旅のウンチク

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国境の町=スーパーカブで旅するタイ北部より

2018年06月12日 | 旅の風景
 スーパーカブで旅するタイ北部ではタイとラオスの国境の町であるチェンコンとタイとミャンマーの国境の町、メーサイの2か所の”国境の町”に滞在します。
 
 私たちの住む日本は島国なので川を渡ったら別の国というような状況は普段接する機会がありません。私たちにとっては川の向こうに見えるのは別の国というのはとても不思議な感覚です。海外旅行に徒歩で出かけられる場所がそこにはあるわけです。日帰りミャンマー旅行や日帰りラオス旅行が普通に可能です。

 チェンコンから盛んに人が往来するようになったのは最近で、以前は地元の人達だけが行き来を許されていた町。しかも大抵の場合、入手困難な物資を求めるラオスからの人達が小舟でメコン川を渡ってくるだけだったので、”いかにも国境の町”という雰囲気はそれほど感じることがありません。一方、メーサイについてはいかにも国境の町という雰囲気を楽しませてくれます。これはタイ&ラオス路線バスの旅で訪れるノーンカーイの町と似た雰囲気だと思います。

 実際には陸路で隣の国と接している国の方が一般的なので、海外を旅しているとこういった国境の町を訪れる機会は頻繁にあります。ヨーロッパをバイクや車や鉄道で旅する場合などは1日に複数の国境を超える事だって普通にあります。

 そして場合によっては国境のダークな一面を垣間見る場合もあります。

 例えば私がパキスタンからイランへ入国しようとしていた時にはたまたま知り合った人物は実はハッシッシの密輸商人。これから国境を越えようとする私に彼らなりの”親切心?”からハッシッシをプレゼントしてくれようとしたものです。もちろん、これから国境を越える私は固く断ったわけですが、案の定、イラン側の国境でとても厳しい荷物検査があったので、”ちょっとした出来心”とか”変な好奇心”を起こさなくてよかったと思ったものです。

 国境にはイミグレーションや税関がありますし、国境警備隊や軍隊が駐留していたり、警察官が大勢いたりする場合も多いのですが、こういう武装した人たちが日本と同じように自分たちを守ってくれると思ったら大間違いなケースも広い世界には多々あります。平和な日本とは違って、ちゃんと給与が支給されていない軍隊が武器を使って盗賊になっている国だってありますし、汚職警官がちょっとした事で警察署へ連行して賄賂を要求する国もあります。
 
 メーサイは昔はゴールデントライアングルから繋がる有名な麻薬地帯の一角をなしていて、確かタイ軍と麻薬組織が国境の川を挟んで激しく銃砲撃を交わしたこともある場所です。今はタイの山岳地帯での麻薬生産はプミポン前国王の政策が功を奏してほとんどなくなったようですが、それでもタイの他の町と比べると治安があまりよくない事は地元の人達の言葉の端々から伝わってきます。
 
 他の町では見かけない”ドラッグの売人”(といっても今はバイアグラとかですが)もいますし、怪しげな宝石を売りに来る客引きもいます。

 バイクを離れようとすると”ちゃんとカギをかけたか”と声をかけられることがあるのもこの町の特徴。現地の人達のこういう何気ない言葉にアンテナを張っていれば自分が今いる地域の危険度はある程度予測がつくものです。だからメーサイでは普段より気を引き締めて行動することになります。

 今年のスーパーカブで旅するタイ北部ではメーサイの中心部から少し離れた宿しか確保できなかったおかげで町へ出るのにバイクを使う事になりました。とりあえず国境の橋を見るために橋の下の空いたスペースにバイクを暫定的に置いておいたのですが、少し待ちを歩いてバイクを本格的に移動させようと戻ったところバイクのフロントバスケットにゴミが投げ込まれていたのです。ちょっとしたいたずらですが、他の町ではなかった出来事。やはり国境の町は独特です。

 密輸グループ、闇両替商、密入国者などなど、いろいろな人たちが往来し、国境を越えた向こう側から来た物資が売り買いされるための巨大な市場が形成されている猥雑な雰囲気は少しダークな感じも含めて国境の町の魅力と言えなくもありません。


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