2023年8月 京都童心の会 通信句会結果
【選評】後半
○蔭山辰子特選
26 丸焼の東京に居て敗戦日 中野硯池
26,27、28,29番。祈らずには居れない八月です。78年前のあの日を知っている人もだんだん少なくなるようです。コロナ、猛暑、熱中症、この夏を生き越せるのも大変なことです。
85 襟のタイ欠伸を殺す月曜日 青島巡紅
みどりの日、海の日、山の日、連休明けのお勤めご苦労様です。句会の皆様もどうぞお元気で。
○野原加代子特選
80 午前四時燕飛び交う河川敷 青島巡紅
午前四時に朝散歩されているのでしょうか、それとも目に浮かぶ光景でしょうか。朝が早いもののすがすがしい気分になれる句だと感じました。歳をとると目が覚めるのが早いのでこの夏の間にでも緑を見ながら歩くのも良いですね。
○暉峻康瑞特選
74 原爆忌勝者敗者の傷深し 三村須美子
小生の母は広島出身で十九才で鹿児島県のお寺へ嫁にきて五人の子供にめぐまれた。その母の母(小生の祖母)は広島の原爆でふっとんで、お骨もお寺もすべて消えてしまった。
戦争は深い闇です地獄ですと子や孫と語る敗戦記念日
現今もロシアのプーチンがウクライナをー原爆をちらつかせて世界中が困っている。人間ほどやっかいな者はいない。
天下和順・日月清明。武力では平和は来ないと、釈尊が三千年前に経典に説かれている。
○三村須美子特選
58 もう梅雨明けだよと伝えたいのか蝉の声 岡畠真理子
梅雨明けを知らせるかのように祇園祭前後、待ってましたと蝉が一斉に鳴きだす。精一杯、力を振り絞って賑やかに鳴き通す。そして十日程度で果て地に落ちる。何と潔く、儚くもあります。作者の何気ない優しさが伝わってきます。
○野谷真治特選
76 星の声一眼レフで聴いている 野谷真治
一眼レフのカメラで聴く、星の声が知りたい。優しい声だといいなあと、思う。
○岡畠真理子特選
46 無事に生き電気にたよるこの暑さ 蔭山辰子
年々暑さが厳しくなり、それに伴ってエアコン稼働時間もアップ。電気代は気になりますが、身体のことを考えるとやむを得ずという感じですね。当家でも昨年までは就眠時にタイマー設定し、午前中は極力扇風機でしのいでいましたが、今年はつけっ放し状態です。
7月選評の追加です。
○岡畠真理子特選
60 石蕗の葉に飛び忍者めく青蛙 中野硯池
青蛙(雨蛙)、最近は見かけることがなくなりました。小柄なこともあり何となくかわいくて飛び跳ねる姿も見ていてあきなかったことを思い出しました。
選
1 地に光る顎あじさいの星の形 金澤ひろあき
3 こわいもの知らず片道切符自由席 同
7 同じ駅なのに同じ景色がない 同
15 あまつぶつやつやつるんとつぼみ 野谷真治
20 傘畳む立ち飲み屋の灯手招きす 青島巡紅
21 雨上がり駆け出す子供虹かかる 同
26 朝焼けの雲の波頭に胸躍る 同
33 ほととぎすさえずり聞きて耳澄まし 野原加代子
37 入道雲遠く空まで澄み渡り 同
38 神社にて茅の輪くぐりし祈りして 同
41 冷室を出膝を温める庭仕事 三村須美子
42 曇天のまとわる汗や首タオル 同
52 醒井や瀬音と霧と梅花藻と 同
55 ミサイルの飛ぶ津軽海峡梅雨景色 中野硯池
フリー句(自由連句)「喜べば」の巻
喜べば残暑を冷ます雨の降る 金澤ひろあき
有難や台風過ぎて大文字 青島巡紅
空澄んで四条大橋とんぼ来て ひろあき
子育ての終えた燕は笑んで待つ 巡紅
懐かしき実家の柱傷もまた ひろあき
極楽の箸をもっと使いませんか 巡紅
*1メートルもある箸を使って争い合っているので地獄では食べられないが、極楽では同じ長さの箸を使っていてもお互いに食べさせ合っているという法話。
豪雨下の動かぬ列車で待たされる ひろあき
靴の踵踏み潰すこと親に黙って 巡紅
テニス部の夏合宿で走り込む ひろあき
※生徒と同じシューズ・ウェアで走り込んでいました。若かった!
