旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

第1回タイ&ラオス路線バスの旅-Day0 振り出しに戻る

2015年10月06日 | 旅の風景
 一番最初の気持ちに戻ったことになります。
 いつの事かというと、それは旅行会社で働くことに決めた時。。面接に合格した新入社員一同が当時、その会社が経営していたカフェでのパーティに招かれていたのです。その頃の合格基準はおそらく”旅行経験優先”であって、私のようにバックパッカーとしてやバイクで旅していた人間や、某大学の探検部に所属していた人間などが何人もその中に含まれていました。ただし、そういう人間で”就職しよう”と考える人間が少ないため、新入社員の多数派ではありませんでしたが....。

 世間知らずで学生気分も抜けきらない我々が口々に語り合った新しいスタイルの旅行商品、それが地を這うように旅をする小グループでの旅でした。足の向くまま気の向くまま、個人旅行で自由に旅するにはそれなりの技術が必要です。だから、その入り口となるような体験型のツアーがあったら面白いという思い。宿泊は安宿。屋台で食事をして、地元の人たちと同じ乗り物に乗って移動する、素朴な形の旅の商品化というわけです。

 我々は新入社員とはいえ、個人としては”地を這うように”旅してきたわけですから、それを商品化するなど簡単な事に思えたのがまだまだ青二才だったころの自分たち。結局、ご多分に漏れず、その業界での経験を積めば積むほど、成長すればするほど、自分たちの考えた商品の実現の難しさを思い知って、訳知り顔の大人に成長し、いつしか新入社員の頃の思いは心にしまわれて行ったり、もはや忘れられて行きました。

 私は最初から手配旅行の部門で働き始めたおかげで、手配をさせていただいた多くのお客様はそれぞれとても個性的な旅を計画して飛び出していきました。中には今でもお付き合いのある方々も多いですし、帰国して面白い話を聞かせていただく事も多かったのです。

 ところが20年ほどの月日が流れてある日ふと思った事。それは”最近の手配はつまらない”。

 アメリカの片田舎の町への航空券や、復路オープンのアジアへの航空券、あるいは2か月有効のユーレイルパスと復路オープンの航空券を握りしめてヨーロッパへ旅立つ若者、デリーIn-イスタンブールOutのように、国をまたぐ前提の航空券で数か国を放浪する目的の旅人などはすっかり姿を潜めて、決まり切った単純往復で短期間の航空券の”最安”を血眼になって探す姿や、どれだけ”安く””お得”に旅したかで”旅の達人”を語る姿が目につくようになったと感じたのです。

 "今こそ再び、新入社員の頃に考えた旅を作るべき時が来たのかもしれない。"

 現地へ飛んで、その場で宿を探し、地を這うように移動する旅。それを考えたとき、やはり同行する際の困難やリスクの大きさには腰が引けるきもしました。

 そこで、若干軌道修正した商品が”スーパーカブで旅するタイ北部”。本来は毎日の移動手配を回避するためにカブを使うという逃げ道として考えたツアーでしたが、元々バイク関係の手配を多く行っていたためか、バイクツアーの延長として捉えられた方々も多かったようです。

 スーパーカブで旅するタイ北部をWebサイトに掲載したときに真っ先に電話をくれたのはあの頃の”新入社員”のうちの数人でした。彼らは”いや、やっぱりココまで思い切った事はできないなぁ、ちょっとズルいなぁ”と言いながらもきっと新人の頃の思いを今でも持ち続けているからこそ今は同僚ではなくなった私に連絡をくれたのでしょう。

 幸い、大儲けすることはないものの、”スーパーカブで旅するタイ北部”は少しずつでも継続する事が出来ました。安宿に宿泊する事に”安かろう悪かろう”という印象しか抱けなかった方も多数おられる一方で、そのスタイルの面白さに気づいていただいた方もそれなりにおられたと思います。私も5年ほど皆さんに同行する中で多くの経験を積むことができました。

 今回の”タイ&ラオス路線バスの旅”は本当の意味で自分が20台前半に考えた企画の実現です。一番最初の気持ちに戻った事になります。

 この企画は私にとっても不確実な要素をあまりに多く含む事から、第一回は”スーパーカブで旅するタイ北部”の経験者だけに限定する事も考えました。しかし、そうすると”集客できないかも”という商売的な心配事が頭をもたげます。結局、特に限定条件を付けることをしませんでしたが、ふたを開けてみたら”スーパーカブで旅するタイ北部”の経験者ばかりが参加意思を表明してくださって、結果オーライ。

 シルバーウィークで航空券の確保が難しいことから1日日程を後倒しさせていただいた事から始まって、最初から波乱含みの旅の始まりです。

----続く---


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