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蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

栽培 (57)

2006-12-12 | 栽培
前回、粘土腐植複合体の形成についてみてきた。これは、肥料の養分をイオンの形で保持する本体であるので極めて重要なのだが、長くなるのでそのことについては後に触れたい。

ところで、この「複合体」自体も小さな団粒といえるものであるが、それは単独で存在する粘土やカルシウムや鉄などと結合して微小な団粒となる。この微小団粒同士が、根の腐敗物、微生物の粘質物、糸状菌の菌糸などにより結びつき、それより大きい微小団粒となる。これらがさらに結びつき、団粒となっていく。これら大小様々な団粒が集まって「団粒構造」といわれるものを形成する。
これは、蕎麦を水回しをしている時に、小さな塊が次第に大きくなっていき、異なる大きさの塊が無数に存在する場面が出てくるが、このような状態と考えればよい。
この団粒構造を作り出していくことが、土づくりの大きな目的の1つなのである。

では、団粒構造を作り出すことがなぜ必要なのか。
土は、水を保持しなければならない。これに反し排水もしなければならないという矛盾を抱えている。ここを解決するのが、この団粒構造なのである。大きな団粒同士の間には大きな空間がある。雨が降ればここが排水路となり水はすぐに流れてしまう。他方、幾つもの小さな団粒の間には曲がりくねった小さな隙間ができる。この小さな隙間は毛管現象により、水を保持することができる。土壌学では、前者を非毛管孔げき、後者を毛管孔げきと呼んでいる。

作物は何であれ、水の管理が「要」である。団粒構造をつくり出すことなく水の管理はできない。そして、水を嫌うソバの栽培では、特に、この団粒構造を作り出すことが大切なのである。

土を団粒構造化することが水の管理という面から重大なのであるが、さらに大切なことがある。

栽培 (56)

2006-12-11 | 栽培
腐植の過程をもう少し詳しくみていきたい。

土に、落葉であれ何であれ有機物を施せば、まずはシロダニやミミズのような土壌動物が有機物を分解していく。
この細かく砕かれた有機物中の炭水化物やタンパク質などは土壌微生物によって分解・無機化され、作物に吸収される。また、空気中に放出されもする。有機のまま残っものはさらに他の微生物のエサになる。そして今述べた過程が繰り返される。微生物は、有機物をエサとして抱え込んだまま死滅する場合もある。そうすれば、さらに他の微生物がその微生物をエサにする。
とりわけ分解されにくいリグニンやタンニンなどは長い時間の中で少しずつ分解されていくことになる。こうして、「腐植」が進行、完成することとなる。

これは、単純に1つの側面から考えれば、「落葉」のような大きなものが、多くの土壌生物により幾度となく分解を繰り返され極小の粒子となる過程と考えられる。とすると、粘土の小さな粒子と有機物が分解された小さな粒子が別々に存在するのが土というこになる。
実際には、土はそのようになっていない。有機物は分解される過程で粘土と少しずつ結合していっている。土壌生物は、エサとなる有機物と共に、小さな粒子である粘土を区別できず、体内に取り込んでしまう。そして、体内を通過中に「粘液」で両者をくっつけてしまう。これはミミズを考えれば判りやすい。さらに、微生物の中には、粘性のある排出物を出すものもいる。こうして分解されていく有機物はその過程の中で粘土と結合されていくのである。
これが、作物に与えるの養分をたっぷり保持できる「粘土腐植複合体」と呼ばれるものである。

栽培 (55)

2006-12-07 | 栽培
私は、「現代農業理論」に基づいても、うまいソバはできまいと考えていた。それは誰でも採用している方法と考え、その理論でうまいソバができれば日本中にうまいソバが満ち溢れていると考えたからである。だから、作物栽培法の「王道」とは少し距離がある栽培法、すなわち「微生物農法」や微量要素を重視する農法に共感を覚えてきた。

しかし、武田健氏や東京農大の後藤逸男氏(『農家のための土壌学』)の土壌学の考え方を学ぶと、まずはここを出発点にしなければならないと考えるようになった。なぜならば、土壌学が明らかにしている作物栽培の基礎をまるで知らなかったからである。ただ、これだけで、うまいソバがそう簡単にできるとは考えてはいないが・・・。

