旅の恥のかき捨て方

　”旅の恥はかき捨て”と昔から言います。実際に言葉や習慣の違う国を旅していると、例えば食事のマナーなど簡単なことでも習慣の違いを知らずに失礼な事をしてしまったり、恥ずかしい思いをしたりすることは多々あります。これをかき捨てられなかったら旅している間中ストレスだらけの時間を過ごすことになってしまいます。

　実際、私もたくさんの恥をかき捨ててきました。旅先の事なので、”今思い出しても赤面する”ような事はなく、純粋に面白話として話せる内容の失敗談です。恥を恐れて予備知識で頭でっかちになるより、少々失敗して恥をかいてみる位の体験があった方がその国に対する実感も深まる物だと思います。

　ただし、旅の恥のかき捨て方というのがあると最近思うようになりました。ただ単に旅先だから恥はかき放題、放置し放題とは言えないと思うのです。

　たとえば、旅の恥をかき捨てることができるという事は大前提として本人が”失敗した”と気がついている必要があるのであって、傍若無人に振舞っている人は多分、恥自体に気がつかないのでかき捨てる事すらできません。旅の恥をかき捨てることができる人は、周囲の反応によく注意を払っていて、自分が失敗したことを感じ取り、それを認め、正しい方法を見つけることができるだけの繊細さを持っている人に限られると言えます。

　旅の恥をかき捨てるための手順は
★まず自分の間違いに気づく
★”もしかして間違ってる？”と周囲にアピールすると同時に自分の間違いによって不快になった人がいいた場合には謝る
★正しい方法を教わる

　間違いに気づかない場合は仕方がないとして、気づいた場合、”まあ旅の恥はかき捨てだからいいや”と放置では、正しい方法を理解することによって得られる文化の違いの体験も得られないですし、場合によっては周囲で不快になっている人もいるかもしれません。その不快感をも放置することになってしまいます。間違いを自ら認めた時点でやっと”外国の人間だから仕方ない”となるでしょうし、正しい方法を教わる事はその国の習慣を尊重しようとしている姿勢を表明する事にもなります。

　こういう段階を経て恥をかき捨てるように心がければ自分が訪れた国の習慣への体験的な理解がより深まると思うのであります。