの草丈はいたずらに徒長することはない。今年は、8月23,24日に多くの補植を行なった。この補植のソバ丈は1m前後の適度の高さとなった。では、このあたりの播種日でよいのか。この23、24日頃では、4日後の発芽し終えてからの補植では遅すぎる。なぜ補植などにこだわるのかと訝しく思うだろうが、播種量が10a当たり1kgにも満たない量を蒔くのだから、発芽しないところが発生すると重大なのである。

さらに、8月25日頃からは、収穫量が急激に下降してしまう。ソバ栽培の第1の目的がその香りであり、収量ではないとしても、あまりにもそれが少なくなるには問題が多い。20日前後にはどうしても播種したい。

ソバの草丈を押さえるには、3つの方法が考えられる。上記の播種日の遅延、減肥、多量の播種量である。ここでは播種日を主題に考察しているのだが、都合で3つ目の播種量についても述べておきたい。

播種量を少なくすれば、ソバの木は大きくなる。逆に、多くすれば徒長が抑えられる。今年は、10アール当たり1kgにも満たないソバを蒔いた。この量では、草丈が高くなるのは当然のことである。しかし、播種量を多くすることもできない。それは、ソバが生育している時に、観察したり、虫がいれば捕殺したりするために畑に入りたい。そのためには、約1kg/10aの播種量とせざるをえない。だから、播種量を多くすることによって、ソバの草丈を抑制することもできないのだ。

8月20日前後の播種でソバの草丈を1m程にするには、残る肥料の面から解決するしかない。それは肥料のことを論じる時に考察したい。

栽培 (30)

2006-11-04 | 栽培
ところで、現在は播種調査をした「丘の上の畑」ではソバを栽培していない。今は、庭先の50㎡に満たない広さで栽培しているにすぎない。ここでは8月20日前後に、種子を下ろすことにしている。それはなぜか。

「丘の上の畑」付近は、全般的に言って秋の作物の成熟が早い。それは冬の到来が早いからである。例えば、初霜は私の自宅から2km程しか離れていないにもかかわらず、かなり早くやって来る。ここ自宅付近では11月に入らなければ初霜は来ないが、丘の上では10月末にはやって来る。丘の上で野菜を栽培している篤農家は10月25日には初霜が来ることがあると言っていたが、事実私が蕎麦を栽培している数年の間にも、10月26日に初霜が来た年があった。
かくして、季節の移り変わりの早い「丘の上の畑」で8月16日にしていた播種日を、自宅の庭先の畑では8月20日にしたのである。

今年のソバを、播種日という観点から検討しておこう。今年は、8月19,20日に播種し、10月20から27日に収穫した。栽培期間は62日から68日間であった。
草丈は1mを越え1m10cm弱となった。少し草丈が高すぎた。これは、茎の上部の節間が長くなりすぎたことから判断できる。これが、10月に入ってからの関東の南海上を通過した2つの台風のために茎の先端が折れる原因となった。ソバの茎の上部に実るソバは、上質の子実である。それゆえ、これが収穫できなくなることは重大事である。

だから、ソバの草丈を1m前後に抑え込みたい。それには、1つには、播種日を遅らせる方法がある。しかし、そのようにはできない事情も一方にはあるのだ。

栽培 (29)

2006-11-02 | 栽培
収穫を決めるのは、当然のことながら、ソバの成熟状況を見ながら決める。具体的にはソバの実の褐変率を目測で推定して判断する。
私は、この目測で褐変率が50%を越え60%程度と判断できるところを収穫時期と決めている。では、なぜこれを収穫時期としているのか。

蕎麦が香りが高いのは、間違いなく、早刈りである。20~30%の褐変率で刈り取り、乾燥を控えめにすれば本当に香りが高く美味い蕎麦が味わえる。しかし、私はこれほどの早刈りはしない。それは、翌年の種子としてソバの子実を用いるからである。もちろん、早刈りでも発芽するから問題ないという見解があることを承知しているし、発芽もするだろう。しかし、毎年毎年作り続ける種子として適切とは私には思えない。

では、よく成熟させたらどうか。例えば、80%の褐変率というように。言うまでもないことだが、これは種子にはよいが、香り高い蕎麦という条件は満たしてくれない。

このような理由で、私はソバの実が少なくても半分以上が褐変し、60%に至るところが収穫に最もふさわしい時期と考えている。

栽培 (28)

2006-10-31 | 栽培
④  収穫日の決定

現在私がソバを栽培している場所では、68日間の栽培期間を目安に考えている。「栽培 2006season]でも書いたようにこれは少し長い作期かも知れない。それは有機肥料を使うと葉が青々とし、光合成を行いデンプンを貯える期間が長くなるからである。従って、作期は勢い長くなる。それゆえ、68日間の作期を目安に収穫を考えている。

ところで、栽培期間は播種日によって大きく異なる。播種日が早いほど、作期は長くなり、播種日が遅いほど作期は短くなる。例えば、播種調査を行った97年の8月5日のソバの作期は83日間であり、30日播種のそれは66日間であった。これはソバの成熟が秋ソバでは、短日条件と気温の低下の2大要因によってもたらされるからである。ということは主に外的要因により、ソバはいつ蒔こうとも(あまりずれていなければ)、ほぼ同時期に成熟することになる。つまり播種日により、作期の長短が決まり、収穫時期が決まることになる。

しかし、気象の移り変わりは毎年同じではない。とすれば、収穫を決める他の基準を設定しなければならない。