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蕎麦彷徨

ひとりの素人が蕎麦について考えてきたことを書きしるすブログ

栽培 (67)

2007-01-19 | 栽培
周知の如く、肥料の三要素は窒素、リン酸、カリである。そのうちリン酸は、植物体内で、遺伝、呼吸、根の成長、開花、結実など極めて大切なところで、重要な働きをしているという。

それゆえ、私は肥料の中ではこのリン酸に最も注目し、主に有機のリン酸肥料を探し求め、様々な試みを行ってきた。しかし、「リン酸は土中のアルミニウムに固定され、作物に吸収されない。」などという話を聞くと、一体それはどういうことなのだろうと考えてしまい、肥料あるいは土についてもう少し知らなければならないと考えたのである。

リン酸は、水に溶けるとマイナスのイオンとなるので、これまでみてきた塩基などとは異なる行動をする。すなわち、土の中に多く存在する陰イオンのアルミニウムや鉄と結合してしまい、リン酸アルミニウムやリン酸鉄となってしまう。これらは、水に全く溶けない化合物なので、植物の根が吸収することができなくなってしまう。これが、いわゆる「リンの固定」である。

日本の土壌は、元来、ほとんどリン酸分を含んでいないが、野菜圃場なのではリン酸が過剰であるという。これは、リン酸肥料を必要以上に投入してきたからである。私の畑も事情は同じである。2006年の東区では、可給態リン酸は105mg/100gであり、水溶性リン酸は15.0mg/100gである。まさに過剰なのである。
だだし、リン酸は過剰障害の出にくい肥料であり、問題も生じていないと思われるので、リン酸肥料は施肥しないでこのまま作り続け、減少していくのを待とうと思う。

私は、リン酸の土壌診断結果を土づくりの第5の指標にすることにする。そして、可給態リン酸を50mg/100g、水溶性リン酸を10mg/100gを、一つの目標にしようと思う。

栽培 (66)

2007-01-18 | 栽培
ソバは、残念なことに、倒伏し易い様々な要因を具備している。肥料の少しの過多もその要因の1つである。窒素肥料が多すぎれば、倒伏は免れない。

窒素質肥料や有機質肥料は、土の中で水に溶けアンモニウムイオンになるが、これが土壌微生物である硝酸化成菌により、硝酸イオンに変化する。この硝酸イオンは作物が最も好んで吸収する養分である。これが、ソバ栽培畑で多量に存在すれば、ソバが過剰に吸収し、自らの「身」をいたずらに大きくしてしまい倒伏に至る。

この硝酸イオンも塩類に分類されるが、この塩類濃度が高まりすぎれば、塩類濃度障害が発生してしまう。そのため、塩類濃度を知るために、電気伝導率または英語の頭文字を用いてEC(単位はmS/cmを用いる)なる土壌診断項目がある。例えば、野菜圃場のECは通常0.1から2mS/cmである。

私はこのECの値を参考に、ソバの窒素肥料の最適量を判断しようと考えている。
2006年の東区のECは0.15であった。それでもソバの樹勢はよすぎた。ソバの丈を1m程に抑えたいが、それを越えてしまったのである。最後の節間が異常に伸びてしまった。このEC0.15という値は一般には低い値であるが、それでもソバにとっては高い値と解釈せざる得ない。私は、ソバの場合、ひとまずECの値を0.1mS/cm程にしたらどうかと考えている。

私は、このECを土づくりの第4の目標にしようと思う。

栽培 (65)

2007-01-17 | 栽培
ソバは、酸性土壌を好み、その条件の下でよく生育すると言われている。今回は、土が酸性とはどのようなことなのかを考えてみたい。

これまで、CECや塩基飽和度などについてみてきたが、土が酸性か否かは、この両者に関係する。すなわち、CECに占める塩基飽和度の割合をもって、酸性あるいはアルカリ性の度合いが決まるのである。塩基飽和度が高ければ、高いアルカリ性の値を示し、塩基飽和度が低ければ、より低い酸性の値を示す。

