英語講師の仕事の息抜き日記

教室や身の回りで起こる、ちょっとした出来事を書き綴ってみました。
あなたの仕事の息抜きにお寄り下さい。

ラブレターの翻訳?

2005-06-17 19:27:38 | Weblog
この前、翻訳をしていた頃のことを書いて(6/14投稿)思い出したのだが、ちょうどそのころ、もう一つ変わった出来事があった。

それはある日の夕方のこと、受付の女性が言いにくそうにわたしに相談に来たことから始まる。「あのー、変なお客さまがいらして、『翻訳代は払えないから、内容を口頭でいいから伝えてくれないか』って言うんですけど...」ええっ、そんなのあり?と驚いて返事に困った。どうも、「お願いします」とねばられてしまったらしい。「物はなんなの?」と尋ねると、「個人的な手紙のようで、2ページです。」まあそれくらいなら、と奥に通してもらった。

しばらくすると、「すいませーん」という高い大きな声と共に、40代半ばか後半くらいの大柄な女性が入ってきた。長い黒髪をカールさせ、花柄模様の服を着た、ちょっとオトメチックで、自分の年齢にも時代にも左右されないマイペースなタイプ、という印象だった。美人という印象はなかったが、顔全体で気持ちを表現する、日本人離れした感じの人だった。彼女が差し出したのは、アメリカの切手が貼られた一通の手紙だった。差出し人はJason という男性の名前が書いてある。「あら、恋人からの手紙なんですね」と言うと、手と首をバタバタ振りながら、「違いますーっ、ジャストフレンドですー、ジャストフレンド!」となぜかそこだけ英語。まあ、なんでもいいからサッサと終わらせようと手紙を読みはじめた。彼女はまるで神託を待つ民、といった面持ちでじっとわたしの方を見ながら待っていた。

内容を伝え始めた。「日本ではとても楽しく過ごせたと言っていますね。いろいろな所に出かけたけれど、すべてよかったといっています。」彼女はニコニコしながら嬉しそうに静かに聞いている。そして手紙の中盤に入り、「あなたがいなくて寂しいって言っていますよ。アメリカに帰ってから、あなたのことばかり考えているって言っています」と聞くやいなや、「ええーっ!」と突然、部屋の壁が振動するような声をあげ、「わたしも、わたしもよ、ジェイソーン!」と叫んだ。わたしは一瞬、自分が巫女にでもなって、ジェイソンを呼び出してしまったような錯覚に陥った。「わたし、ずっと好きだったんですー」って言われても、わたしも困ってしまう。「とにかく、すぐに手紙を書くなり、お電話をかけるなりしたらいかがですか」と言って帰っていただいた。

翌日職場に行くと、受付の人から、「先ほど昨日の女性がまたいらっしゃいまして、お礼にとあんみつを置いていかれました」と言う。事務所の冷蔵庫を開けてみると、いかにもスーパーで買いましたという感じのあんみつが3つばらで置いてあった。本当にお金がなかったのね、と少し同情。このぽつんと置かれた3つのあんみつの姿はどこか滑稽で、ちょっと物悲しく、今でもはっきり目に浮かぶ。受付にはちょうど3人の女性がいたので、彼女たちに食べてもらった。

あの女性は今ごろどうしているだろう?ジェイソンさんと二人でアメリカで幸せに暮らしていたらいいな、と思う。

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