ことばを鍛え、思考を磨く 

長野市の小さな「私塾」発信。要約力、思考力、説明力など「学ぶ力」を伸ばすことを目指しています。

噛みくだく力

2006年09月20日 | ことば・国語
食事の際に食べ物をよく噛むことの大切さは、今さら言うまでもない。
体にいいだけでなく、口の周りの筋肉を発達させることで表情も豊かになって発音もよくなる。
さらに、噛むという機械的な刺激が脳の活動を活発にするという。
詳しくはこち→「噛むこと」

ところが現代では、時間に追われて食事の時間も短くなった。
手軽に食べられる物、柔らかい食べ物が多くなった。
その結果、昔と比べて噛む回数は激減しているようだ。

これも上記のサイトによれば、おこわが主食だった弥生時代は食事に1時間近くもかけ、噛む回数も約4000回だったという。
その後、主食にうるち米や麦、副食に煮野菜や焼き魚という食生活に変わってからも、戦前までの長い間、食事時間は20~30分、噛む回数は約1400回とほぼ一定していたそうだ。

これが現代では、食事時間も噛む回数も戦前の半分以下に減ってしまったとのこと。
パンやハンバーグ、ラーメン、グラタンなど、あまり噛む必要がない柔らかい食べ物が主流になっていては当然の結果であろう。
そのうち、センベイやスルメを食べようとしたら歯が欠けたとか、顎が外れたなどという子どもが出てくるかも知れない...。


先日の新聞に、テレビと新聞による情報を食物に例えて「噛みくだく力」の重要性を訴えたコラムがあった(by高橋庄太郎)。
曰く、テレビによる情報は映像や音によっておいしそうに加工された流動食。
活字中心の新聞のそれは固形食である
という。

なるほど、そうなるとラジオは両者の中間、お粥とか離乳食に相当するか...。
さらに、活字情報である新聞記事や本は、その内容によって固さが変わってくることになる。

流動食なら誰でも、大した努力も要らずに摂取できるが、固形食は噛みくだく必要がある。
高橋氏は、この噛みくだく力を発達させることが「考える力」にも通じると主張する。
簡単に飲み込める流動食ばかりを求めていては、思考力は衰えるばかりであろう。

前にも書いたが、私は丁寧にわかりやすく教えることが理想だとは思っていない。
生徒がつまずかないよう手を取り足を取り教え込むのは、せっかくの固形食を十分に噛んでやってから与えることに他ならない。
これでは子どもの噛みくだく力は育たない。
柔らかい物ばかり欲しがる指示待ち人間を作り出してしまう。

わからないときでも自分で何度も噛んで飲み込むことができる、クルミの殻なら道具を使って割る知恵が働く...。
今の子どもたちにこそ、そんな逞しい思考力を育む事が急務だと考えている。


※応援してくださる方はクリック(↓)をお願いします!
にほんブログ村 教育ブログへ



最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (テツ)
2006-09-20 14:39:26
食べる時に

1.ただ単に食べる

2.考えながら食べる

と大きく分けた場合、後者の方がいいとは言い難い...(笑)。



私の場合、朝、昼は1で夜は2である。2の場合は、どうやってなど作られた産地や採られた場所、色々と疑問に思ってついには調べる事になる。



これも物事を噛み砕く力ではないでしょうか?

いやあ、単純に味わいたい時もあるのですが...。
返信する
Unknown ()
2006-09-21 12:01:01
テツさん、毎度です。



ウチの場合、野菜はほとんど自家製か近所の人にもらった物なので、産地を想像する楽しみがなくて困ります...(笑)。



作った人の顔がわかっているというのは一番の安心であり、今や贅沢なことですね。
返信する
Unknown (hyou)
2006-09-22 16:57:01
噛み砕く力に加えて、「噛み切る力」もないみたいですよ。というより「噛み切る」ということができないみたい。

確かに噛み切る必要のないものばかり食べてるかもしれません。



テレビの情報は噛み切れないですね。ズルズルと入っていきますから。
返信する
Unknown ()
2006-09-23 17:32:01
hyouさん、毎度です。



確かに「噛み切る」体験は少なくなっていますね。このまま行くと、人間の歯は犬歯、前歯、奥歯の順に退化していくのではないでしょうか?



歯も脳も退化しないよう、刺激を与え続けなければ...。
返信する