前回まで考えてきたことを手がかりにすれば次のようになる。土の微粒子すなわち土壌コロイドの表面はマイナスの電気を帯びている。これに引き寄せられるのは陽イオンすなわちカルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオン、水素イオンである。このうち前3者が、CECの中に多く含まれるほど、アルカリ性の度合いが高まり、少なくなれば、酸性化するということである。
すなわち、酸性化とは、3つの塩基のイオンが減少し、水素イオンがコロイドに多く吸着することである。この水素イオンは、すばしこく隙あらば他を押しのけても、コロイドに吸着しようとする。日本の土壌が酸性を示すのは、湿潤で雨がよく降ることにより水素イオンが多くなり次第に酸性化していっているのである。だから、まっ白になるほどやたらに石灰を畑にまく人が多いのである。

土壌学では、pHで6.5を中性としている。
私の東区はpH7.0、西区はpH7.35である。これではpHの値があまりにも高すぎる。引き下げなければならない。武田健氏によれば、塩基飽和度とpHの値はパラレルであり、飽和度が80%でpHが6.5、飽和度が60%でpHが5.5であるという。
ソバの好む酸性土壌にするには、何よりも塩基飽和度を低下させなければならない。私はこの塩基飽和度60%、pH5.5を1つの目標に土づくりを進めようと考えている。

栽培 (64)

2007-01-16 | 栽培
土づくりを考える上での指標として、CEC・塩基置換容量、塩基飽和度、塩基バランスを考えた。そこで設定した数値を目標に土づくりを進めるが、疑問がないわけではない。私は土壌学が明らかにする理論を学び始めたばかりで、単に理解不足から生じているのか、次のような疑問がある。

塩基飽和度については、作物間の差異を考慮に入れているが、CECと塩基バランスについてはそれらを考慮していない。例えば、CEC10と30の土で、塩基飽和度が同一である場合、投入できる各肥料の量は異なり、CEC30の土は、前者の3倍となる。作物により多量の養分を要求するものもあろうし、そうでないのもあるのではないか。
また、作期の長い作物は、CECの値が大きくなければならないだろう。例えば、作期が2ヶ月のソバと半年以上に及ぶイチゴでは、適切なCECの値は異なるのではないか。イチゴでは、ゼオライトや完熟堆肥を用いてCECの値を高くしておけば、品質が低下することを防げるのではないか。他方、私が栽培しているソバではCECの値は低くてもよいのではないか。

塩基バランスについてはどうであろう。作物により吸収する養分の差異はないか。
カルシウムをたくさん必要とする作物も、カリウムをたくさん必要とする作物もあろう。

私は、出発点についたばかりである。さらに土壌学の理解を深めなければならない。もう一方では、設定した指標の数値を目標に土づくりを進め、達成できたならばそこで基準とした数値が適切なのかどうかを考えていきたい。

栽培 (63)

2007-01-15 | 栽培
私が、土づくりを考える第1の指標はCECであり、第2のそれは塩基飽和度である。さらに第3の指標として塩基バランスを加えたい。

土の微粒子・土壌コロイドに吸着される塩基は、カルシウム、マグネシウム、カリウムであった。これら3つの割合を考慮しようというのが塩基バランスである。私は土壌学的観点からの作物栽培の経験はほぼ無きに等しいので、専門家らの見解を考慮し、カルシウムとマグネシウムとカリウムの比を、7:2:1にしようと思う。

では、私の畑の2006年の土壌分析結果はどうであったか。
まず、東区は当量で表すと、カルシウム:37.1(1040/28 いずれもmg/100gの値 以下同様)、マグネシウム:4.6(91.8/20)、カリウム:1.1(50.0/47)である。
また、西区はカルシウム:20.9(586/28)、マグネシウム:4.0(79.1/20)、カリウム:2.3(108.0/47)であった。

これの塩基バランスを求めると次のようになる。
東区 34:4:1   西区 9:1.7:1
西区は目標値までもう少しである。
東区は大幅に目標値から逸脱している。東区は落葉のみを投入してきたので、これからもそれを変更するつもりはない。この塩基バランスを整えることは至難の業とならざるをえない。

栽培 (62)

2007-01-12 | 栽培
前回、肥沃な土であるか否かはCEC(陽イオン交換容量 塩基置換容量)なる土壌診断項目で判断でき、その値が高い方が、肥沃な土と考えられると書いた。