「土」とは何か。まず、この根本の問題から考察を進めたい。

それは、小さな粒子の集まりである。その粒子は岩石が風化された無機成分と植物体が分解された腐植と呼ばれる有機成分から構成される。
岩石は、その成分の壊れ易さの違いから、粒子の大きさが異なってくる。このうち小さい粒子は粘土となり、それほど小さくないものは砂となる。砂といっても小さい粒子である。この粘土と砂が様々な割合で混ざったものが土の一方を構成する。そして、死滅した動植物が微生物などにより分解されたものが腐植と呼ばれ、これが土のもう一方を構成する。
これら両者が混然と一体化しているものが「土」である。

栽培 (54)

2006-12-06 | 栽培
③  現在考える土づくりについて

ここであえて「現在」としたのは、私は、確信めいた土づくりの方法をつかんでいないからである。従って、考えているのは、次のシースンあるいは長くてもその次のシーズンをどのようにするか程度のスパンである。うまい蕎麦ができなければ、何か新しい試みにトライしなければならない。そして、その希求するうまい蕎麦の方向性に間違いが生じてはならないと考えている。幸い、蕎麦の味には的確な判断を下せる友人のNBさんが身近にいるし、収穫がままならない年を除き、ほぼ毎年食べていただいている全幅の信頼がおける数名の方々がいるから懸念はしてはいない。
彼らの意見を参考に、ソバの栽培を続ければ、必ず納得いく蕎麦に至れると確信している。

ところで、私は、有機の様々な肥料を試してきたが、蕎麦の味を決定的に決めるのが、リン酸肥料それも有機のリン酸肥料ではないかと考え、これまでに考えられる試みは行ってきた。
しかし、このリン酸肥料は、畑の中に適量以上存在したとしても、作物にうまく吸収されないという。農業関係者の間では、今や広く知られているこの事実を、私は武田健氏の『新しい土壌診断と施肥設計』で知った。

うまいソバの栽培に必須と考えてきたリン酸が効かないとなれば、一大事である。
私は、ここから、「現代農業理論」へ足を踏み入れることとなった。

栽培 (53)

2006-12-05 | 栽培
前回、大量の落葉を圃場の上に置いたと書いた。
土中であれ畑の上であれ落葉をそのまま畑に持ち込むことなど、通常誰もしない。一度、畑の隅などに積み上げ、硫安、尿素などを加え腐葉土としてから利用する。

では、なぜ私は圃場の上に落葉を直接置く方式を採ったのか。
もちろん、すでに書いたように大量の落葉を埋設する作業が大変であったからだ。しかし、次のような考えもあった。
素人の私には本当のところは判らないが、落葉が腐葉土化する過程の中で、微生物は大量の生理活生物質などを排出するはずである。これは作物とって優れた「肥料成分」になるに違いないし、うまい作物を作り出すのに大きく貢献するに違いない。これを利用しない「手」はない。落葉を畑の上に置けば、この優れた成分を流出させることなく、畑が全てを受け止め、余すことなく享受することができる。これが私の考えたことである。
おそらく、それが蕎麦の香りを向上させた主たる要因ではないかと私は推測している。

ところで、99年に落葉を置いた50㎡は、現在、分割し東区および西区としている。東区は、それ以来落葉のみで、99年とほぼ同様の方法を続けている。少し狭い東区は20㎡強であるが、ここに1m×1.2mの落葉用の袋で毎年約20袋の落葉を投入している。西区は、その時々で考えつく肥料などを試している。もちろん落葉は東区と較べれば遥かに少ないが、埋設する方法で使用し続けている。

この東区と西区では、少しの香りの違いが生じており、ここ数年東区の蕎麦のほ方が「一枚上」といった印象である。

栽培 (52)

2006-12-04 | 栽培
ソバの香りが一変したのが、落葉を大量に投入した第3のケースである。

私達はソバに取り組むとすぐに、20~30名程の「蕎麦通」の方にお願いして新蕎麦の試食会を始めた。この地域の在来種は、毎年、参加者の「目かくし」アンケート調査で、「信濃一号」や「常陸秋ソバ」よりも、評価が高かった。そして、この在来種の美味さを明確に越えたのが1999年のソバであった。しかし、それ以来7シーズンを経過しているが、99年のそばの香りを明確に超えているソバは出来ていない。ここをどう乗り越えるのかが現在の課題である。

