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蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

栽培 (47)

2006-11-27 | 栽培
炭焼き窯の形について

炭焼き窯の形は、考えてみれば奇妙な形をしている。入口(焚き口)から入ったところが狭く、次第に広がり、奧が瓢箪の「おしり」のような形で急激に萎んでいる。あるいは、全体が「らっきょう」のような形をしていると言っていいかもしれない。始めはなぜそのような形をしているか判らなかった。しかし、炭焼きを進めるに従って理由が判明してきた。それは、火の回り方から、炭の出来具合が一様ではないからである。いい炭が出来るところは広くなっているのである。おそらく、高さも含めて、ベストな炭焼き窯の形は、途方もなく思考を巡らさなければなるまい。


竹炭焼きの実際について

炭焼き窯が出来れば、竹または木などをいよいよ実際に焼いていくことになる。まず、炭にするとは、どのようなことなのか理論的側面から考えてみよう。もちろん、当初、私はほとんどこうした発想はなかった。しかし、炭焼きの本質を考えるようになって少しずつ進歩するようになった。

周知のように、生物のつくりとはたらきの基本単位は細胞である。この細胞は、核と細胞質からなり、その外側は細胞膜に包まれている。動物細胞とは異なり植物細胞にはさらに葉緑体、液胞、細胞壁がある。細胞質は、核のまわりのドロドロとした液状の部分であり、液胞は、排出系が不十分な植物細胞が不要物をためておく一種の袋である。植物細胞には、細胞膜の外側を固い細胞壁が包んでいるために、植物体をしっかりと支えることができる。
炭にするということは、炭焼き釜の中の温度を次第に上昇させることによって、水分の多い細胞質や液胞などから水分を追い出し、固い細胞壁を残していくことなのである。

これが、炭焼きの原理であるならば、一体どのようにすれば、いい炭が焼けるのか。

栽培 (46)

2006-11-25 | 栽培
炭焼き窯の屋根・天井について

炭焼き窯を造る時には、窯の屋根・天井が落下しないようにするのが大切であると考えていた。確かに、それは重要なのだが窯の屋根には、実に重大なことが含まれていた。それは屋根の厚さである。これは、竹炭焼きを止めてしまう頃になって気づいたことである。

炭焼き窯の屋根は、相反する2つの役割を果たしている。放熱の防止と促進である。窯に火を入れ温度を上げている時には、屋根は放熱を極力防がなければならない。一方、窯の火を止めてからは、窯の温度を急激に下げなければならない。放熱は、壁が分厚い横などからはままならない。唯一屋根のみ、放熱の促進が可能である。なぜ、放熱を促進する必要があるのか。窯の温度を急激に下降させることによって、引き締まった固い炭ができるからである。固い炭はいい炭の絶対的条件である。この放熱の防止と促進に最適な屋根の厚さがあるはずである。私には、この厚さが一搬的に言われている10cm(頂上部)が、最もよいのかどうか判らない。竹炭用の窯の屋根は、木炭用のそれより薄くする必要があるだろう。

当初、炭焼き窯を造る時には、上記のようなことは微塵も考えもせず、単に屋根が落ちない窯を造ることしか頭になかった。屋根の厚さは、端からドームの天井に向かって七五三の割合にするのがよいと聞いていた。しかし、どのような角度で中央まで上昇させていけば堅牢になるかは判らなかった。しばらく考えていたある日、自動車でアーチ型の橋を渡った。その時、このアーチの角度が最も強度が大きくなる角度ではないかと考えた。すぐに写真を撮り、引き延ばした写真を計測し、角度を決めた。

実は、この後、県の「農林振興センター」で炭焼き窯造りの小冊子を入手した。これは、窯の形状の決定などに大いに参考になった。この小冊子で示されている天井の角度は、橋のアーチの角度と全く同一であった。



栽培 (45)

2006-11-24 | 栽培
炭焼き窯を造るにも、竹を焼くことについても仲間とよく議論した。酒を飲んでの議論には、激昂し大きな声で怒鳴り合うこともあった。しかし、不思議なことに、遺恨が残ることはなかった。たかが炭焼きと人は言うかも知れないが、その難しさ故に議論はつきなかったのである。

これから書くことは、私自身の考えばかりでなく、仲間の人たちの考えも含まれている。それは、今では誰の意見か議論の中でどう採用されていったかなど、峻別つかないからである。まず、この点について仲間の人たちにお許しを願っておきたい。