空と海トランペット吹く夢をみる 巡紅
プールサイド花火とジャズがシンクロし ひろあき
オーロラに遠聲発する狼の群れ 巡紅
北極圏犬ゾリ横断探検家 ひろあき
肝冷えるバスの運転手道落とす 巡紅
難所です地図にいくつもバツ印 ひろあき
出現地点は多いのに姿曖昧UMA 巡紅
幻の名酒名前を聞くばかり ひろあき
バス停や炭酸水飲む入道雲 巡紅
雷の音だけ夕立まだ来ない ひろあき
彼岸花来ぬ人おいて墓参り 巡紅
送り火の日に新幹線止められて ひろあき
学ランでチアやった娘がこっそりチア姿見せてくれた 巡紅
【エッセイ】
南山城のお寺へ
金澤ひろあき
今年は懐かしい人と会う年です。
8月末に京田辺に行き、河本美子さんと塩見すず子さんに会えました。私が三十代の頃、口語俳句を通して知り合った方です。
せっかくだからと、南山城の神童寺と蟹満寺へ連れて行って下さいました。
神童寺は、塩見さんお薦めの山寺。北の吉野と呼ばれるほどで、役行者や蔵王権現等がお祀りされています。彩色が鮮やかです。寺の奥様が宝物館もあけ、阿弥陀様等も拝観しました。
塩見さんが鐘も一つき。山の中の涼しさが格別。
山あいにつく鐘一つ法師蝉 ひろあき
法師蝉山寺の妻もの静か
山の奥すず風と共に俳句よむ 河本美子
井手町の仏像宝庫は夢の中
古仏めぐり風ゆれ息子の命ゆれる 塩見すず子
くるくる山道抜け一番大事な願い事
その後、蟹の恩返しで有名な蟹満寺へ。
こちらの奥様は「よく来て下さいまして有難うございます」というお心づかい。国宝の金銅の釈迦如来がお迎えして下さいます。黒光りして、しかも端正な座像です。お堂の回りに、沢山の風車があるのが印象に残ります。
御仏の口もとからかわいた風車の音 塩見すず子
蟹の身がわり黒トンボ8の字に舞う
寺の中風が追うなりかざぐるま 河本美子
幸せの案内役はすず子也
風車風に五色をつけている 金澤ひろあき
黒トンボ句稿を覗く句の仲間
※写真は神童寺と蟹満寺。
【選評】後半
○蔭山辰子特選
26 丸焼の東京に居て敗戦日 中野硯池
26,27、28,29番。祈らずには居れない八月です。78年前のあの日を知っている人もだんだん少なくなるようです。コロナ、猛暑、熱中症、この夏を生き越せるのも大変なことです。
85 襟のタイ欠伸を殺す月曜日 青島巡紅
みどりの日、海の日、山の日、連休明けのお勤めご苦労様です。句会の皆様もどうぞお元気で。
○野原加代子特選
80 午前四時燕飛び交う河川敷 青島巡紅
午前四時に朝散歩されているのでしょうか、それとも目に浮かぶ光景でしょうか。朝が早いもののすがすがしい気分になれる句だと感じました。歳をとると目が覚めるのが早いのでこの夏の間にでも緑を見ながら歩くのも良いですね。
○暉峻康瑞特選
74 原爆忌勝者敗者の傷深し 三村須美子
小生の母は広島出身で十九才で鹿児島県のお寺へ嫁にきて五人の子供にめぐまれた。その母の母(小生の祖母)は広島の原爆でふっとんで、お骨もお寺もすべて消えてしまった。
戦争は深い闇です地獄ですと子や孫と語る敗戦記念日
現今もロシアのプーチンがウクライナをー原爆をちらつかせて世界中が困っている。人間ほどやっかいな者はいない。
天下和順・日月清明。武力では平和は来ないと、釈尊が三千年前に経典に説かれている。
○三村須美子特選
58 もう梅雨明けだよと伝えたいのか蝉の声 岡畠真理子
梅雨明けを知らせるかのように祇園祭前後、待ってましたと蝉が一斉に鳴きだす。精一杯、力を振り絞って賑やかに鳴き通す。そして十日程度で果て地に落ちる。何と潔く、儚くもあります。作者の何気ない優しさが伝わってきます。
○野谷真治特選
76 星の声一眼レフで聴いている 野谷真治
一眼レフのカメラで聴く、星の声が知りたい。優しい声だといいなあと、思う。
○岡畠真理子特選
46 無事に生き電気にたよるこの暑さ 蔭山辰子