土の粒子すなわち土壌コロイドの表面に、保持されるのは陽イオンであるアンモニウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオン、水素イオンである。この中で量が多いのは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、カリウムイオンの3つである。しかも、水に溶けるとアルカリ性を示すという共通点があり、これらは塩基と呼ばれている。そして、これら3つの塩基が、CEC全体に占める割合を塩基飽和度と呼び、土壌学では、重要な土壌診断項目としている。

ところで、この塩基飽和度は、作物により好適な数値が異なる。例えば、多くの野菜は80%前後である。
私が栽培しているソバのそれは何%が適切な値なのだろうか。ソバは、マイナーな作物なのか、様々な資料をみても決定的な数値が見あたらない。そこで、私は後に述べる土の酸性の問題などから判断して60%を1つの目標にしようと思う。

私の畑の2006年の土壌診断では、東区の塩基飽和度は120%であり、西区は117.7%であった。これはとてつもなく高い値であり、60%に下げるのはそう簡単にできるものではない。それゆえ、60%は至難な数値ともいえる。首尾よく、60%近くまで塩基飽和度が下げられたら、そこで蕎麦の味を正確に評価し、さらに下げる必要があるかどうかを考えようと思う。

今は、どのようにしたらこの塩基飽和度が下げられるかが課題であり、後で現在、考慮中の方法を記したい。
ちなみに、なぜこのような高い数値に至ったかは、私に土壌学の知識もなく、ただ闇雲に様々な肥料を畑に投入していたからである。

私は、この塩基飽和度を土づくりの第2の指標にしたい。

栽培 (61)

2007-01-11 | 栽培
土の中で養分を保持し、作物に時間の経過と共に供給し続ける役割を果たしているのが、粘土鉱物と腐植である。まずはその仕組みについてみていこう。

この粘土鉱物と腐植は、微小な粒子であり、コロイド粒子であるために通常表面にマイナスの電気を帯びている。
一方、肥料、土壌改良資材として施される養分うち窒素(アンモニウム)、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどは水に溶けてプラスのイオンとなる。マイナスとプラスは引きつけ合うという電気的性質により、マイナスの電気を帯びているコロイド粒子に、プラスのイオンを持つ上記の養分が吸着され保持される。そして、雨などが降っても簡単に流されなくなるのである。これが土が養分を掴まえ、離さない仕組みである。

ところで、養分を吸着、保持できる量は、土により異なる。それは土壌コロイドが備えているマイナス電気の量による。表面により多くのマイナスの電気を帯びている土壌コロイドは、より多くの養分を保持できる。これが土の優劣を決める重大なポイントである。そこで、土壌学では、土がこのマイナスの電気をどのくらい備えているかを、陽イオン交換容量(塩基置換容量 CEC)といい、重要な土壌診断項目としている。(単位はme/100gである。) 日本の土のCECは、10から30の間であり、平均が15~20である。ちなみに、前回のモンモリロナイトという粘土鉱物は、結晶構造内にマイナスの電気を持つために(他の粘土鉱物は結晶の端にマイナスの電気を持つ)、そのCECは100にも達するという。

私は、このCECをよい土をつくる際の第1の指標にしようと思う。今年、私がソバを栽培した東区のCECは、35.7であり、西区は、23.1であった。この数値をどう評価するかは、他の指標との関連もあるのでもう少し後で論じたい。

栽培 (60)

2007-01-10 | 栽培
前回まで、土が団粒構造化されることにより、適切な保水性や通気性などが確保され、作物の生育が順調に行われることをみてきた。しかし、これだけでは施した肥料がどのように作物に吸収されていくのかが判らない。従って、その仕組みについて知る必要がある。

私達は、畑に肥料を入れてから、播種をする。追肥をする場合を除外すれば、作期が半年に及ぶ作物でさえ、播種前のたった1回の施肥しか行わない。さらに、作物は、生育が進むに従い、幾何級数的に増加する養分を必要とするはずである。一体、土はどのような仕組みで養分を保持し、作物が必要な時に、必要な量の養分を供給しているのか。これを考えるのには、もう一度あの土を構成する粘土と腐植のところまで立ち戻って考える必要がある。なぜならば、この養分を摑まえている本体が粘土と腐植であるからである。なお、養分は土壌微生物により保持され作物に供給される場合などがあるが、ここではふれない事にする。

