旅のウンチク

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旅先での情報源

2019年01月09日 | 旅のノウハウ
 旅先での情報収集についてはインターネットの普及によっていつの間にかあまり重要視されなくなってきているようですが、インターネット上の情報が数か月前あるいは数年前の情報である事がほとんどである点を考えると、まだまだ現地での情報収集をおろそかにすべきではないと思います。

 コミュニケーションを面倒がらなければ現地での情報収集はインターネットで何時間もかけて集めたと同じ情報をあっという間に手に入れる事ができる場合が多いですし、なんといってもその時点での生の情報が手に入ります。更に、情報収集のためにいろいろな人とコミュニケーションをとる事それ自体が旅を彩ってくれる大切な体験だと思うのです。

 それでは、現地に着いたら闇雲に地元の人に質問して回ればすぐに情報が集まるかというとそういう風には事は運びません。ちょっとしたコツが必要です。
 
 例えば私は滋賀県で生まれ育って、学生時代の一時を京都で過ごし、就職して東京で働き始めてからもはや30年近くが過ぎましたが、滋賀、京都、東京のいずれについても”おすすめの宿”とか”おすすめのレストラン”として外国人旅行者に推薦できるところを1件も思いつくことができません。

 そのいずれも自分にとっては”居住地”なので、ホテルや宿に泊まる機会は他の町に住む人よりむしろ少ないのです。その点では、旅行者が知りたい情報として東京の事を最も知らないのは東京で生まれ育った人と言う事になります。

 つまり、そのあたりを歩いている人を捕まえて”宿はどこ?”と尋ねても、情報が手に入る可能性はとても低いのです。

 レストランについてはこれに当てはまらないように思えますが、実は同じく地元の人間はあまり適切な情報源にはなりづらいのです。私たちが外食する際というのはそこにどこか非日常を求めているから外食するわけで、外国人旅行者が求める日本の日常(それ自体が彼らにとっては非日常)である事を考えると少しずれてしまう可能性が高いのです。
 
 例えば、フランス人観光客に”話題”の高級フランス料理レストランを勧めてしまうような事になりかねません。これは自分たちが外国にいるときも同じで、地元の人の間でおすすめのレストランが必ずしも旅行者にとっておススメとはならないのです。

 観光地なども同じで、地元の人が”おすすめ”してくれるところは、彼らの地元に対する愛着から来る場所が多く、そこには歴史や文化が絡んできます。その地の歴史や文化を肌で知っているわけでない外国人旅行者にとっては正直あまり興味を感じない場合も多々あるのです。

 つまり、求める情報に早くたどり着くためには尋ねる相手を選んで、そういう人と会いに行く必要があるわけです。情報源を選択する必要があります。

 考えられる情報源は
1.旅行者から頻繁に情報提供を求められる人
2.旅行者

 1は一番手っ取り早い情報源。各町のツーリストインフォメーションなど公的機関もあれば、タクシーのドライバー、安宿の従業員、ホテルのコンシェルジュなど、探せばだれか思いつくと思います。ただし、地元の人の場合は利害が絡んでいる場合もあるので、そのあたりは慎重に情報を吟味する必要があります。紹介料がより高い所へ無理やり連れていかれたりする事もありますし、"NO"と言える距離感を保つ工夫も必要ですね。ただし、

 2の旅行者同士の情報交換は私が若かったころは一般的な情報源で、ドミトリーで知り合った他の旅行者と情報を交換したり、同じ宿の人達と一緒に食事に行って情報交換したりしていました。だから昔風の安宿には”ラウンジ”みたいなスペースがあって、そこには各国語のガイドブックや書籍があったり(旅行者が置いて行ったもの)、お茶でも飲めるスペースがあったりしたものです。今も私はそういうスペースがある安宿を好んで選びますが、昔のようにそこにたむろしている旅行者とは会えることが少なくなったのが寂しいところです。

 少し話がずれましたが、2の情報源からは案外役に立つ情報がたくさん手に入るものです。同じ立場の人間同士なので、同じ必要、同じ興味の中で情報を持っているからです。それに大抵の場合、利害関係のない情報を提供してくれます。

 いずれの場合も、情報を手に入れるという目的だけではなくて、いろいろな人たちとコミュニケーションをとるための口実と考えて楽しんでみる気持ちを持つのも良いかと思います。インターネットでリサーチした情報を”確認に行く”だけの旅行を当たり前と考えるのはそろそろ卒業して、いろいろな人たちと接点を持つ旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。


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