ことばを鍛え、思考を磨く 

長野市の小さな「私塾」発信。要約力、思考力、説明力など「学ぶ力」を伸ばすことを目指しています。

使える英語?

2005年10月17日 | 学習一般
下記の報道を知って英語について書いていたら、ずいぶん長くなってしまったので2回に分けます。
今回は会話重視の英語教育への意見です。



早ければ2年後から、小学校での英語指導が義務化されるそうです。
文科省がそれに向けて具体的な検討を始めたというニュースを聞きました。
「総合的な学習の時間」を削って英語に充てるようです。

周知のように、今の日本の学校教育には問題が山積しています。
学力低下、他国に比べた読解力や応用力の不足、そして最も大きな問題と思われる子どもたちの学習意欲の減退....。

それらの問題を等閑にして、世の中の英会話ブームに迎合するかのような方針を打ち出す文科省に、将来への確たるヴィジョンがあるとは到底思えません。
「何となく」英語ができた方がいい、くらいのことでしょう....。

いつの頃からか、日本人は何年も英語を勉強しているのにまともに会話さえできないという批判を多く耳にするようになりました。
文法にこだわるより「使える英語」を教えることを求める声が高まってきたのです。
どうも文科省は、あまりにも短絡的にそれに応える方向で動き出しているような気がします。

中学の教科書は改訂のたびに絵が多くカラフルになり、昔の面影はありません。
短いやり取りの会話文が多く、ストーリーを楽しむような長文はすっかり少なくなりました。
全体的に、ぶつ切り的な内容ばかりで体系化できていないように思います。
空港での会話、レストランでの会話など、場面別にお決まりのフレーズを並べているだけの「お手軽トラベル英会話」の本とたいして変わりません。しかもネイティブが「そんな言い方しない」と言う不可思議な英語もずいぶんあるようです。

そんな会話のパターンをいくら覚えても英語ができるようになるとは思えません。
相手がお手本と違う言い方をしてきたら、そこで終わりです。
だいたい、日常会話の、母国語であれば幼児でも話せるような内容をたくさん覚えることにどんな価値があるのでしょう?
あいさつに毛が生えた程度で、ちょっと突っ込んだ話になるともうわからない....。
それでは、お題目のように使われる「グローバル・コミュニケーション」など実現できるわけがありません!

いわゆる「学校英語」が役に立たないからと言って、「実践的」な会話を増やしても所詮その程度です。
母国語と違い、自然に目や耳に入ってくる量が圧倒的に少ないので、当然の成り行きでしょう。

「学校英語」から脱却して一歩上を目指すには、まずはインプット量を増やすことです。
お手軽会話にかける時間があれば、それを読む(黙読&音読)練習、聴く練習にあてましょう。
ただし、高校の文法のように少量の難しい文を重箱の隅をつつくように分析するのではなく、やさしいレベルのものを楽しみながらたくさんこなすことです。

英語を英語のまま理解できるという経験を多く積むことで、日本語から英語へのモードへの切り替えがスムースにできるようになります。
会話はそれからでも十分。
極端に言えば、話し言葉の代わりに書き言葉を使っても、少々ぎこちなくても言いたいことは伝わります。
だから今度は丸暗記しなくても、必要な会話表現だけを余裕を持って学べばいいのです。

中学生、高校生の皆さん、教科書の英語は会話の部分も含めて「学校英語」だと割り切りましょう。
まちがってもあれだけで英語ができるようになる、ペラペラ話せるようになるなどとは思わないこと。
本当に英語に強くなりたい人は、絵本から始めてとにかく英文をたくさん読んでください。
CDやテレビ、ラジオなどで英語をたくさん聴いてください。

英会話教室に通うより、あとで効果が実感できますよ。


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