フリーターが語る渡り奉公人事情

ターミネイターにならないために--フリーターの本当の姿を知ってください!

経営者文化大革命としてのジョブカフェ

2006-08-14 01:25:01 | 現状
 先日、大阪府のジョブカフェを訪れた。大阪北部・天満のエルおおさかの2Fにあるほうだ。(南方面では堺にもある。)労働行政の職員はごくわずか。ほとんどは民間のある会社(ヒント:αβ-18;イニシアルはアルファベットの18番目・英語で新兵調達という勇ましい意味の会社名)の職員がほとんどだという。ちなみに、この民間会社の名前は伏せてくれとのこと。ヒントまでは禁じていなかったので、みなさん、推論してみてください。

 インターネットカフェのように会員制になっており、登録が必要。登録をすませ、係員からアウトラインの紹介を受けたあと、どんなところか見て回った。

 就職や仕事に関するいろいろな情報・資料がおいてあるコーナーがやはりメインだ。求人誌のほか、会社四季報や業界図鑑などもおいてある。職業別の紹介ヴィデオやビジネス・マナー解説用ヴィデオも置いてある。

 名前にあるカフェのほうの機能はあまり期待しないほうがいいだろう。スターバックスみたいなサーヴィスはない。低予算で調達したであろうかたいイスに座って、セルフサーヴィスで機械からくんできたコーヒーやお茶を飲めるだけだ。小さい白い紙コップで飲むので、量も少ない。実際、タダで飲めるといえばこんなものだろう。

 フロアには、各種の仕事関連のパンフレットやITスキル・ビジネスマナー、履歴書・職務経歴書の書き方、面接の模擬試験などの講座案内もある。
 
 インターネットで職を検索できるコーナーもあり、ふつうのインターネットカフェと同じように利用できる。

そのほか、スピード写真とプロに撮ってもらった写真の違いを説明するものがポスターみたいに壁に貼ってある。「(うまくいかないことを)人のせいにばかりしていませんか?」といった、求職者の心構えについて諭したカラフルな文書もある。

明るく、楽しい雰囲気。だけどちょっと職を探す若者を幼児扱いしているきらいはないだろうか? 職業紹介所なんて、多少暗かったり、退屈だったり、殺風景だったりするものではないだろうか? ソファでいい味のコーヒー飲めるわけでもないのにカフェというのも? だ。若者はコーヒーを飲みながらでなければ相談事ひとつできないわけではない。
 若い世代に自助努力・自己責任を強調する言葉が、かわいいプップ文字や蛍光色を用いていたるところに置かれている。しかし、一方で、職場の裏面ーー過労死・うつ・燃え尽き、企業の不当労働行為、職場のいじめ・いやがらせなどーーについて知らせる情報は見渡す限り皆無といっていい。いざというときに連絡・相談する労働行政・労働組合・弁護士などの活動を広く知らせる書籍やミニコミ等もまたジョブカフェには置かれていないのだ。これはバランスがよくない。とうのを通り越して、経営者好みの文化に労働行政がのっとられた格好だ。プロレタリア文化大革命ではなく、経営者文化大革命なのだ。
 いろいろな情報のおいてあるラックのなかに、こういうものもあった。
 自衛官募集要項をA4二つ折りのパンフレットにしたもの。内側にホッチキスでとめてあるのは問いあわせ用のハガキだ。
 自衛隊総合のカラー写真をふんだんに使ったもののほか、陸上・海上などジャンル別の応募要綱もある。年齢や健康状態など、かなり厳密な規定がある。オールカラーのパンフレットのなかには、防衛大学校の紹介や、法務・音楽など市民社会にも存在する部署も掲載されている。
興味深いことに、自衛隊の予備隊もあるという。年齢は16歳~34歳まで。一年のうち数日だけ訓練を受け、ほんのたまにだけ出動可能性もあるという。
 しかし、アメリカの予備兵のように、いざ戦争となれば出動しなければならないだろう。日本でもアメリカと同じように職にあぶれたりお金がなくて大学に行けない層が、自衛隊に志願するほかない状況があるということだ。
さらに、年齢や健康状態などの制約によって、自衛隊にも志願資格がなければどうすればいいのだろうか? 

こうした状態が常態化すると、ひどい条件でアルバイトや派遣を使い捨てする経営者はこう言うだろう。「自衛隊に行った人に比べればマシでしょ」と。そして、もっと労働環境を過酷で暴力的なものに変えてゆくはずだ。

こうした経営者による文化大革命を許してはいけないとわたしは思うが読者はどうか?
ジョブカフェは、会社四季報の横に鎌田 慧の出稼ぎ労働者のルポや、労働組合の機関紙や、「季刊 労働法」のような雑誌をも置くべきだ。生活保護を取得するためのマニュアル本を「絶対内定」の横に置いたほうがいい。「なんでも人のせいにしていないか」と壁に紙を貼るのをよして、「なんでも自分のせいだと思っていませんか?」という情報も提供すべきだ。失業苦にくわえて自分を責め、自分を嫌いになってはかなわない。ジョブカフェに通う道すがら、列車のレールに飛び込めといわんばかりに失業者を長期にわたって鞭打つしうちはやめなければならない。

研究会・職場の人権5月定例会で、大阪府の労働行政の橋本さんが報告をしておられた。彼の発言によると、大阪のジョブカフェが民間のR社のスタッフとノウハウを導入して、やっと求職者の正社員就職率が3%に上昇したという。つまり、残る97%は派遣やアルバイトや契約といった非正規雇用の「就職」ということだ。
失業者が自分をやっつけても何もはじまらない。自分の権利を勝ち取るためにやるべきことは、職を探すのは当然のこととして、ほかにもあるのではないだろうか?
周囲の大人たちは、若い世代が労働組合をやることや、福祉を利用することをも見守ったり支援したりすることを求められている。
労働行政は、経営者文化大革命のあやつり人形になってはいけない。プレカリアート文化を紹介することに予算と人手をさかねばならない。たとえば、週に2,3回だけでも労働組合のアクテイヴィストと語り合う会を設けてもいいと思う。

トラックバック用URL
もじれの日々