竹炭を作るには、当然のことながら、炭焼き窯が必要である。窯を造るには幾つかのポイントがある。それは窯を造る土、窯の入口と出口(煙突)、窯の下側と屋根、窯の形である。いずれも重要なのだが、長くなるので、窯の下側、屋根、形の3点についてのみ触れてみる。

まず、炭焼き窯の下側について。

窯全体が湿気を持つのは、絶対に避けなければならない。しかし、窯は2重の意味で湿気にさらされる運命にある。1つは、窯自体が土中に造られているので、周りから水が差し込み易い。雨など降れば、特にそうである。2つには、炭にするいうことは竹であれ木であれそこから水分を蒸発させることなので、窯や煙突部分が水蒸気で満杯となってしまう。

これを避けるために窯の下側に工夫を凝らすのである。窯を造る時には、少し深く掘る。そして、奧から入口に下降する傾斜をつけて、最下段に丸木や細い枝を敷く。その上に土を盛り窯の床とする。すなわち窯の下には空間が出来ることになる。さらに、煙突の真下には小さな石などを並べ、落ちてくる水滴(竹・木酢液)は窯の中には入らないようにし、その水滴は下の空間に流れ込むようにする。床の上面にも傾斜をつけておく。こうして、一目見ただけでは判らないが、窯の下側には工夫を凝らし、窯は出来るだけ、乾燥し易くしておくことが重要なのである。

栽培 (44)

2006-11-22 | 栽培
1998年以降、幾つかの農業資材を試みてきたが、竹炭と落葉についてのみ書き記すことにする。そして、締め括りとして現在の私の考えについて述べたい。次の ① 竹炭について ② 落葉について ③ 現在考える土づくりについて ④ 育種について の4つのテーマで進めたい。

① 竹炭について

私は、ソバに生かせる農業資材はないかと気にかけるのが習性となっているが、竹炭の効用がマスコミ界等で静かに語られるようになった時、ソバ栽培にそれを利用してみたらどうだろうと考えた。そんな矢先、あるJAの直売所で竹炭が販売されているのが目にとまった。幾ばくかを購入し、教えてもらった生産者を訪ねた。それを機会に数回訪問し、炭焼きの始めから終わりまでを見せていただいた。

この先達の教えをもとに、「現代農業」の記事などを参考に、ドラム缶で竹を焼いてみた。数回試みたがうまくはいかなかった。今考えれば温度不足であったが、ドラム缶ではうまくいかないと諦めてしまった。

それからどのくらい時が経過したがわからないが、ある時数人の友人と酒を飲んでいるとき、竹を焼いてみようということになった。仲間5人で炭焼き窯を造ることになった。

栽培 (43)

2006-11-21 | 栽培
1998年以降、私のソバ栽培への問題意識の変遷について触れる前に、少し長くなったが前回まで6つの視点からソバについて述べてきた。これらは、蕎麦の味を直接的に変えるものではない。それゆえ、私の問題関心からすれば、2次的な問題である。私にとって最大の目的は、香りの高いうまいソバを作り出すことである。栽培の最終章として、この問題にもう1度立ち返って、この論考を進めたい。

まずは、ソバ栽培を開始して以来使用した肥料等の一覧表である。
リン酸肥料:骨粉 バッドグアノ 熔成リン肥 
カリ肥料:木灰 竹灰 ヤシ殻灰 スギの皮灰
中量要素:硫酸苦土
微量要素:「メりット」 「グリーンセーフS」 ニガリ
穀物(類)粉:米糠 大豆油カス 菜種油カス ふすま(麦糠) 蕎麦粉
堆肥:乾燥鶏糞 乾燥牛糞
落葉(腐葉土):広葉樹(ナラ、クヌギ等)の葉 樫の木の葉 イチョウの木の葉
海産物類:昆布 カキ殻 カニ殻 
微生物関係:EMボカシ EM培養液 光合成細菌培養液 乳酸菌 酵母菌 VA菌根菌
その他:竹炭 木炭 「合点ペーハー」 ピートモス

いずれも使用する際には大きな期待をしながら、そのほとんどが失望に終わってしまった資材である。すでにこれらの幾つかにについては述べてきた。次回からは1998年以降、特に期待し使用してきた落葉、竹炭などの幾つかの点について述べていきたい。さらには、うまいソバはどう栽培すればよいのか、その可能性を探っていきたい。




