2024年1月 京都童心の会 通信句会結果
【選評】後半
○青島巡紅選
特選
64 七日がゆまだ残っているおせちかな 三村須美子
正月7日目ならよくある光景ですが、別に作り過ぎてもいないのに、こうなるのが現在、いわゆる飽食の時代。残さないように早く片付けようと思っても、あれやこれやの誘惑があって気がそちらに方に行ってしまう。では、もっと少なめに作ったらいいのにと言っても、それでは逆にまだ食べたいと思っても残っていない。なんでもありであやふやなことになるのが半ば当たり前、下手すると仕方ないと許される時代。そんな世界を象徴している。
並選
4 首筋痛シャーペンの音 野谷真治
首筋が痛くなる時って筋が鳴る音がしますよね。「シャーペンの音」が芯を出す時に音か折れる時の音のどちらかは想像にお任せのようなので、後者として読むとどちらも不意に生じますね。ライブ写真(iPhone の機能で撮影する前後の動きや音も一緒に保存)です。
10 冬の虹雨上がりに光しや 野原加代子
「冬の虹」はあまり鮮明でないことが多いのですが、それでも、曇天の空にかかるそれには透明感があって、眩しくはないけれど、妖精の悪戯のようにそっと「光しや」なのです。
16 おっはようー交わすあいさつルーティーン元気よびこむファンファーレ 遠藤修司
朝の「ルーティーン」が「ファンファーレ」となり一日頑張っていこうぜという気持ちを起こさせると言うのが良いですね。元気が貰える句です。
24 まだ死なないつもり元日の歯を磨く 金澤ひろあき
生きてやるぞと言う意思がユーモラスにスッと伝わってきます。重みのある句なのに肩の凝らないところが妙。
31 冬の月そっと抜け出す三次会 金澤ひろあき
「冬の月」の雲間に消えては見える動き(中句)と希薄な存在感(下句)が連動して見事です。
51 吸咽器そばに餅喰う爺と婆々 中野硯池
餅を食して喉に詰まらせる。そうなった時に備えて「吸引器」の前で食べている「爺と婆々」。介護役の人がそばにいることも言外に読み取れます。リアルでペーソス。ニコニコ美味しそうに食べている情景が浮かんできます。
55 辰年の龍暴れ居る輪島かな 中野硯池
輪島と聞けば、即、能登半島を想起出来ます。元日にあった地震の能登半島地震の象徴句となるとまでは言いませんが、辰年でいきなりでしたから「龍暴れ居る」が或る意味効いてます。人智を越え、突然起こる自然災害は正に龍の如き代物ですから。
57 幼子のいちご苗植え春を待つ 三村須美子
「幼児」「いちご苗」「春を待つ」。イメージの連結が見事です。未来への期待。それだけでなく言外にある幼児の行為を見守る親の視線が感じられます。スナップ写真ですね。
60 福笹やリュックに揺れる宝巻 三村須美子
10日恵比寿ならではの光景ですね。家族連れでしょうか。タクシー運転手の僕は、乗せる側からしか見ていないので、その中に入ってみたいと思っている
65 初通販スマホの中に迷い込む 三村須美子
「61 福袋迷子になってアナウンス」と、どちらを選ぼうかと思ったのですが、自分の生活習慣から65にしました。外に出る派、出ない派で意見は分かれると思います。臨場感では61に軍配は上がるでしょうが、個人的迷走感では65ですね。
56 柿の木や取るに取られず群雀 三村須美子
「取るに取られず」が生きてます。烏などと違って「群雀」でも回数(or日数)を重ねないと柿の実に大きさの変化は見られません。動画のような一句です。
70 おとし玉 あげる方から貰う側 蔭山辰子
世代交代を感じる複雑な心境を感じます。嬉しいような、ほっとしたような、それでいて寂しいような、まだ行けるのにというような相容れない気持ちが解け合って。大人の階段の更なる上の階段。
72 待ってるワだれか私にキックバック 蔭山辰子
世間を騒がすあちらこちらの金銭授受のお話、誰だって「私に」だって何かあってもいいじゃないと思ってしまいます。ないから思ってしまう。庶民的逆説が面白い。
73 大山鳴動 政策費とやらネズミ何匹 蔭山辰子
大ごとにのように取り上げられても、蓋を開ければこんなものかという感想が「ネズミ何匹」によく出ています。
77 自然には人間は何も出来ず 蔭山辰子
1月1日から31日までに国内では震度6以上で2回、5以上では17回。圧倒的な自然災害を経験した後は誰もがこう思わざるえません。そして亡くなった方々のご冥福と早期の復興をお祈りするばかりです。
○遠藤修司特選
9 水鳥や川の流れを見つめして 野原加代子
人って悩んだ時、自然の中に居て考え、他の人を思う時も川をじっと見たり、海をずっとながめたりするのかなあ?
