intoxicated life

『戦うやだもん』がお送りする、画日記とエッセイの広場。最近はライブレビュー中心です。

高尾―甲府―小淵沢―松本―篠ノ井―長野―大宮―新宿(その2)

2007-04-12 | railway
座席は、甲府からの客で八割ほど埋まっていた。


茅野、岡谷あたりで、高校生の波が押し寄せる。真新しい制服に身を包んだ、お世辞にもかわいいとは言いがたい、初々しい顔がならぶ。山梨県(民)に対する固定概念がひとつ構築されたような気分になりながら、塩尻以北の未乗区間に突入する。


やはり、この瞬間はたまらない。東京―塩尻―名古屋区間の「大」中央線をはじめ、ほぼ完乗してしまった関東近郊の路線ではもはや味わうことのできない感覚が、そこにはあるのだ。未知なる地への侵入というべきか、ただそんなに大袈裟なものではないことも確かである。


長野第二の都市・松本までが中央本線となる。EPSONの工場などが建ち並ぶ工業地域を抜けると、ニトリ、nojima、ブックオフなど、郊外型店舗が多く出現し、いわゆる「国道16号線」的な風景が広がる。JR東海カラーの特急電車も隣を通過していく。高校生は口々に学校生活の不満を垂らしているが、特に「西山(先生)」の評判はすこぶる悪い。


大貨物ターミナルの南松本を過ぎ、路線バスが走っているのが車窓から見えた。「まつもとーー」の到着アナウンスがホームに響きわたる。懐中時計は16時56分を示していた。二十分近く停車する旨を知らせる車内放送が入り、ため息にも似た空気が車内に立ちのぼるも、苦笑いの中にすぐさま溶けていった。


降りる人以上に乗る人がいたため、席にリュックを置いたまま改札を出てみると、駅前では「中信地区仏教青年会」の面々が、先の能登半島地震の義援金を募っていた。足を止める人は少ない。僕も松本城の位置を確認し、乗ってきた列車へそそくさと戻る。


話し声が妙に響く、停車中の車内。腰の据わった静寂をつんざく、エスカレーターの注意放送。いやがおうにも聴こえてきてしまうのが、たまらない。一方、向かいのホームに入ってきた辰野行1538列車は、そんなこともお構いなしとばかりに人を吐き出し、吸い込んでは去っていく。その姿は、どこか頼もしくもある。


七番線に松本電鉄、三番線にはあずさ32号千葉行がそれぞれ入線してきた。これを合図にするかのように、長野行普通列車は17時17分に松本を発った。美しい夕陽の下で、少年たちはマンガを読んでいる。


<つづく>