「こども展―名画にみるこどもと画家の絆」
[仏題:Les enfants modèles]
森アーツセンターギャラリー
2014年4月19日~6月29日
本展は、数年前にオランジュリー美術館(パリ)で開催された展覧会を日本向けに再構成したものである。
パリ版の構成がどのようなものだったかについては分からないが、少なくとも本展の展示内容をみる限り、どこかもやもやした感じが残った。
体系的なようで体系的でないというか、本質的な意味での深みに欠けていたように思う。
子どもの肖像画が描かれるようになるのは大体ルネサンス期以降なのだが、本展のように印象派前後の作品だけを展示していては「こども観」の歴史的変遷はなかなか掴みにくい。
やはり絵画における「こども観」を探るにあたっては、少なくとも数点はルネサンス~バロック・ロココあたりの作品が必要だったのではないか。
年明けに同美術館で開催された「ラファエル前派展」が非常に内容の濃いものだったため、期待しすぎていた部分もあるのだろうが、会期初日から一週間経っても届いていない作品があったり、通常入口に用意されている作品リストがいまだに「作成中」だったり、やや準備不足の感が否めないことも確かだ。
その点、本展の監修にあたった千足伸行氏の語る「展覧会のみどころ」や図録に掲載されている同氏の解説では、絵画における「こども観」の歴史的変遷が丁寧に書かれており、非常に参考になる。
図版に収められた千足氏の解説では、ルソーの『エミール』はもちろん、アリエスの『〈子供〉の誕生―アンシァン・レジーム期の子供と家族』やロマン派の詩人ワーズワースの「虹」、「霊魂不滅のオード」からの引用もあり、興味深い内容になっていた。
こどもと絵画。
こどもを描く画家のまなざしは、こどもをみる社会のまなざしの反映でもある。
「こども観」の歴史については、これからまた調べていきたい。
では最後に、ラファエル前派の画家ジョン・エヴァレット・ミレイの描いた〈こども〉を載せておこう。
'Bubbles' (originally titled 'A Child's World', 1886, Lady Lever Art Gallery, Port Sunlight)
[【注】 本展覧会には出品されていません]
広告に用いられたことでかなりの議論を呼んだ一作。
また、BBCのドラマ"Desperate Romantics"ではロセッティやハントらにからかわれていたが、真実やいかに。
「こどもは大人の父である」 ("The Child is father of the Man")
―――ワーズワース 「虹」
―――ワーズワース 「虹」
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