ポーランドからの報告

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ザメンホフの足跡を辿る III  カウナス・ドルスキニンカイ

2006年12月15日 | 文化

ザメンホフの足跡は、ポーランドのお隣の国、リトアニア共和国にても辿ることができます。

リトアニア第二の都市カウナスは、ザメンホフの妻、クララの出身地で、カウナスには、クララ一家がかつて住んでいた家が現在も保存されており、「エスペラントの家」として、ザメンホフ関係の資料館になっています。昨年2005年にリトアニアで第90回世界エスペラント大会が開かれた際には、多数のエスペランティストが、この「エスペラントの家」を訪れました。(写真)

   

ザメンホフの妻クララはリトアニア系ユダヤ人で、とりわけクララの父は、ザメンホフのエスペラント運動に非常に理解を示したことで知られている人物です。エスペラントを考案した当時、まだ若くてお金のなかったザメンホフは、クララの父からの経済的支援を得て、ついに1887年に、Doktoro Esperanto. Lingvo internacia. Antaŭparolo kaj plena lernolibro-『エスペラント博士. 国際語. 序文と完全な学習書』を出版することができたのです。

   
   

カウナスには、そのほか、多数のユダヤ人を救ったことで知られる杉原千畝の記念館もあり、あわせての見学が可能です。カウナスは、ヴィリニュスからバスで2時間ほどですので、ヴィリニュスから日帰りで訪れることができます。

ところで「エスペラント発祥の地はどこか?」ということも、エスペランティストの間で議論されることがあります。ユダヤ人のザメンホフは、当時帝政ロシア領であった現在のポーランドのビャウィストクで生まれ育ち、ワルシャワにて書籍を発表しました。ですので、「現在のポーランドがエスペラント発祥の地である」ということで、議論の余地はあまりないように思えるのですが、リトアニアのエスペランティストに言わせると、「リトアニアこそがエスペラント発祥の地」なのだそうです。なんとなれば、ザメンホフはリトアニア南部ドルスキニンカイ近郊の保養地にしばし滞在していた時期があり、その後ワルシャワに戻って、最初のエスペラントの本を執筆したのですが、リトアニア人に言わせると、「この保養地にいたときに、エスペラントのアイディアが修練されたのだ」ということだそうで、かの地には、ザメンホフの銅像まで立っています。そして彼らは「ザメンホフはリトアニア人である」と、さも当然だという感じで主張しています。

   

リトアニアといえば、歴史上もっともユダヤ人迫害がひどかった地域の一つです。かつて幾度となく、ポグロムの嵐が当地のユダヤ人を襲い、第二次世界大戦中は、ナチス軍に率先して自警団を組み、ユダヤ人を虐殺したことで知られています。ザメンホフ妻クララの父がエスペラント運動を全面的に支援したのも、このような土地時代背景があったことでしょう。体制が変り2004年に欧州連合(EU)に加盟した現在でも、リトアニアでの対ユダヤ人感情は、ポーランド以上に悪いのが通常です。しかしユダヤ人として迫害の対象となる人物も、偉人であれば、リトアニア人として尊敬し、このように銅像まで立ててしまいます。

ところで、ビャウィストクやカウナスなど、ポーランド・ロシア・リトアニア隣接地域、つまり帝政ロシア時代のユダヤ教徒居住区であったグロドノ県一帯は、ザメンホフのほかにも、マックス・ヴァインライヒ、ウリエル・ヴァインライヒ、エリエゼル・ベン・イェフダーなど、言語に関係する人物を数多く排出しており、この地域と言語学との関係を結びつけて考える学者もいます。実際のところ、これらの言語学者が言語学に入れ組んだ、その動機と背景を学ぶことで、少なくとも、この地域の、複雑に入り組んだ民族史の、理解の一助となるのではないかと思います。


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1 コメント

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バルト諸国リトアニア (sadakun_d)
2006-12-18 21:15:02
まさかポーランドからリトアニアに来てくれるとは思いませんでした。嬉しいや。

13~14世紀にはバルト諸国やポーランドのグダンスク辺りはドイツ騎士団領地になってしまったんです。



が「ポーランド=リトアニア連合国」はなんと鬼より怖いドイツに勝ってしまった。凄いなあ。



リトアニアはゲテミナス大公やビタゥタス大公時代に大国となりウクライナまで領地を拡大しました。で当時の国王ゲテミナスはなんと日本に軍事協力を要請したらしいですよ。



リトアニア人が真面目な顔をして「モンゴルと戦うために日本と協定を結びたい」

当時は日本は足利将軍あたり。さて協定結びたいと言われてもねぇ。



カウナスで杉原千畝が出ましたが「ドラマ杉原千畝」は反町隆史のかっこいい千畝でした。



反町は「リトアニアは大好きな国」と言ってくれました。
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