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西洋美術関連ブログ 思索の断片
―Thoughts, Chiefly Vague

Effie Gray (2014)

2015-03-08 09:52:30 | 映画

Effie Gray
Director: Richard Laxton
Writer: Emma Thompson
Stars: Dakota Fanning, Emma Thompson, Greg Wise, Tom Sturridge
2014
(IMDb)

Every delay that postpones our joys is long. --- Ovid

This film, originally entitled just Effie, was released last year (2014) in UK, though it was at first planned to be open to the public a few years earlier.
The primary cause of its deferment was an alleged plagiarism by the screenwriter (Emma Thompson) and a series of court following that.

Anyway, we can now enjoy this long-delayed film.

Effie Gray is on a love triangle in the art world of the Victorian age.
The story is quite famous ---

In 1848 (also the year of the foundation of the Pre-Raphaelite Brotherhood [PRB]), John Ruskin, then authority in the art circles, married Euphemia "Effie" Gray, about 10 years younger than her husband.
Unfortunately, their wedlock did not last so long; for Effie wearied of the marriage life without consummation, from which Ruskin abstained for some complex reasons.

Their marriage was finally annulled in 1854, which caused a major scandal.
In the following year, Effie married again John Everett Millais, one of the three leading members of the PRB along with Dante Gabriel Rossetti and William Holman Hunt.
What was ironical was that Ruskin was their influential patron. ---

As for the film itself, I felt something lacking (though as a fan of Dakota Fanning, I was well satisfied).
In view of the fact that this love story is a quite well-known one, the overall plot seemed to be somewhat tedious.
I think the screenwriter played it too straight.

It was also a little letdown for me that so little time was devoted to depict Effie's second matrimony compared with her first one.

As the Guardian review exactly said, Effie Gray was "a handsome but inert portrait".
It is truly beautiful and sympathetic yet something is lacking.

There is, however, something I found very interesting through this 108 minutes.
I did not know about Elizabeth Eastlake (played by Emma Thompson) and her intimate relationship with Effie especially during the period of aforementioned annulment proceedings.

It might be intriguing to study their relationship including Lady Eastlake's husband, Charles Lock Eastlake (first pupil of Benjamin Robert Haydon and 7th President of the Royal Academy of Arts).

A few years ago, it was reported that Keira Knightley also would play Effie in Untouched (The Film Stage [7 November, 2011]).
Although it seems there are not any further particulars, I am looking forward to watching it.



「万能鑑定士Q―モナ・リザの瞳―」 (2014)

2015-01-11 18:01:43 | 映画

万能鑑定士Q―モナ・リザの瞳―
[英題:'ALL-ROUND APPRAISER Q: The Eyes of Mona Lisa']
監督 佐藤信介
出演 綾瀬はるか、松坂桃李ほか
2014
(IMDb)

観た。

原作は『万能鑑定士Qの事件簿 IX』。
松岡圭祐による推理小説シリーズの一作である。

このシリーズは読んだことがないが、ウィキペディアによれば、『万能鑑定士Qの推理劇 II』では、ホームズの未発表原稿の謎が扱われているとのこと。
少し興味がある。

さて、今回の映画について。

単純に一本の映画としてみれば、まぁ、しっかりまとまっているなという印象。
ただ、「美術」との関連でなにかいうとなると、なんともコメントがしづらい。
そこまで突っ込んだ内容ではないからだ。

数年前、あるイタリアの美術史家が、レオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》の瞳のなかに、なにか文字が書かれていることを「発見」した。
これは実際にあったことで(参考:the guardian紙の記事)、この映画はこの「発見」をひとつの題材としている。

《モナ・リザ》のモデルが誰なのかという問題については、長らく議論されてきた。
いまのところは、ジョコンド夫人というのが、とりあえず定説とされている。

今回の研究成果は、この絵のモデルの解明の一助となるかもしれないとのこと。

しかし、個人的な意見としては、このモデルが誰なのかということにそこまで興味はない。
おそらく、決定的なことをいうのはきわめて難しいし、画家自身、ある人物の「純粋」な写実で終わらせようとしたとも思えない。

かりにある特定のモデルがいたとして、その人物をひとつのインスピレーション源としながらも、なにか大きな、はかりしれない存在の影をそこに写し取ろうとした、というのが実際ではなかったのだろうか。

もともとはカンヴァスの両サイドに描かれていた(とされる)柱の部分をのちに「削った」という事件に関しても(下図参照)、いまでは絵画の所有者が額縁の大きさに合わせるために切り落としたという見方が強いようだが、いっぽうで、画家本人が削ったという可能性もゼロではないだろう。

