旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

勝手な誤解を誘発させる情報

2008年02月23日 | その他
まずは説明抜きに下記の文章を読んでみてください。

"タバコに含まれるニコチンにはヘロインと同等の依存性があります。”




この文章を読んで、内容が理解できましたか?

ちなみに私は今回ここで喫煙の是非や嫌煙権について論じるつもりはありませんし、健康についても論じるつもりはありません。上にあげた文は、あくまで情報というものについて考える一つの面白い例として取り上げてみました。

多くの人が理解できたと思い込むとは思います。

でもちょっと待って。ヘロインの依存性って、どの位なのか皆さん体験したり見たりした事があるのでしょうか?

よく考えてみたら、ニコチンの依存性を感じさせる人は身の回りに見つけやすいでしょう?禁煙に何度も失敗している人は身の回りに見つけることが出来る可能性がありますが、ヘロインの依存症から抜け出せずに苦しんでいる人を身の回りで見つけるのはなかなか難しいですね。

むしろ、”ヘロインにはニコチンと同等の依存性があります。”というのであれば、情報として成立するとは思います。

では、ここで、一番最初に”理解できた”と思った人は、どういう風に理解していたのかを考えてみましょう。

 多分、テレビのドラマや映画なんかで漠然と目にした、目の下にクマをつくって震えながら麻薬を渇望する登場人物の姿をイメージしていたに過ぎないのではないでしょうか。そして、その時の状況設定がコカイン中毒なのか、ヘロイン中毒なのか、アヘン中毒なのかという事も考えてみてはいないと思います。また、多くの映画やドラマにおいて、ヘロイン中毒なのか、コカイン中毒なのか、アヘン中毒なのかを細かく区別して表現されていることも多分、少ないのではないかと思います。

ドラマや映画の内容を現実と同一視する人はいませんよね?でもその場面の中でいくつかのイメージは我々の記憶にインプットされてきます。そのイメージ自体に直接触れているときは”映画(ドラマ)の中の作り事”と思っているのですが、そのインプットされた情報が少し離れたところで必要とされると、いきなり現実味を持って迫ってくる事があるわけです。

”ニコチンにはヘロインと同等の依存性があります。”

この表現はまさにそこを突いた表現です。”ニコチンには依存性があります。”であればスルーしてしまいそうな事柄に”ヘロインと同等”とくっつけると、多くの人の頭はおそらく最初、”ヘロイン”というものに関する情報を探しまわるのでしょうが、一般的な日本人にとってヘロインに関する情報はごくわずかでしょうから、結局、映画やドラマの場面が情報として引き出されてきて、関連してしまいます。そうすると、青白い顔、目の下にクマをつくって、体を震わせながら意味不明な事を口走る姿が目に浮かびます。

つまり、映画やドラマからインプットされた情報が”先入観”として働いてしまっているわけです。そして、冷静な言葉のように見えるこの情報は感情に上手く入り込もうとしているという事です。

わざわざ、こういう比較対照物を追加してある情報の意図するところは、多分、タバコの怖さを感情に訴えてイメージさせようというところにあるのでしょうが、逆に喫煙者は・・・・

”恐ろしくて、金輪際禁煙なんてしようと思いましぇ~ん”

となるのではないかと思います。でも、これも少し待って。依存性があると述べられているだけで、ヘロインと同じ離脱症状がありますとは述べられていませんから、こちらも勝手な誤解ですね。

いずれにしても情報発信者の意図通り上手く機能しているのかどうか怪しいところです。

 少し話しがそれましたので軌道を戻します。

 私が言いたいのは、情報というのはこういう面が多々あるという事。

多くの人々の頭の中にある、いい加減で根拠のないイメージというものを上手く引き出して人々をコントロールするような手段というのが最近非常に発達してきたのではないかと思う事があります。

 情報と接するときは、自分が漠然と頭の中に抱くイメージがどれほど正確な情報にもとづいたものかを一度、冷静に考えてみないと感情に引きずられて正常でない情報が頭に根付いてしまいます。これを打破するためには、余計なイメージを抱かないようために余計な情報には触れないように常に注意するか、あるいはできるだけ多くの体験を積むことでしょう。体験のない知識などというものは”参考”程度だとしっかり認識するうべきです。


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