intoxicated life

『戦うやだもん』がお送りする、画日記とエッセイの広場。最近はライブレビュー中心です。

北風ピーピー、下痢ピーピー

2007-11-20 | ライフサイクル
クレヨンしんちゃんの季節である。


それにしても、


東京に木枯らし1号 昨年より6日遅れ

 気象庁は18日、東京地方に木枯らし1号が吹いたと発表した。昨年より6日遅い。同庁によると、冬型の気圧配置のため、夕方から北西の季節風が強まった。同日午後5時54分、最大瞬間風速18.7メートルを記録した。

 日中の東京は穏やかに晴れ、気温は午後1時半すぎ、平年より3.1度高い19.4度まで上がった。」 (http://www.asahi.com/national/update/1118/TKY200711180135.html)


というお役所の発表を受けて、


    


例を挙げればキリはないが、多くの人が季節感を覚えるらしい。


もっともこんな人こんな人もいる。「発表」を受けて「季節感」を覚える。順序が逆だと思うのだが、どうだろうか。



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先日、ずいぶん久しぶりに新宿ロフトへ赴いた。group_inou、nhhmbase(ネハンベース)といった若いバンドが元気に演奏していたというのはともかく、印象的だったのはライブよりも歌舞伎町の街並みだ。数年前からの風俗店に対する規制強化で、なんというかクリーンな猥雑さ(字義的・論理的にそんなものはないはずだが)が目立ってきている。吉行淳之介の小説のような洗練された猥雑さともちがう、なんとも間の抜けた雰囲気。中学の頃は「ここで大人になるんかな…」とか思ったものだが。



MUSIC:SUPER GANG/MOCK ORANGE
     DE-LUXE/LUSH



チャットモンチー07/08ライブ「生命力みなぎりTOUR」 11/16 Zepp Tokyo 

2007-11-17 | music
M1  真夜中遊園地
M2  Make up! Make up!
M3  とび魚のバタフライ
M4  橙
―MC―
M5  親知らず
―MC―
M6  手のなるほうへ
M7  ハナノユメ
M8  ウィークエンドのまぼろし
M9  恋の煙
M10 さよならGood bye
―MC―
M11 世界が終わる夜に
M12 おとぎの国の君
M13 恋愛スピリッツ
―MC―
M14 小さなキラキラ
M15 バスロマンス
M16 モバイルワールド
M17 ミカヅキ
―MC―
M18 東京ハチミツオーケストラ
M19 コスモワールド
M20 女子たちに明日はない
M21 シャングリラ

Anc.
M1  素直
M2  サラバ青春



距離感と緊張感。両者の違いは大きい。


『シャングリラ』のヒット以降、チャットモンチーはその音楽的なスタンスを変化させてきた。本人達の弁を借りるなら、


「単純にお客さんが増えてきて(中略)、聴いてくれる人に向けて歌いかけてみようとか、「演奏を聴いてくれ!」って訴えかけてみようとか。そういう思いが増えました」(Vo/G 橋本絵莉子『Musica』2007年7月号、p.27)

「そう、『耳鳴り』だったら、すごいギター重ねてたりするでしょう? それが3人とも、やっぱ、違和感があるっていうか。もうちょっとライヴに近いものでもいいんじゃないかっていうふうに思っていて」(Dr/Cho 高橋久美子『Rockin'on Japan』2007年11月号、p.40)


じじつ、この日のパフォーマンスにもその姿勢はにじみ出ていた。セカンドアルバムからのナンバーでそれ以前の楽曲を挟み込むようなセットリストはもちろん、M6では冒頭のコーラスを観客に(出来はともかく)手伝ってもらったり、MCの回数を増やしてみたり、武道館公演決定をくす玉つきのサプライズで発表してみたり、さまざまな仕掛けが用意された。高校生を中心とした若さの目立つオーディエンスは、舞台上で演奏者が発する一言一句ないし一音一フレーズに、暖かい拍手と歓声で応える。まさに、彼女達にとっては理想のステージだったといえるだろう。


観客との距離は縮まった。各種メディアからは最高の評価を得ている。オリコン初登場2位のセカンドアルバムを引っさげたバンドは今後、全国各地のツアー会場で熱烈な歓迎を受けるだろう。


それでも、失われていくものは少なくない。


極私的な印象を述べれば、日比谷野外音楽堂で行われた七夕ライブとは比べものにならないほど波のない、ダラけた演奏だった。先述のセットリストはわかりやすいを通り越して安直だし、テンポの速い曲でしか反応できない聴き手も安直。と思えば、東京公演だからこそ安直に演(や)るべき『東京ハチミツ~』を中途半端な位置に持ってくる。(バンドではなくアコースティック形式をとった)アンコールありきの選曲だから最後はムリでも、せめてアンコール前のラストに持ってくるべきだろう。


もっとも、3ピース感を全面に打ち出したというアルバムの制作方針にも、あまり共感できない。この点については、彼女達のサウンド・プロデューサーであるいしわたり淳治氏が所属していたスーパーカーとは大きく異なる。なぜならスーパーカーは、特に打ち込みを多用した後期の楽曲でも、ライブではそれをあえて「生音」で再現させることにこだわりを持っていたからだ。スーパーカーの話はともかく、ライブの雰囲気を出すために3ピースであることを強調するのはいいが、あれだけギターを重ねたからこそ素晴らしいCDが出来ることもあるはずだ。むしろ、CDと同じような演奏を生で聴いたところで、それは「ライブ」といえるのだろうか?


無論、ツアー初日というのもある。『耳鳴り』までとは異なるアプローチを示したかったという意図もあるだろう。個人的には、7月のステージは客のノリを束縛しない野音であり、今回のそれは、目の前の女子高生が繰り出す縦ノリ(ヒザの屈伸運動でリズムを取る)を否が応にも見ざるを得ないZeppだったという事情も大いにあった。千歩譲ってそうだとしても、M8やM10など過去の名曲から、往時のヒリヒリしたテンションが失われていくことに、悲しみを隠すことができないのだ。


ベースの福岡晃子は、『恋愛スピリッツ』を演奏中に涙を流していた客を見て、「決してべつに、みんなに一体化してほしいわけではなくて。それぞれに、思うことがあってほしいって思うけど、私たちのピークがその人の感極まったとこにきたっていうのが、すごく嬉しかった」(前掲『Rockin'on Japan』p.46)と述べている。今、彼女達のピークと僕のピークは、少しずつズレはじめている。