不思議な感覚ですね。
○大岳次郎特選
19 アサイチ自転車ギーコギーコ生きてくメロディー 遠藤修司
おんぼろ自転車が私です。音たてて走る少しの苦痛、たくさんの苦痛。でも、楽しんで走っていきます。その心持ちが、何よりよいです。
【お知らせ】
2月句会
日時 2月18日(日)午後2時
場所 阪急長岡天神駅東口 喫茶 アーバンにて
投句 毎月第2週まで 10句前後ですが、少なくても可です。
84円切手3枚同封下さい。
選評 月末までに頂けるとありがたいです。
京都童心の会 年会費 3000円
月句会参加の方は句会で頂いておりますので、不要です。
第6回山頭火ふるさと館自由律俳句大会 入選
きっと和解がくる静かな海を描く 金澤ひろあき
【選評】後半
○青島巡紅選
特選
64 七日がゆまだ残っているおせちかな 三村須美子
正月7日目ならよくある光景ですが、別に作り過ぎてもいないのに、こうなるのが現在、いわゆる飽食の時代。残さないように早く片付けようと思っても、あれやこれやの誘惑があって気がそちらに方に行ってしまう。では、もっと少なめに作ったらいいのにと言っても、それでは逆にまだ食べたいと思っても残っていない。なんでもありであやふやなことになるのが半ば当たり前、下手すると仕方ないと許される時代。そんな世界を象徴している。
並選
4 首筋痛シャーペンの音 野谷真治
首筋が痛くなる時って筋が鳴る音がしますよね。「シャーペンの音」が芯を出す時に音か折れる時の音のどちらかは想像にお任せのようなので、後者として読むとどちらも不意に生じますね。ライブ写真(iPhone の機能で撮影する前後の動きや音も一緒に保存)です。
10 冬の虹雨上がりに光しや 野原加代子
「冬の虹」はあまり鮮明でないことが多いのですが、それでも、曇天の空にかかるそれには透明感があって、眩しくはないけれど、妖精の悪戯のようにそっと「光しや」なのです。
16 おっはようー交わすあいさつルーティーン元気よびこむファンファーレ 遠藤修司
朝の「ルーティーン」が「ファンファーレ」となり一日頑張っていこうぜという気持ちを起こさせると言うのが良いですね。元気が貰える句です。
24 まだ死なないつもり元日の歯を磨く 金澤ひろあき
生きてやるぞと言う意思がユーモラスにスッと伝わってきます。重みのある句なのに肩の凝らないところが妙。
31 冬の月そっと抜け出す三次会 金澤ひろあき
「冬の月」の雲間に消えては見える動き(中句)と希薄な存在感(下句)が連動して見事です。
51 吸咽器そばに餅喰う爺と婆々 中野硯池
餅を食して喉に詰まらせる。そうなった時に備えて「吸引器」の前で食べている「爺と婆々」。介護役の人がそばにいることも言外に読み取れます。リアルでペーソス。ニコニコ美味しそうに食べている情景が浮かんできます。
55 辰年の龍暴れ居る輪島かな 中野硯池
輪島と聞けば、即、能登半島を想起出来ます。元日にあった地震の能登半島地震の象徴句となるとまでは言いませんが、辰年でいきなりでしたから「龍暴れ居る」が或る意味効いてます。人智を越え、突然起こる自然災害は正に龍の如き代物ですから。
57 幼子のいちご苗植え春を待つ 三村須美子
「幼児」「いちご苗」「春を待つ」。イメージの連結が見事です。未来への期待。それだけでなく言外にある幼児の行為を見守る親の視線が感じられます。スナップ写真ですね。
60 福笹やリュックに揺れる宝巻 三村須美子
10日恵比寿ならではの光景ですね。家族連れでしょうか。タクシー運転手の僕は、乗せる側からしか見ていないので、その中に入ってみたいと思っている
65 初通販スマホの中に迷い込む 三村須美子
「61 福袋迷子になってアナウンス」と、どちらを選ぼうかと思ったのですが、自分の生活習慣から65にしました。外に出る派、出ない派で意見は分かれると思います。臨場感では61に軍配は上がるでしょうが、個人的迷走感では65ですね。
56 柿の木や取るに取られず群雀 三村須美子
「取るに取られず」が生きてます。烏などと違って「群雀」でも回数(or日数)を重ねないと柿の実に大きさの変化は見られません。動画のような一句です。
70 おとし玉 あげる方から貰う側 蔭山辰子
世代交代を感じる複雑な心境を感じます。嬉しいような、ほっとしたような、それでいて寂しいような、まだ行けるのにというような相容れない気持ちが解け合って。大人の階段の更なる上の階段。
72 待ってるワだれか私にキックバック 蔭山辰子
世間を騒がすあちらこちらの金銭授受のお話、誰だって「私に」だって何かあってもいいじゃないと思ってしまいます。ないから思ってしまう。庶民的逆説が面白い。
73 大山鳴動 政策費とやらネズミ何匹 蔭山辰子
大ごとにのように取り上げられても、蓋を開ければこんなものかという感想が「ネズミ何匹」によく出ています。
77 自然には人間は何も出来ず 蔭山辰子
1月1日から31日までに国内では震度6以上で2回、5以上では17回。圧倒的な自然災害を経験した後は誰もがこう思わざるえません。そして亡くなった方々のご冥福と早期の復興をお祈りするばかりです。
○遠藤修司特選
9 水鳥や川の流れを見つめして 野原加代子
人って悩んだ時、自然の中に居て考え、他の人を思う時も川をじっと見たり、海をずっとながめたりするのかなあ?
不思議な感覚ですね。
○大岳次郎特選
19 アサイチ自転車ギーコギーコ生きてくメロディー 遠藤修司
おんぼろ自転車が私です。音たてて走る少しの苦痛、たくさんの苦痛。でも、楽しんで走っていきます。その心持ちが、何よりよいです。
【お知らせ】
2月句会
日時 2月18日(日)午後2時
場所 阪急長岡天神駅東口 喫茶 アーバンにて
投句 毎月第2週まで 10句前後ですが、少なくても可です。
84円切手3枚同封下さい。
選評 月末までに頂けるとありがたいです。
京都童心の会 年会費 3000円
月句会参加の方は句会で頂いておりますので、不要です。
第6回山頭火ふるさと館自由律俳句大会 入選
きっと和解がくる静かな海を描く 金澤ひろあき