音

カーテンを閉めたままの薄暗い室内。

スーと引くように暖房が自動で止まる。



静寂が訪れる。

なにも聞こえない。


きょうの天気。

濡れた路面を走る車の音も聞こえない。


今いる高い鉄筋コンクリート構造の空間にはそれらは無縁なようだ。


静かな室内に響く唯一の音は

唇や舌を舐める音。

吸いつく音。

そんな特別な音。


音だけであれば乳児が乳首を吸うような、あたりまえの音。



時には厭らしく響く

そんな特別な音。

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