「ケンタの調子が悪いらしいの」
女房言ったのが七月末のことだった。
ケンタとは女房の札幌の実家で飼う犬のことだ。シェトランドシープドッグという犬種である。
私がケンタとであったのはもう10年前になる。
当時まだ3歳。やんちゃ盛りだった。
そして彼は犬としてはいい顔をしていたと思う。
犬に対して言うのは変だが『男前』だった。
私のボロボロのジーンズの裾を知らぬ間に咬んでさらにボロにしてくれたり、興奮するとチビる癖があって、よく家族に怒られてたっけ。
「ケンタ、チビッたでしょ!」
っていうと、それをごまかそうとして更に騒いだりして。
犬は家族の順列を知っているという。
それでいうとどうもケンタの中で女房は家族で最下位だったようで、その下部たる私は更なる下僕だった。
ヤケに人間味(?)のある犬だった。
そのケンタも13歳。
目の調子が悪く片目はほとんど見えていないようだ、という。
「帰ってくるの待ってるんじゃない?ほら、動物って死期を知ってるっていうじゃない・・・」
「まさか」
なんて話をしていた。
女房と娘二人が札幌に帰るとしばらくは元気でいたという。
しかし日が経つごとにその元気も失われていく・・・
ついに半日以上寝たきりになってしまった。
娘二人の圧倒的なパワーのせいで疲れてしまったのだと感じた妻は予定よりも早く帰省を切り上げることを決断する。
そしていよいよ明日戻るという日の夜・・・
ケンタはついに動かなくなってしまった・・・
「ケンタ、ケンタ!」
揺すってももう動かない。
妻がお父さんを呼びに行こうとしたそのとき・・・
「奇跡のようだったわ」と妻。
スクッ、とケンタは立ち上がり一家の主を迎えに部屋まで歩いていったのである。
そして
家族ひとりひとりの顔を確かめるように見渡したあと、ケンタはゆっくりと眠るように天国に旅立っていったという。
「やっぱり待ってたんだよ」
「うん。今となってはそう思う」
「下部が帰ってきて、一番甘えられる人が来たから安心して眠ったんだよ」
「・・・」
ケンタ、安らかにね。
女房言ったのが七月末のことだった。
ケンタとは女房の札幌の実家で飼う犬のことだ。シェトランドシープドッグという犬種である。
私がケンタとであったのはもう10年前になる。
当時まだ3歳。やんちゃ盛りだった。
そして彼は犬としてはいい顔をしていたと思う。
犬に対して言うのは変だが『男前』だった。
私のボロボロのジーンズの裾を知らぬ間に咬んでさらにボロにしてくれたり、興奮するとチビる癖があって、よく家族に怒られてたっけ。
「ケンタ、チビッたでしょ!」
っていうと、それをごまかそうとして更に騒いだりして。
犬は家族の順列を知っているという。
それでいうとどうもケンタの中で女房は家族で最下位だったようで、その下部たる私は更なる下僕だった。
ヤケに人間味(?)のある犬だった。
そのケンタも13歳。
目の調子が悪く片目はほとんど見えていないようだ、という。
「帰ってくるの待ってるんじゃない?ほら、動物って死期を知ってるっていうじゃない・・・」
「まさか」
なんて話をしていた。
女房と娘二人が札幌に帰るとしばらくは元気でいたという。
しかし日が経つごとにその元気も失われていく・・・
ついに半日以上寝たきりになってしまった。
娘二人の圧倒的なパワーのせいで疲れてしまったのだと感じた妻は予定よりも早く帰省を切り上げることを決断する。
そしていよいよ明日戻るという日の夜・・・
ケンタはついに動かなくなってしまった・・・
「ケンタ、ケンタ!」
揺すってももう動かない。
妻がお父さんを呼びに行こうとしたそのとき・・・
「奇跡のようだったわ」と妻。
スクッ、とケンタは立ち上がり一家の主を迎えに部屋まで歩いていったのである。
そして
家族ひとりひとりの顔を確かめるように見渡したあと、ケンタはゆっくりと眠るように天国に旅立っていったという。
「やっぱり待ってたんだよ」
「うん。今となってはそう思う」
「下部が帰ってきて、一番甘えられる人が来たから安心して眠ったんだよ」
「・・・」
ケンタ、安らかにね。
皆に愛されてケンタも幸せだったですね。