旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

人間は筒である

2013年10月10日 | 旅行一般
 中学生の時の話なので大昔の事になりますが、ある日、保健体育の授業で先生が、黒板に人体の上半身の断面を略図で書いて、”見方によっては体の外側だけでなく内側でも外と接しているとも考えられる。たとえば筒みたいなものです”といった趣旨の説明を行いました。黒板にチョークで書かれた略図とその説明が上手くまっちしていて、この表現がとても納得でき印象に残ったのでした。

 こうして印象に残ってしまったイメージは時々私の頭の中でよみがえります。たとえば腹痛を感じる時などは自分という筒の内側を意識する事もありますし、何かを食べている人を見ると筒だと感じる事もあります。デートで一緒に食事している相手の事が筒に思えて....という事は無いのでご安心を。見とれているから筒を思い出だす余裕もありません。

 とはいえ、時々、人間から筒をイメージする事は変わりありません。まったく中学の先生も罪な説明をしたものです。

 知識や情報はこうやって、時として余計なイメージとして自分の感覚に影響を与えます。このことは旅行の情報収集を行う際にも注意が必要です。

 たとえば、私の所へ来る質問に時々、”アメリカはとても危ないってインターネットで見たんですが”というような質問がありますが、これは日本よりは危ないという意味で言えば正しい情報ですが、アメリカに行く人が全員犯罪被害者になるという意味では先入観にすぎません。
 
 治安が悪いという情報にも”程度”の問題があって、ここをちゃんと見極めないと役に立つ情報とはならず、ただ単に先入観を抱いておびえているだけになってしまいます。人を見たら全員”筒”に見える状態になっているのと同じことです。

 そして、この質問を発する人の多くが後者にかなり近いイメージが身についてしまったから質問してくるのであろう事は想像できます。実際には年に何十人ものライダーがアメリカをレンタルバイクで走っていますが転倒したり、故障したりという話はあっても、犯罪の被害にあったという報告は今のところありません。

 おそらく実際にツーリングする人達はそれぞれに注意を払っておられるから犯罪に巻き込まれずに済んでいるという点が大きいとは思いますが、そう考えるとアメリカの治安の悪さはかなりの部分、各自が注意を払う事で回避できる程度といえます。

 熱心に情報を調べて、先入観をたくさん手に入れて怯える材料を沢山手にして、人間が”筒である”という事に確信を抱いてもあまり得なことはありません。むしろ、人間が”筒”でなく見える情報も手にしてバランスを取るよう心がけるべきかと思います。


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