それこそ、「柱」という、画面のなかの「額縁」を取っ払い、制限されていた空間を解放して、より大きな力の存在を示唆するといった意識から。

 
Leonardo's Mona Lisa / Raphael's sketch (probably) of Leonardo's Mona Lisa

美術作品には「真贋問題」がしばしばつきまとう。
同じ「鑑定モノ」でいえば、「鑑定士と顔のない依頼人」も、近いうちに観てみたい。

最後に、今回の映画のトレイラーを。


「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」 (2014)

2014-12-23 23:45:21 | 映画

ナショナル・ギャラリー 英国の至宝
[原題:'National Gallery']
監督 フレデリック・ワイズマン
2014
(IMDb)

いま、「美術館映画」が熱い。

先日、公開になったばかりの「みんなのアムステルダム国立美術館へ」。


来年の2月に公開される「ヴァチカン美術館4K3D天国への入口」。


そして、「ナショナル・ギャラリー 英国の至宝」(2015年1月17日公開予定)。
19世紀初頭に設立された、英国の誇る美の殿堂。

今日、この映画を試写会で鑑賞してきた。

会場は国立西洋美術館(上野)。
上映後には、馬渕明子氏(国立西洋美術館館長)や岩井希久子氏(絵画修復家)らによるトークセッションも行われた。

この映画、なんと上映時間181分(3時間)。

「みんなのアムステルダム国立美術館へ」が90分、「ヴァチカン美術館4K3D天国への入口」が66分なのと比べても、その長さには驚く。

観終わった感想としては、長さを感じさせないほど、とまではいかずとも、長さに相応しい、充実した内容の作品だと思った。

「みんなのアムステルダム国立美術館へ」の「前編」にあたる、「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」を観たときに思ったのだが、私はどうも、いわゆる「ドキュメンタリー映画」というのが苦手である。
テレビの特番でドキュメンタリーを観る分にはなんとも思わないのだが、映画のドキュメンタリーとなると、なんだか消化不良というか、本質的な意味での満足感を得られることが少なかった。

そんな感じで観に行った、今日の「ドキュメンタリー映画」。

この映画、ただの「ドキュメンタリー映画」ではない。

独特の音響効果。
いわゆる「インタビュアー」の存在を感じさせない、"selfless"な視点。
「心地よい違和感」を観客に与えながら、話は進行してゆく。

"documentary"というよりは、"dialogue"。

館長や専門家、有識者らによる会議の現場。
美術館の職員による一般向けの作品レクチャーの一コマ。
手に汗握る、修復家の一挙手一投足。

観客は、彼らの語りに誘われ、いつのまにか、その"dialogue"に加わっている。

映画の最後で二人のダンサーが出てきて、美術館内で踊っている場面に関しては、鑑賞後のトークセッションでも議論になっていたが、私個人としては、面白い演出だと思って観ていた。
あの場面は、(たしか)ディアナ(ダイアナ)とカリストだったり、ディアナとアクタイオンだったりといった、神話の物語に関連した絵画の解説がなされたあとに、二人が登場するという流れだったと記憶している。

カリストの前に登場したディアナとは、実際には、ゼウスが変身した姿であった。
この意味において、映画の最後に登場するダンサーの二人(男性と女性)は、ゼウスとカリスト、また、アクタイオンとディアナという男女の関係とパラレルになっているように、私には思えた。
(去りゆく二人の恋の行方は、誰にも分からない。)

また、細かいところでいえば、美術館の学芸員が、フェルメールの作品の特質を、「写実と抽象の間をとっているところ」と解説していたのが印象に残った。
私もそう思う。

デルフト眺望》のような、現実の風景に取材してはいるが、だからといって「写実」の域には留まらず、有限の世界を越えたところに住まう、「超越」的な存在の影をも写し取っているように思われる作品などは、まさにその最たるものではないか。

プルースト(『失われた時を求めて』)がこの作品に言及したり、後世の人間が、フェルメールとスピノザとを結びつけようと試みたりするのも(参考)、この画家の作品に、たんなる「写実」の域を超えた、「なにか」をみてとっているからではないだろうか。



「時を越えて、美と出逢う」―。
ワイズマン(監督)の力作が、これだ。

「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」 (2008)

