中小企業診断士 藤田雅三 ブログ

~コンサルティングblog~ざっくばらんにいろいろ書きます。

企業のジョブ型思惑と新卒のギャップ

2023年02月15日 16時42分59秒 | 人事・組織

 

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おはようございます! 人事コンサルタント、経営コンサルタント 中小企業診断士の藤田雅三(フジタ マサカズ)です。

2022年4月30日~ 5月26日に(株)リクルート就職みらい研究所さんで実施された『大学生・大学院生の「働きたい組織の特徴」』インターネット調査によると・・・

<貢献と報酬の関係>
●項目8の「A:給与は高いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は大きい」と「B:給与は低いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は小さい」では、「A(44.1%)」より「B(55.9%)」の支持率が高いものの、「A」も4割台と比較的高い。
●項目10の「A:個人の生活をサポートする制度(休暇制度や各種手当など)はないが、給与は高い」と「B:個人の生活をサポートする制度(休暇制度や各種手当など)を充実させる代わりに、給与は低い」では、「A(29.4%)」よりも「B(70.6%)」の支持率が高い。
●項目11の「A:入社直後の給与は低いが、長く働き続けることで段々高い給与をもらえるようになる」と「B:入社直後から高めの給与をもらえるが、長く勤め続けてもあまり給与が増えな
い」では、「B(25.8%)」よりも「A(74.2%)」の支持率が高い。
●項目12の「A:自分のキャリアステップは自分で考え、実現に取り組むことが求められる」と「B : 異動や配置を通じ、会社が個人のキャリアステップを考えてくれる」では、「B(40.8%)」よりも「A(59.2%)」の支持率は高いものの、「B」も4割台で比較的支持率は高い。

(出所:大学生・大学院生の「働きたい組織の特徴」 2023年卒 (株)リクルート)
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/2023/0209_12022.html

とのことです。

この<貢献と報酬の関係>についての6つの質問の結果を見てみますと、以下のようになっています。

((株)リクルート就職みらい研究所『大学生・大学院生の「働きたい組織の特徴」2023年卒』(P5)を参照して筆者作成)


 大学生と大学院生の回答傾向はほぼ同じですが、最初の項目のみ違いが見られますね。
ただ、大学院生の回答では「給与は高いが、個人間で待遇に大きく差がついたり、降格になったりする可能性は大きい」が支持されているのに、2つ目の質問では「評価の良し悪しによって給与があまり変化せず、安定的な収入が得られる」が支持されています。
 つまり、一つ目は「給与が高くダイナミックな評価を求めている」ように見えますが、二つ目の回答は「評価に寄らず、大きな変化を求めないで安定収入」を支持しているというのは、なんだか矛盾を感じますね。

 いずれにしても、大学生、大学院生ともこれらの結果から伺われるキーワードは、

「大きな変化を求めず安定」
「安全・安心」
「公平・公正」
「給与は最初安くても、将来は高く」
「高給でなくとも生活サポートが充実」

 といった感じでしょうか。
 最近よく耳にする”心理的安全性”とは組織や集団の中での環境を言いますが、収入面においても恐れや不安のない状態で働きたいということでしょうかね。
 当たり前と言えば当たり前かもしれませんが、、、

 しかし、この貢献と報酬に対する考え方を見ると、昨今大企業がこぞって取り入れようとしている、今流行りの「ジョブ型」の雇用システム・制度とは反対の考え方が支持されているように見えますね。

 大企業では意外とまだ根強く残る”年功序列的な制度”を廃止したくて、仕事の価値で決まる制度に変えたいという時に「ジョブ型」がちょうど良いきっかけとなっているのでしょうか。
 年齢が若くとも、ジョブサイズの大きな職務につけば、高い報酬が得られるというのは魅力にも感じますが「給与は最初安くても、将来は高く」「高給でなくとも生活サポートが充実」を支持しているという調査結果による新卒の志向とはちょっとギャップがあるようも見えますね。

 最近では新卒の初任給を大幅にアップするという大企業のニュースも飛び込んできます。初任給を大幅に上げると、普通は在職している中堅~ベテランの給与もベースアップしなければバランスが取れないような気がしますが、そこはジョブ型。
職務が変わらないので昇給させないとか、若手がジョブサイズの大きな職務につけば、ポジションが足りないので中堅~ベテランの誰かが外されるとかして、総額人件費は変えないようにしようとかいった思惑があるのかもしれません。さすがに解雇というのは日本の労働環境では難しいと思いますが。。。

 いずれにしてもこうした調査結果を見ますと、ジョブ型で賃金が固定されるのはある意味安心感がある(もちろんそれなりな金額で)一方で、ポスト、ポジションを外されるとか、将来年を重ねていくときに賃金が上昇しない(ポスト、ポジションが変わらない、上のポストが空いてない)といった制度運用ですと、自らの志向とのギャップを感じてしまうかもしれないですね。

また、その他のカテゴリーの質問でも「自分が主役として活躍できる」よりも「周囲に優秀な人材が多く刺激を受けられる」を支持したり、「自分のやりたいことを起点に個人のイニシアティブで働くことが求められる」よりも「組織の目的や目標に向けてチームで働くことが求められる」を支持するなど、良くも悪くも比較的協調性の高い日本人らしい? 特徴のように思えるのは私だけでしょうか。

ジョブ型を取り入れるという企業も、米国などそのままのスタイルを適用するのではないと思いますが、日本の企業に合った、その企業の考え方に合った制度が望まれると思います。

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