では、99年に、どのような方策を試みたのか。
端的に言えば、大量の広葉樹の落葉を投入したのである。客観的にみて、多いかどうか判らないが、私がそれまで考えていた落葉の量とは較べものにならない量を投入した。50㎡にも満たない広さに、それほど大きいとは言えない袋であるが、約140袋用意した。これだけの量は、土の中には容易に埋められない。だから、畑の上に置き、飛散しないように、友達のところから貰ってきた「カヤ」や背の高い草を置いた。始めにあった1mを越える高さは、8月には、その半分以下の高さになった。秋ソバを播種する前に、落葉の上部を移動させ、下部の腐植が進んだところを土に混入した。ここに秋ソバを播種したのである。(ところで、移動した落葉は、翌年、同じ畑の最下部に戻した。)

この年の秋ソバが、一段異なる香りを醸し出したのである。


栽培 (51)

2006-12-01 | 栽培
前回は、落葉の種類や集め方などについて述べた。今回は、それをどのような方法で利用したかおよびその結果について触れたい。

これまで落葉はほとんど毎年投入し、その投入も様々な方法で試みてきた。その中で特に顕著な効果が認めれてきた次の3つのケースについて取り上げたい。

第1は、すでにこの「栽培」の12、13回で取り上げたケースである。
この時は、溝を少し大きく掘り、その中にNBさんと私で集めてきた落葉(相当腐葉土化したもの)を投入し、土をかけ、その上に播種したのである。ソバの生育は申し分なかった。香りについても最上の「骨粉」区には及ばなかったが、それに近いものがあった。
この「溝投入方式」はその後幾度となく試みてきた。

第2は、ソバではなくトマトで得られた結果である。
約1.5m×1.5mのほぼ正方形の枠を作り、そこに落葉を積み上げていった。この高く積み上げた落葉が、数年で高さ15cmほどの真黒な土になった。ここにトマトを3本だけ植えた。1本のトマトに120個ほどの実をつけたが、驚いたのは大きさがほとんど均一であったことだ。このトマトの味は申し分なく、以来このときのトマトの味を超えるものには出会ってない。
このトマトの体験が、落葉の有効性を私に確信させた大きな出来事となった。

栽培 (50)

2006-11-30 | 栽培
②  落葉(腐葉土)について

落葉(腐葉土)は、いいソバを作るのには極めて有効であると思われる。

今まで用いてきたのは、ナラ・クヌギなどの広葉樹、カシの木、イチョウの木などの落葉である。カシの木の落ち葉は、庭師の友人に頼んでおいて入手した。これは、菊作りにカシの木の葉を使う人がいると聞いたからである。イチョウの木の落葉も、それに含まれる薬効成分の話を聞いて使用した。しかし、今までに最も多く使用してきたのは、広葉樹の落ち葉である。

広葉樹の落葉は、色々な集め方をした。若いナラやクヌギの木がいいのではないかと考えて、そうした木々の林で集めたこともあった。若い木の林は、下草や小さな雑木が多くて落葉を集めるのに難渋する。異なる微生物が繁殖しているのではないかと考え、山の高、中、低地や東西南北で、よくできた腐葉土を採取してきたことがある。落葉も山の至る所から集めてきて混合して使ったこともある。落葉が積もっている地表の違いにも注目したことがある。分厚いふかふかの腐葉土の上の落ち葉や石だらけの上の落葉も集めてきたことがある。

落ち葉の種類や集め方が異なれば、ソバの味を微妙に変化させると思われるが、残念ながら、私にはその違いを認識することは出来なかった。

結局、最近は兄が山中で運営しているキャンプ場の落葉を集めている。約8割がナラやクヌギの木の落葉で、残りがクリや「カシワ」の木などの落葉である。

栽培 (49)

2006-11-29 | 栽培
炭焼きの原理が、窯内の温度を上昇させ、目的の材料の水分を追い払い炭にするというのに、材料密度が絶対的に不足するならば、いい炭など焼けるはずがない。それゆえ、窯内の温度上昇はいかにすれば可能なのかを考えてきた。

では、釜内の温度上昇をどのように確認しながら、実際の炭焼きを進めるのか。
先人は、「煙の色を見ろ」と教えている。しかし、私達のような素人には、あいまいすぎて、色では判断がつかない。だから、煙突部で温度を測る。これを方眼紙に記録していく。

