え~はなし

いらっしゃい!コメントしてね!

何と!本日2本目!

2005年02月21日 | 読んだぜ!
同日に二回も投稿するのは初めてだ。
「ヒマだね」・・・って言ったのは誰だ!

本当のこと言ってはいけません。はい。

っま、それはともかく。
新しいカテを作りました。
本を読んで感想を書く「読書感想文」をやってみようかと・・・

桐野夏生の「柔らかな頬」を読んだ。

彼女の本は「グロテスク」以来だ。
人間の内面、特に女性の内面をねっとりと描く人だと思っている。
この「柔らかな頬」は直木賞を受賞したときの作品らしい。

感想文だからね、感想言わなくちゃね。

何かね、読んだあとに「え~、マデぇ」みたいなやりきれなさを感じた。
ハッキリいってね、最後はショックですらあったよ。あたしゃ。
(こんなんで感想文と言えるのだろうか?)

子どもを持つ、特に幼児を持つ親が読むと主人公が本当に可哀相になっちゃう。子どもが誘拐されたあとの気が狂わんばかりの精神的な混乱も丁寧に描写してある。
それに桐野夏生の特徴だろうけど、とにかく「痛い」とか「醜い」っていうのをズバリと生々しく描くんだよね。「うわっ!えぐ~」みたいなの。
あと内面的な醜さね。
普段生活している中で誰もが感じてる妬みだとか憎悪だとかを表現するんだよねぇ。

これはその桐野夏生作品の代表作。

おもしろかったです。はい。

実は私ミステリーはほとんど読んだことがないんだけど、これを読んで以来ハマッてます。


冬の夜空の下で

2005年02月21日 | ほろり
「しゃ・・・ちょう!」

と、呼び止めてから「しまった!」と思った。

振り向いた顔は間違いなく、その人のものだった・・・

冬の夜のガソリンスタンド。
今流行の、というよりも、最近ようやく定着しつつあるセルフ方式のガソリンスタンド(GS)だ。いつものように私は原チャリを降り、ヘルメットをかぶったまま給油する。セルフのGS特有の機械が喋る声だけが響き、私も他の客も黙々と作業をしている。人の温もりとは無縁の効率だけを追求した「サービス」が夜を余計にしらけたものにしていた。

あまり目立たないがこうした方式のGSにも機械のメンテや給油の方法が分からない客のためにユニフォームを着た店員がいる。

いつも利用しているので気に掛けたことなどないが、その日はそのうちの一人がタマタマ私の横を通りかかったのだ。

「!」

私にはスグ分かった。昔、今の仕事に就く前にお世話になったあの人だ。

当時その人はある会社を経営していた。
男ばかり7、8人程度の小さな所帯ではあったが、力仕事も多くいわゆる男の職場だった。
その会社に所用で顔を出せば奥から野太い声でしか返事がなかったし、現場で一緒に仕事をすれば発注者である私をそんなことはお構いなしに小僧扱いして「おいっ!これやってみろ」なんていいながら背中を叩かれたものだった。
そんな荒っぽい職場にありながら、その長としてまとめ上げていた「社長」には腕っ節の強さとそれなりの威厳を感じさせる人柄だった。
その会社に社長の息子が入社した、と聞いたのは私が今の仕事に就いた直後だった。
その「二代目」は大学を卒業してしばらく他の企業で経験をつんでいたが、社長の年齢を考えるとそろそろ父親の会社に入って・・・ということらしかった。

あの元気な社長もそろそろゆっくりと過ごしたいのかな、そういえば年齢もオレのオヤジとそうは変わらないだろうしな、などと思ったものだ。

ところが二年くらいして急にその会社が解散した、という噂が流れてきた。
入社した息子が業界に慣れなかったのではとか、親子喧嘩したらしい、というあくまでも憶測の域を出ない噂でしかなかったが。
もう何の関りもなかったが、あれだけ結束の固かった会社があっけなく解散したと聞いて何となく寂しさを感じた。

その社長が今、目の前に立っている。
つい声を掛けてしまった。

「しゃ・・・ちょう!」

振り向いたその顔を見て私は思うのだ。
「しまった!」

その顔は昔の現場で活き活きと社員やあるいは私に指示をしているものとあまりに違っていた。
生活に、疲れた顔をしていた。

ヘルメットを被ったままだと気づいた私は慌てて脱いだ。
そして「ご無沙汰しております・・・」と挨拶をした。

「ああ・・・」
とだけ、ばつが悪そうに彼は言った。
どうやら私の顔は憶えているようだが、名前までは出てこないようだ。

気まずい雰囲気が流れる・・・

このアタリに住んでいるお母さんの介護をして暮らしていること、このGSの経営者が昔からの知り合いで土日の夜勤をさせてもらっていること、肉体的に楽な年齢ではないなどということを、昔の彼を知る、息子ほども年の違う私に話していた。
懐かしくてという話し振りではなく、状況の説明として話した、という雰囲気だった。

熱っぽく背中を叩いたあの勢いは、なかった。

私はバツの悪さを感じていた。

早くその場を立ち去りたい衝動に駆られた。

どういう事情があるにせよ、自分のオヤジほどの年齢の人が土日だけとはいえ徹夜の仕事をしている。

「どうしてだ」
という思いを抱え、ありきたりな挨拶をして私はそのGSを後にした。

冬の夜気はキーンと冷えてとがっていた。