ドバイ駐在員ノート

一人の中年会社員が、アラブ首長国連邦ドバイで駐在事務所を立ち上げて行く過程で体験し、考えたことの記録。(写真はイメージ)

「しょうがない」は「inevitable」か?

2007年07月04日 00時06分33秒 | 時事
久間防衛相が辞任 原爆発言で引責、首相了承(産経新聞) - goo ニュース

原爆投下を「しょうがない」と発言したことの責任をとって、久間防衛相がとうとう辞任した。女性を「生む機械」と呼んだ柳沢厚労相が留任しているのに、久間氏が辞任を余儀なくされたのは、ひとえに参議院選挙直前のこの時期に問題が起きたからというに尽きる。

この件について書かれたブログを読むと、圧倒的多数が久間氏発言を非難しており、同情的なものは皆無に近い。ただ、「しょうがない」という一語だけをとりあげて非常識、怪しからん、とするものが多いようで、「しょうがない」が独り歩きしている感が否めない。報道されている久間発言の要旨を読むと、私なりに翻訳すれば、「しょうがない」発言は次のような文脈で出てきたもののようだ:

1)原爆が長崎と広島に投下されなければ、当時の日本はいつまでも敗北を認めず太平洋戦争を続けていただろう。
2)太平洋戦争がそのまま続いていれば、ソ連が参戦していたことは確実で、これを怖れた米国が戦争の早期終結のため原爆投下を決断した。
3)ソ連が参戦していれば、戦後ドイツのように日本列島は分割統治されることになり、長期間混乱が続いただろう。
4)(北方領土の問題はあるにせよ)戦後日本が一つの国として存続し、その後の経済成長を達成できたのも、原爆投下によって戦争が早期に終結できたことによるところが大きい。
5)原爆投下は許しがたいけれども、今日の日本の繁栄のもととなった早期戦争終結を導いたものとして、納得するしかない。

私にはそれなりに筋が通っているように思えるのだが、どうだろうか。

久間氏は、講演後の取材に対し、原爆は容認できないと明確に述べている。また、長崎県の選挙区から選出されているし、他の政治家に比べて、被爆地の長崎市民の感情が理解できないはずはない。

野党が国会での閣僚の答弁の揚げ足取りをするのは、いつものことで、見苦しいが「しようがない」。ただ、麗澤大学(って千葉にあることを今回初めて知った)というさほど有名とは思えない大学での講演の中での「しょうがない」という一語だけ取り上げて、さも原爆投下を容認したかのように報じたメディアこそ、見識を欠いていないだろうか。

7月3日付のガルフ・ニュース(26面)では、久間発言を「the US atomic bombings of Japan were the inevitable way of ending World War II」(米国による原爆投下は第二次世界大戦を終わらせるために避けられない方法だった)と紹介している。誤訳だと思う。

私なら、次のように訳しただろう:
「The only way to view the US atomic bombings positively would be that without them Japan had never yielded and as a result ended up being occupied by the Soviet Union」(米国による原爆投下を唯一積極的に評価できる方法があるとしたら、それがなければ日本はいつまでも敗北を認めずソ連による占領を許していただろうということだ」

選挙前のこの時期、火中の栗を拾いたくないのだろう。与党からも誰も助け舟を出そうとしないのを見て、つい判官びいきがしたくなった。政治家とは大変な職業だ。放言癖がある私にはとてもつとまらない。

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