固くていい炭を焼くコツは、最後に送風口を少し大きく開け、釜内の温度を急激に上昇させる「練らし」という工程を行うことであるとされている。確かにそうなのだが、私が重要であると考えるのは、「練らし」開始時までに、いかに温度を高く上げられるかだと思う。私は、煙突部で温度を計測し、「練らし」開始時の高い設定温度に至るように、送風口を調節することが大切だと考えている。「練らし」の間に温度を大きく上昇させることになれば、焼けすぎてしまう。「練らし」はある意味では危険な工程なのである。

最後には、仲間2人で炭を焼いたのだが、その頃までには窯が相当劣化し、ひび割れも多くなった。丸竹を固く、ツヤがあり、割れもなく焼くには、完璧な窯と優れた技術が必要である。理屈が判り少しずつ技術も向上するのに反比例して、窯の傷みがひどくなった。こうなると、急速に竹を焼くことへの意欲が萎えてしまった。

結局、満足のいく丸竹の炭はできなかった。しかし、丸竹を焼くことの難しさは、知的好奇心を十分かき立てるものがあり、真摯に取り組んだ時の爽快感を味うことができた。

仲間との係わりは、さらに楽しいものであった。そして、ありがたいことに彼らの好意により、「炭の破片」や竹灰・木灰を頂くことができた。それをソバの栽培に使用した。
炭がソバの栽培にどのような効果をもたらすかは判らなかったが、いわば副産物である竹灰はカリ肥料として間違いなくソバ栽培には効果的であるように思われる。





栽培 (48)

2006-11-28 | 栽培
私達は、竹炭を焼きたかった。丸い竹を割ること無しにそのまま炭にしたかった。しかし、それは至難の「技」であることが次第に判明してきた。

竹炭を焼きながら木も焼いてみた。首尾よく焼けた。割った竹も焼いてみた。これも丸竹よりは容易であった。木炭も自慢出来るようなものではなかったが、割った竹よりは遙かに上手くいった。さらに、割った竹は、丸竹よりはましであった。丸竹を炭にすることはとてつもなく難しいことであった。

何がこの違いをもたらすのか。
それは炭焼き窯の中の温度である。木が窯の中の温度を最も上昇させやすかった。それは、窯の中の材料の密度を木が最も高くし、丸竹が、空間を多くしてしまうことにより最も密度を低くしたからである。窯内の材料そのものが温度上昇に寄与していくことによる炭焼きで、窯内の材料密度が低いことは、決定的に不利である。ここが丸竹を炭にすることの難しさの根本原因であった。

そこで、考えた対応策は3つである。
①  炭焼きは、窯の中に火がつくまで、入口で火を焚く。窯内に火が回ったことが確認出来ると、適切な小さな送風口のみにする。この焚き口で燃やす火を、窯内の材料を燃やしてしまわないように焚き口を遠いくするなど工夫し、通常よりも長く多く燃やしたのである。こうすることにより、窯内の温度上昇不足を補うことにしたのである。

②  次には、窯の中の温度を上げればよいのだから、色々な材料を混合して入れてみることも試みた。生木も入れてみた。ヒバの木の木片も入れてみた。

ヒバの木片を入れたのは次のような経緯からである。私の友人に、秋田杉と青森ヒバで家を建てることを仕事にしているものがいる。彼が、ヒバは油分を多く含んでいると言っているのを聞いて、火力が強いと考えて使ってみたのである。ちなみに、彼の作るヒバの家は、時が経てば柱が輝きを増し、ヒバの臭いで虫も寄りつかず、床などぬくもりがあり床暖房もスリッパも必要ないという。しかも、高価な秋田杉とヒバの家が、現地で直接業者から材木を買い入れるために、驚くほど格安でできるという。このシステムができるまでには10年かかったという彼の生き方には、学ぶことが多い。

私達は、丸竹が上手く焼ければよかったのだから、すでに書いた、窯内の一番よく焼ける位置に太い丸竹を置き、回りに割った竹や木を配置して焼くことも試みた。

③  さらには、次のようなことも試みた。放熱が最も激しいのは、屋根である。これをなんとかできないかとも考えた。そこで、シート販売店に行って、防燃性の高いシートを買い求めてきた。このシートの間に、建材用の断熱材を挟み込んだ。それで屋根を覆い放熱を防いだのである。ただこのシートは高温には耐えられず、温度上昇の途中で取り除かなければならなかった。