栽培 (42)

2006-11-20 | 栽培
私が、試行した収穫量の多い播き幅、畝幅は次通りである。

井上氏らの調査を参考に、幾つかの栽培実験を行った。その中で、播き幅:30cm、作間:60cm、畝幅:90cmの場合の収量が最も多く、1回は10a当たりに換算して210kgであり、もう1回は185kgであった。ちなみに、この時の播種量は10a当たり約2.7kgである。
この他に試みた中では、播き幅20cm、畝幅80cmが比較的よい結果が出ている。しかし、前者の方法には及ばなかった。

播き幅が広いほうが収量が多いのだが、次の点も興味深い。それは、両方とも作間が60cmであることである。おそらく、ソバの生育中は通路の部分に大きな空間があり空気がよく移動する。そして、ソバの木が最大となる頃に作の両方からソバの上部が接近してくる。こうして、ソバは太陽の光を最大限に享受する。このあたりに、収穫量が多くなる秘密があるかもしれない。

播き幅30cmのケースは収量が多いが、作業に困難が伴う。播き幅が広すぎるために、播種後土をかけるのが困難である。
私は現在、比較的いい収量を示している播き幅20cm程を目安に栽培している。 (もっとも、播種量が約1kg/10aと極度に減らしているので、収量は少ないが・・・。)

栽培 (41)

2006-11-18 | 栽培
私は、農学の分野でトレーニングを受けていないので、時折用語の使用法が判らなくなるときがある。次の用語も適切かどうか判らないので、ひとまず決めてからスタートしたい。
播き幅:種子が播かれる床内の広さ  作間:種子が播かれていない部分、いわば通路部分  畝幅:2作の播き幅の中央間の距離

井上氏らの調査による収量上位2農家に共通する点は、この播き幅、作間、畝幅がいずれも、私のそれまでの経験からすれば、とてつもなく広いことであった。最も収量の多い農家は、播き幅:30cm、畝幅:85cmであり、次の農家は、それぞれ20cm、80cmであった。そして、計算すれば両農家共、作間は約60cmとなる。これだけ作間があれば、畑の中を風がよく通る。あるいは空気がよく移動する。私はここに収量が多くなる最大の鍵があると考えた。

そこで、そのころ栽培していた「丘の上の畑」で次のことを調べてみた。畑の端と中央寄りの1㎡の2区画を決め、収穫量の差を計測した。すると畑の端の区画の方が、10a当たりに換算すると30kgも多かった。畑の端は、風もよくあたるし、太陽の光もよく受ける。
作間を広くとることによって、畑の中央寄りでもこの畑の端と同じ状況をつくってやればよいと考えた。

また、私の家から少し離れたところには水田が広がっている。休耕田が少しずつ増えてはいるが、まだまだ、季節毎に稲作のいい光景がみられる。犬の散歩をしながら、田んぼを眺めるのが私は好きだ。その田んぼの中に、作間も株間も「異様に」広くとっている水田がある。その農家の人に話を伺うと、以前、慣行農法で栽培していたときの約2倍の収穫量があるとのことであった。

井上氏らの調査や以上のような話から、播き幅、作間、畝幅を広く取ることによって収穫量は多くなるかを試してみることにした。

栽培 (40)

2006-11-17 | 栽培
⑥  収穫量について

私がソバを栽培しているのは、香り高いソバがほしいからである。だから、増収のための方策はあまり考えて来なかった。全国平均の収穫量である10アール当たり100kg程度収穫出来ればよいと考えている。

しかし、収穫量についても少しの試みは行ってきた。増収上のポイントは幾つもあろうが、私は栽培方法の1つの側面から増収を考えた。

1995年に信州大学で、第6回「国際ソバシンポジュウム」が開催された。この時の出席者に『ソバの研究 最近の進歩』と題する論文集が用意された。この論文集の中に興味深いある論文が掲載されていた。それは、井上直人氏らによる「南箕輪村周辺における普通ソバの伝統的栽培」という論文である。これは、信州大学農学部周辺の18箇所の圃場(栽培農家)の栽培方法を仔細に調査したものである。
井上氏らは、収量の多い条件として、標高が低いこと、栽培経験が長いこと、自家採種の種子を利用していること、畝の播き床内の栽植密度が低いことをあげておられる。

