停める

あなたの家のそばで静かにクルマを停める。

何度めだろう、２本裏手の通りで。

さよならと言わずキスをする。

別れを感じないから。

肩を抱き寄せる。

コートの生地の匂いとあなたの肌の匂い。

頬に触れた耳に体温を感じる。

冷たい温度。

別れはなぜやってくるのだろう。

突然に、偶然に。

そして、ひも解けばもちろん必然に。

ひとは想う。もう一度逢えると。そして、だから今、別れる。

もう一度逢えると想いたい。

疑い深く

疑り深いほうだ。

素直に受け止めない。

自然と喜びは半減する。

疑心暗鬼。

いつからそうなったのだろう。

それでもだまされるよりはましだと、自身の疑り深さを払拭する。

ひとから話しかけられる。

疑う。

だが、ことばに元気づけられる、そんなときもある。だいじなこと。

そして、落胆する時もある。

きっと、止まらない。やめられないのだと。

この感覚が。疑うことではなく、ことばに勇気をもらうことが。

記憶

記憶をたどる。

あなたの。

今は、呼び起さなくても正確に保存されるなにかがある。

それはいいことなのだろうか。

なんとなく、そんな速度に慣れてきた。

たぶん、いいことではないのだと想う。

自身の感覚にとっては。

過去の想いにふけるのは自身のあたまの中だけでいい。

他のなにものかえがたい、それは。

自身の想いのみ。

自身のあたまの中以外に記録される映像や音声や伝えられた文字には意味がないと想いたい。

あなたのこと。

ずっとずっと正確な記録よりも

なによりも自身の感覚を信じたいと想いながら。

こねる

指も
それはそれで別な意味で感じます。

そんな言葉がくちびるから発せられる。

ゆっくりとこね回す。

指の先から伝わり出る。溢れて時々、噴き出す。

溢れ出るあなたのからだの中のなにかは温かく、

あなた自身の温もりさえも感じる。

偽りの笑顔

笑顔はひとに安堵感を与える。

そう思っていた。

真実のみの笑顔は自然にそうさせる。

ときに笑顔は真実のみではなく、内心を見せぬ仮面となる。

そういう笑顔が自身を救い、誰かを救う。

そんなふうに。

いつしか自身に安らぎを与える存在は、別な一面を見せ始める。

偽りのないなにかを

偽りとはなにかを知る。

それは恐ろしいことでもある。

偽りの笑顔

自身、そうなのかもしれない。

奪う

ひとはひとの何かを奪うために生きているのでないと想いながら、いつも間にか奪っている。

おこがましいが、それでも何かも与えているのかもしれない。

奪ったことを知り得たとき、多くはそれは驚愕の事実であり、奪われることは刹那に感じる。

共通の時間は、あなたの何かを奪ったのではないと信じたい。

すきないろ

冬を迎えようとしている。

窓から見える赤や黄に染まった木木に安らぎを覚える。

そういえば最近、気づいた。

新緑よりもこの深紅や黄金色が好きなことを。

不思議に優しい気持ちになれる。

あたたかい。

寒くなるとコートに身を包んだあなたをイメージする。

あたたかいやさしい色づかいの。