intoxicated life

『戦うやだもん』がお送りする、画日記とエッセイの広場。最近はライブレビュー中心です。

"fluidify"から考える音楽の「フリーミアム」

2010-02-08 | opinion
・なぜ無料配信アルバムなのか? euphoriaインタビュー
http://www.cinra.net/interview/2010/02/05/000000.php

実際にDLしてみた。zipファイルを解凍すると、アルバム全曲の入ったフォルダとアートワークなどのフォルダが現れる。前者をmp3プレイヤーに移し、出掛けに再生。軽快なポストロックのサウンドが流れてくる。後者を開くと、pdf形式の歌詞カードが表示された。率直に言って、アートワークにはおまけ以上の価値を感じなかった。

「フリーミアム」なる語が市民権を獲得しはじめた昨今だが、この試みが示唆する音楽の未来とは、《データがいくらでも複製可能なことによって、生の演奏の価値がよりはっきり見えてくるのかなって》というメンバーの言にもあるように、音源はあくまで知名度アップ、ライブに来てもらうための手段と割り切る姿勢である(ただしeuphoriaの場合、バンド自体がまだマイナーであり、またインスト曲が多くカラオケなどの二次使用印税が見込めないなどの条件が「割り切り」に寄与していることは否定できない。要はインディーズ限定の戦略である)。

だが今回の試み、個人的にはちょっとやりすぎというか、もったいないなとも思う。たとえばZAZENBOYSは2005年(松下敦加入)以降、地方のライブ音源を無料公開する試みを数回行っている。これはレコーディング費用をかけずに「生の演奏」を聴かせるという意味で、非常に効率的かつ効果的な手法だったと評価できる。euphoriaの場合は完パケした音源をそのまま無料にしている※ので、ちょっとコストが高すぎるのではないか。音楽に足を突っ込んでいる者としては、「曲をつくるってそんなに簡単じゃないでしょ、リスナーを甘やかしすぎじゃないの?」と言いたくもなる。

そこで提案。デモテープを無料で出すのはどうだろうか。スタジオで一発撮りした音源をアルバムとおなじ曲順でパッケージ化する。多少音質が悪くても構わない(みんなYoutubeで慣れている)。デモ音源はこれまでマニア向け、コアなファン向けの商品となっていたが、それを前景化するのだ。換言すれば、95%の「フリー」をデモテープで、5%の「プレミアム」をCDとライブ(+物販)で回収するビジネスモデルである。

このモデルの潜在力は、「プレミアム」の比率が10%くらいは見込めるのではないか、という点にある。Myspaceは試聴のハードルを大きく下げることに成功したが、基本的にダウンロードできない(=ポータブルでない)以上、それはCD店と変わらない。《デモテでフリーミアム》。今すぐにでもできる音楽流通の新しい形だと思うのだが、どうだろうか。



※しかも彼らの作品をいち早く手に入れたい(=自らの投資によって彼らの活動を支えたい)ファンは、お金を出して買いたくても買えないのである。ちなみに公式HPでは、CD版発売は"Coming Soon"となっている。