私は、この調査における1㎡当たり300g以上も収量がある、上位2つの農家に共通するある栽培方法に着目した。

栽培 (39)

2006-11-16 | 栽培
3) 適切な播種日

すでに播種日については、「播種日の決定」の項で述べた。播種日は、各地域あるいはそれより狭い各場所により異なってくる。播種日が早ければ、ソバはいたずらに徒長してしまい倒伏のいリスクが高まので、ある程度は遅く収穫量が低下しない時期を探していく以外にない。

実際には、今まで個別に述べてきた肥料、播種量、播種日を相互関連のもとに検討し、ソバを栽培していくことになる。
なお、私の場合は、播種日は8月20日前後、播種量は約1kg/10aと決めているので、肥料分(窒素分)を少し減らそうと考えているところである。

以上考察してきたのは、「すじ播き」の場合であるが、「ばら播き」の時は、播種量をおよそ2倍にすると言われている。

4) 土寄せ

これは「すじ播き」の場合のみに行われる。「すじ播き」をする作物は、通常、中耕・培土を行うが、これと同時に土寄せを行う。この土寄せは、ソバの根元に土が盛られてくるので、倒伏防止に大いに有効である。

最後に私が試みている倒伏防止法を書き添えておく。
私は、現在家庭菜園的な広さ(狭さ)でソバを栽培している。この広さだからできるのだが、作に沿って紐を張っている。これは非常に有効で、台風のような悪天候がない限りほぼ倒伏することはない。

栽培 (38)

2006-11-15 | 栽培
前回、少ない播種量は、倒伏防止のみならず、増収をもたらし、しかも育種を行っていると述べた。

播種量が多く密植になるとなぜ倒伏するのだろうか。
すでに、ソバが倒伏し易い時期は2回あると書いた。初回の小さいときは、過肥であること、播種日が早いことによる。2回目のソバが成長してからはいま考察している播種量が多いことが主たる要因である。

ところで、私は以前に播種量が少なければ、ソバの茎は太く丈夫になり倒伏の恐れは減少すると書いた。この考えを延長すれば、ソバの播種量を多くすれば茎は細く貧弱となってしまい、倒伏耐性が低下しすぐに伏せってしまうということになる。これは私が考えていただけでなく、一搬的な考え方でもある。しかし、私にはそれだけでは説明できないように思われる。
圃場における肥料成分が一定であるならば、立毛粒数が多くなれば1個体が吸収する肥料成分は少なくなるだろう。すると、1本のソバの茎も細くなるばかりでなく、葉の数も少なくその大きさも小さくなるのではないか。とすると、多播種量による密植が、ソバの茎を細く弱いものにするという理由で、ソバを倒伏に至りしめるのだという理由にはならなくなる。とすると、倒伏の主たる原因を他に求めなければならない。

まるでソバがぺたりと地面についてしまうほど倒伏した状態を観察すると、茎が折れていないものまでもが、枯れてしまい、雨が多い時などには腐ってしまっている。これは、茎が繁茂した葉に覆い被され、空気がほぼ完全に遮断され、すっかり枯れてしまうのである。この空気の移動が止まるのが最大の問題なのだ。

密植になれば、立っているソバの茎の下部においてもこれと同じメカニズムが作用しているのではないか。茎の下部の間を空気が自由に移動しなければ、茎は「細い」以上に弱くなるのではないか。私は試みたことはないが、ソバがある程度大きくなってから、同じ密植程度の2箇所を選定し、一方のソバ群の下部に扇風機で弱い風をあて続けたら、両者の倒伏耐性には大きな差が生じるのではないか。言うまでもなく、風を当てた方は、倒れにくくなると考えられる。ソバの下部の空気の停滞が、茎の脆弱性をもたらす主たる原因なのである。

密植にしないことによる空気の自由な移動は、倒伏も回避し易い上に、増収にも通じる栽培上のポイントでもある。これについては、次の項「収穫量について」で述べる予定である。

ところで、10a当たりの播種量が、2.5kgから3,5kgの間ぐらいが、収穫量は最大になるのではないかと述べておいたが、私のこれまでの試みでは、播種量2,7kg弱で210kgの収穫量となり最大であった。180kg前後の収穫量は、いずれも播種量が3kgに満たない時であった。こうしたことを根拠に、播種量は2.5~3.5kgが適度な数値ではないかと私は考えている。