明日へのヒント by シキシマ博士

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「モローラ -灰-」 復讐の連鎖を断ち切れ!

2006年03月14日 01時29分49秒 | 明日のためのテレビ(ドラマ以外)
演劇を観るという習慣の無い私が、昨夜(3月12日22時から)のNHK教育『芸術劇場』で放送された南アフリカ演劇「モローラ -灰-」を見たのは、数日前に「おはよう日本」のなかで紹介されていたのを見て興味をそそられたからです。
とても見応えがあり、考えさせられました。

南アフリカ。
夫と子供殺され、その男(黒人)の妻にさせられた女(白人)は、復讐のためにその男を殺害する。
殺害した男との間には娘(容姿は黒人)がいるが、幼い頃から虐待を与え、奴隷のような扱いを繰り返していた。
やがて成人した娘もまた、その復讐として母親殺害を企てる。

演出・脚本のヤエル・ファーバーさんの言葉を聴くまでもなく、この物語が9.11のテロ後の世界をも描いている事は容易に察する事ができます。
そしてまた、私はこの演劇を観ながら、先日の米アカデミー作品賞を受賞した映画「クラッシュ」をも思い出していました。
とても良くできた数々のエピソードで綴られた映画でしたけれども、そのエピソードはどれも人種差別と銃社会を前提に成り立っているものでした。
で、その前提はなんら変わる事無く、本気で変えようとする気概も見えずに映画は終わっています。
描けなかったというより、描かなかったのだと思います。
それがずっと、喉に小骨が引っ掛かったような後味を残していました。

南アフリカではアパルトヘイト後、「真実和解委員会」という制度が設けられています。
罪人自らが、犯した罪を告白し、被害者との和解を図る場です。
多くの国民もその認識を共有し、長年に渡って対立してきた黒人と白人の溝を埋め、復讐の連鎖を断ち切ろうとする制度です。
この演劇においても、最終的に娘は母の殺害を思い留まります。
アメリカの視点でみれば夢物語に見えるかも知れません。
でも、そんな事では決して無いのです。
かつて我が国の歴史においても、帯刀廃止に成功しています。
変わらない悪循環の上に、いくら良いエピソードを乗せても、本質は空しい…。
日本人である私には「クラッシュ」よりも、この物語のほうが共感するところが多かったです。

…わが国では裁判員制度が始まろうとしているわけですが、それを〝真実和解委員会〟のように希望へと開かれた道に出来るのか、そうする為にどうしたら良いのか、何を考えるべきなのか…。
その論議が未だに全くされていない事が気掛かりです。


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2 コメント

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TBありがとうございました (梅じそ)
2006-03-15 20:36:51
はじめまして。

モローラは久々に見応えのあるお芝居でした。

あの重苦しい空気感。なんとも言えませんでしたね。

やっぱり劇場で観たかったです。

こちらからもTBさせていただきます。
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>梅じそさん (シキシマ博士)
2006-03-15 23:39:58
コメントありがとうございます。

私は演劇を見慣れていないので、こういう難しそうなのはどうかな?と思いながら観始めたんですが、見入ってしまいました。

わずかな登場人物であれだけの事を表現してしまうんですから演劇って凄いですね。

機会があれば今度は劇場に足を運んでみたいです。
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