2014-08-31 21:53:45 | 映画

ようこそ、アムステルダム国立美術館へ
[英題: 'The New Rijksmuseum']
監督 ウケ・ホーヘンダイク
出演 ロナルド・デ・レーウ ほか
2008
(IMDb)

貿易業を中心とした経済活動の発展により空前の繁栄を現出した17世紀のオランダ。
未曾有の経済成長は市民の台頭を促し、彼らはそれまで王侯貴族による独占が続いていた絵画市場を席巻する。
結果的に質・量ともに絶頂を迎えた17世紀のオランダ絵画は、のちに「黄金期」と呼ばれることとなる。

オランダのアムステルダム国立美術館は、こうした「黄金期」の絵画の粋を集めた美の殿堂として、19世紀初頭に開館した。
そのコレクションのなかには、レンブラントの《夜警》やフェルメールの《牛乳を注ぐ女》、《青衣の女》なども含まれる。


レンブラント 《夜警


フェルメール 《牛乳を注ぐ女


フェルメール 《青衣の女

2004年に始まった美術館の大改装計画は、紛糾、妥協、衝突、責任者の辞任と、数々の紆余曲折があり、一向に埒が明かない。

踊れど進まぬ会議。
ようやく再び開館したのが昨年の4月。
着手から10年弱の月日が過ぎていた。

2008年に公開された映画「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」は、こうした紛乱の只中にある美術館改装現場の裏側を取材したドキュメンタリーである。
(映画公開時には美術館は閉館中だったため、「ようこそ」という邦題にはなかなか皮肉な響きがある)

こちらが予告編の映像。


アマゾンのレビューをみる限りは好意的な評価が多いようだが、個人的にはあまり面白さがよくわからなかった。
改装現場の裏側の映像はたしかに貴重だと思うものの、映されているのは実質的にグダグダな会議の模様だけであって、最後の方に至っては一線から退く館長の思い出ムービーのような趣さえある。
それが映画のなかで語られている「オランダ人らしさ」といわれればそれまでなのかもしれない。

ただ、エンディングに近いところの横たわる彫刻群の映像は、印象的でよかったと思う。
みようによってはコミカルにも映る。

ちなみにこの映画、今年の12月に日本で続編が公開される。
邦題は「みんなのアムステルダム国立美術館へ」。

2013年の再オープンまでの模様が収められているとのこと。
前作にあたる「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」よりは明るいトーンになっているのだろうか。
少し気になる。

「名探偵コナン 異次元の狙撃手」 (2014)

2014-05-01 12:18:04 | 映画

名探偵コナン 異次元の狙撃手
[英題:Detective Conan: The Dimensional Sniper
監督 静野孔文
出演 高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也
2014
(IMDb)

連載20周年を迎えた「名探偵コナン」。
劇場版第18弾が現在公開中だ。

ネタバレになるので内容にはあまり触れられないが、個人的には好きな作品だった。
(もっとも、アクションシーンの多さは若干気になったが。)

一人一人がやることをやって、それが結果的にチームとしてうまく機能することにつながる、という感じがよかった。
今後の展開も、非常に気になる。

さて、美術の話。
どう関連づけるか。

スナイパー」(狙撃手)・・・?

このサイトによると、英語で"sniper"という単語が最初に用いられたのは19世紀の初めのことらしい。
ゆえに、当然のことだが、スナイパーの描かれた絵画となると、かなり作品数が限られてくる。
bridgemanで検索しても、版画や写真を除けば、スナイパーが主題の絵画作品はきわめて少ない。


William Simpson, 'Excavated Church in the Caverns of Inkerman' (1856, private collection)

異次元」・・・?

〈次元〉ということでいえば、いわゆるキュビスムは西洋絵画史における〈次元〉の革命であった。
ピカソやブラックらに代表されるこの一派の画家は、対象をありのまま写実することにほとんど関心がなかった。
それよりもむしろ、〈三次元〉の対象をいかにして〈二次元〉に落とし込めるか、という点に彼らの興味はあった。


Picasso, 'Portrait of Pablo Picasso' (1912, The Art Institute of Chicago)


Picasso, 'Las Meninas No.31, 1957' (1957, Museu Picasso, Barcelona, Spain)

ゴンブリッチは言う。

平面上に奥行きを表現するという、絵画にとって避けられないパラドックスに対して、どの時代の画家も自分なりの解答を出そうとしてきた。
そんななかにあって、このパラドックスを糊塗するのではなく、むしろそれを逆手にとって新しい効果を出そうとする試みが、キュビスムだった。
(『美術の物語』 444頁)

異次元―――。