エルソル飛脚ブログ ~Run 4 Fun~

四万十川周辺をチョロチョロしている飛脚の記録です。

エルソル大阪物語■11■「浜寺の夏」

2018年01月13日 | エルソル大阪物語

■11■


夏になり、
学校生活にも慣れて、連日寄り道して帰るようになりました。

「大阪球場」は学校のすぐそばにありました。
プロ野球南海ホークスのホームグランドです。

学校帰りに「南海ホークス対阪急ブレーブス」を観戦しました。
ガラガラのレフト外野席に入りました。
背もたれの無い木製の長いベンチ椅子に横になり、適当に見ていました。
阪急ブレーブスの先発は母校中村高校の星「山沖投手」でした。

向かいのライトスタンドの南海の応援だけが賑やかで、
何処を見渡しても閑散としていました。

「ガン!コン!カン!コン!」
すぐ近くにブーマーのホームランが落ちてきました。
驚いて制服にビールをこぼしました。

蒸し暑い夜空には星が少しだけ見えました。


大阪の夏は湿度が高くてとても蒸し暑く、
クーラーの無いアパートの中は蒸しかえりました。

休日、昼前に洗濯を干し終わると
「涼」を求めて駅前の喫茶店に向かいました。
「ガタン、ガタン・・」
電車が通る度にコーヒーカップが揺れました。
「マーティ・バリン」の「Hearts」が物悲しく流れていました。

喫茶を出て昼飯に向かいました。
その途中、肉屋のオバサンが、
「兄ちゃん!コロッケ揚ってるよ~」と声を掛けてきます。

大衆食堂「お多福」に入ります。
「いらっしゃい!兄ちゃん、いつものザル定でええかぁ?」
おたふく顔の奥さんが水を持ってきます。

「梶丸文化」の2階通路では
大村婆さんが部屋の前に椅子を出し、ウチワをワサワサと扇いでいました。

大村婆「お帰り兄ちゃん、暑いな~、溶けるワ~」
   「公園行ってみ!風あるから涼しいで~」

アパート裏には大きな「浜寺公園」がありました。
昔は海水浴場で別荘地でもあった「浜寺公園」は、松林が美しく、きれいに整備されていました。

公園を抜けると「浜寺水路」がありました。
「浜寺水路」の向こうは埋め立てられた土地で、高速湾岸線が高架上を走り、
その向こうが「臨海工業地帯」でした。

「浜寺水路」の石段に腰をおろし、
タバコをふかしながら田舎の友達に手紙なんかを書いていました。
ノートを破いたものやプリントの裏なんかに殴り書きでした。

水路際を散歩していた髪の長いお姉さんがフラフラとこちらに近づいてきました。
「タバコ1本頂いていいかしら?」
風が強くて、長い髪が女性の顔を隠しました。
女性はすぐ近くに腰を下ろしました。
「どうしてこんなところで手紙なんか書いているの?フフフッ」
甘い香水の香りが思考回路を麻痺させます。
「じゃあ、ありがとうね、今度またここで会ったら・・フフフッ・・」
女性はワンピースをヒラヒラとさせながらその場を離れました。
青少年の頭の中は、煩悩ではちきれんばかりにいっぱいになりました。

夕方になると夕日が水路の水をキラキラと赤く照らしました。
大学生のボートが長いオールを漕ぎ、静かに進みました。
魚がたくさん飛び跳ねました。

夜になると巨大な工場群の夜景が幻想的に浮かびあがりました。
まるで「宇宙船」を連想させるような夜景は、何だかとても哀愁が漂っていました。

「もうすぐ夏休みか~」

7月の終わり、
念願の帰省ですが、今回の帰省の目的は「運転免許取得」でした。
中村の自動車教習所に通いました。

教習所は高校の同級生や1コ上の先輩がたくさんいました。
まるで高校時代のように和気あいあいと過ごしました。
しかし9月までに免許を取りたい僕には時間が無く、
キャンセル待ちまでかけて単位取りに励みました。

「右ヨシ!」「左ヨシ!」が口癖になりました。

「第三段階」の難関「坂道発進」も無事クリアして、順調に進みました。

同級生の女の子が卒業検定の路上コースに向かいました。
教習所出てすぐの歩道縁石に乗り上げてしまい、そのままバックで戻ってきました。
「・・・有り得んワ」

僕の卒業検定は「下田コース」でした。
雨上がりの下田の道路にはたくさんのカニがいました。
「プチッ」「プチッ」とカニを轢き殺しながら進みました。

「人に気を付けて、カニを殺す・・」

何だかいけない気持ちになり、思わず助手席の教官に聞きました・・

上田「あの~、ずっとカニ轢いてますけど、いいんでしょうか・・」

教官「横断歩道におったら止まらんと行かんぞ!ハハハ」

上田「・・・(しょーもな)」

無事卒検もクリアしました。

後日、免許センターで無事に免許を取得しました。

■11■

浜寺水路


工場群


Marty Balin - Hearts


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