ところで、今まで単に粘土と呼んできたものは、正確には粘土鉱物である。岩石の一部は、風化される過程で水、酸素、二酸化炭素などに溶解され新たな鉱物に変化する。従って、粘土鉱物なのである。異なる粘土鉱物は異質の結晶構造を持ち、養分を貯えることができる量が異なってくる。例えば、モンモリロナイトという粘土鉱物は2枚のケイ素四面体層の間にアルミニウム八面体層が挟み込まれた結晶構造を持ち、他の粘土鉱物の十倍もの養分を貯蔵できる。この粘土鉱物は、ウクライナ共和国の黒土地帯やアメリカ合衆国のプレーリーなど世界の最も肥沃な地帯に分布している。日本では新潟県や富山県に分布し、米の美味しい地域と一致すると言われている。

この粘土鉱物と腐植が、養分を保持する本体であるが、その仕組みについては次回みていきたい。

栽培 (59)

2006-12-14 | 栽培
前回までの考察から、大小様々な団粒間の空間やそこに存在する水が、極めて重要な役割を果たしていることが確認できた。では、これらがどのような割合で存在すればよいのか。

空気にはほとんど重さがない。だから重さで表すのは不適切だ。そこで、土壌学では、容積で表すことにしている。その際、空気と水だけではなく、粘土・腐植を加え、3つの割合で考える。そして、それらを順に、気相、液相、固相と名付け土の三相分布と呼んでいる。これは、土を物理的側面から考える重要な指標となっている。

それではこの三相はどのような割合がよいか。
一般に畑作の土の場合、気相:30%、液相:30%、固相:40%が適切であると言われている。
私が栽培しているソバはどのような割合がよいか。湿害を受け易いという作物の性質上、液相を減少させ、気相を逆に増加させる。ソバの根は貧弱なので、固相は少し減少させた方がよい、というのが私の現在の考えである。

ところで、三相分布は次のように求める。土を採取し、その体積と重量(現物重量)を計量する。次に、その土から(フライパンなどで)水分を蒸発させ計量する(乾物重量)。この現物重量から乾物重量の差と体積から、液相の割合を求める。次に、乾物重量を土の(真)比重の2.65で除して、固相の割合を求める。気相の割合は、100から液相の割合と固相の割合を引けばよい。

今日、今年ソバを栽培した東区の土の三相分布を求めた。その結果、気相:37.1% 液相:32.7% 固相:30.2%であった。
これをどのように改善していくか。それが、2007年のソバ栽培までの課題である。


都合により、このブログを休みます。明年1月10日に再び開始します。再開後は、次のテーマで書き進める予定です。
③ 現在考えている土づくりについて の後半
④ 育種について 
補論 刈り取り後のソバの扱いについて  
2006年ソバ栽培の総括

栽培 (58)

2006-12-13 | 栽培
前回は、保水・排水の両面から団粒構造が果たしている役割をみてきた。さらに、団粒構造の他の役割についても考えていこう。

作物は、土中の奥深くまで根を伸ばして、水などを吸収し成長していく。この時、根は土中の空間を探し求めて伸びていくのである。この空間とは、大きな団粒間の隙間である。それゆえ、この空間がしっかりと確保されていなければ、根はスクスクと成長できないことになる。
しかし、これだけでは不十分である。根は、土中の水分を吸収しなければならない。水分を吸収するのは、根の先端の細い根、すなわち根毛である。この根毛は、1000分の10から3ミリの隙間にまで入り込むことができる。この小さな団粒間の隙間には、毛管現象によって水が確保されている。ここで根毛は、水を吸収することになる。

ところで、根が水を吸収するということは、根がその作物を大きく育てる養分を吸収することでもある。養分は、全て水に溶け出して始めて根から吸収されるからである。小さな団粒間の隙間に水が確保されているということは、作物が必要な時に必要なだけ養分を取り込めるということをも意味している。

さらに、大きな団粒間には空間がある。ここは当然のことながら、通常空気で満たされている。土の中といえども、空気が必要である。クロストリジウムのような絶対的嫌気性菌を除外すれば、分解者たる土壌生物は酸素呼吸をしている。大きな団粒が確保されていない土壌では、土壌生物の大きな働きを期待することはままならないのである。

以上のことから、土を大きさの異なる団粒構造化することがいかに重要であるかが理解できる。では、この団粒構造形成の状態を土壌学ではどのように判断するのか。