年々暑さが厳しくなり、それに伴ってエアコン稼働時間もアップ。電気代は気になりますが、身体のことを考えるとやむを得ずという感じですね。当家でも昨年までは就眠時にタイマー設定し、午前中は極力扇風機でしのいでいましたが、今年はつけっ放し状態です。
7月選評の追加です。
○岡畠真理子特選
60 石蕗の葉に飛び忍者めく青蛙 中野硯池
青蛙(雨蛙)、最近は見かけることがなくなりました。小柄なこともあり何となくかわいくて飛び跳ねる姿も見ていてあきなかったことを思い出しました。
選
1 地に光る顎あじさいの星の形 金澤ひろあき
3 こわいもの知らず片道切符自由席 同
7 同じ駅なのに同じ景色がない 同
15 あまつぶつやつやつるんとつぼみ 野谷真治
20 傘畳む立ち飲み屋の灯手招きす 青島巡紅
21 雨上がり駆け出す子供虹かかる 同
26 朝焼けの雲の波頭に胸躍る 同
33 ほととぎすさえずり聞きて耳澄まし 野原加代子
37 入道雲遠く空まで澄み渡り 同
38 神社にて茅の輪くぐりし祈りして 同
41 冷室を出膝を温める庭仕事 三村須美子
42 曇天のまとわる汗や首タオル 同
52 醒井や瀬音と霧と梅花藻と 同
55 ミサイルの飛ぶ津軽海峡梅雨景色 中野硯池
フリー句(自由連句)「喜べば」の巻
喜べば残暑を冷ます雨の降る 金澤ひろあき
有難や台風過ぎて大文字 青島巡紅
空澄んで四条大橋とんぼ来て ひろあき
子育ての終えた燕は笑んで待つ 巡紅
懐かしき実家の柱傷もまた ひろあき
極楽の箸をもっと使いませんか 巡紅
*1メートルもある箸を使って争い合っているので地獄では食べられないが、極楽では同じ長さの箸を使っていてもお互いに食べさせ合っているという法話。
豪雨下の動かぬ列車で待たされる ひろあき
靴の踵踏み潰すこと親に黙って 巡紅
テニス部の夏合宿で走り込む ひろあき
※生徒と同じシューズ・ウェアで走り込んでいました。若かった!
空と海トランペット吹く夢をみる 巡紅
プールサイド花火とジャズがシンクロし ひろあき
オーロラに遠聲発する狼の群れ 巡紅
北極圏犬ゾリ横断探検家 ひろあき
肝冷えるバスの運転手道落とす 巡紅
難所です地図にいくつもバツ印 ひろあき
出現地点は多いのに姿曖昧UMA 巡紅
幻の名酒名前を聞くばかり ひろあき
バス停や炭酸水飲む入道雲 巡紅
雷の音だけ夕立まだ来ない ひろあき
彼岸花来ぬ人おいて墓参り 巡紅
送り火の日に新幹線止められて ひろあき
学ランでチアやった娘がこっそりチア姿見せてくれた 巡紅
【エッセイ】
南山城のお寺へ
金澤ひろあき
今年は懐かしい人と会う年です。
8月末に京田辺に行き、河本美子さんと塩見すず子さんに会えました。私が三十代の頃、口語俳句を通して知り合った方です。
せっかくだからと、南山城の神童寺と蟹満寺へ連れて行って下さいました。
神童寺は、塩見さんお薦めの山寺。北の吉野と呼ばれるほどで、役行者や蔵王権現等がお祀りされています。彩色が鮮やかです。寺の奥様が宝物館もあけ、阿弥陀様等も拝観しました。
塩見さんが鐘も一つき。山の中の涼しさが格別。
山あいにつく鐘一つ法師蝉 ひろあき
法師蝉山寺の妻もの静か
山の奥すず風と共に俳句よむ 河本美子
井手町の仏像宝庫は夢の中
古仏めぐり風ゆれ息子の命ゆれる 塩見すず子
くるくる山道抜け一番大事な願い事
その後、蟹の恩返しで有名な蟹満寺へ。
こちらの奥様は「よく来て下さいまして有難うございます」というお心づかい。国宝の金銅の釈迦如来がお迎えして下さいます。黒光りして、しかも端正な座像です。お堂の回りに、沢山の風車があるのが印象に残ります。
御仏の口もとからかわいた風車の音 塩見すず子
蟹の身がわり黒トンボ8の字に舞う
寺の中風が追うなりかざぐるま 河本美子
幸せの案内役はすず子也
風車風に五色をつけている 金澤ひろあき
黒トンボ句稿を覗く句の仲間
※写真は神童寺と蟹満寺。
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