白川郷を出発した我々は、今回の旅の最大の目的地、富山県滑川市に向かいます。
携帯電話の怪しげなナビゲーションに従い、宿の周辺をウロウロすること10分、なんとか宿を発見。
部屋
最初から布団が用意されています。雰囲気は和風ビジネス旅館だが、特に問題は無し。
かなり熱めの風呂に入り、部屋で転がっているとすぐに夕食の時間になった。
「おい、大丈夫か?」
布団でウトウトとしたせいか、私の頭はボーっとしている。
「うー、なんかまだ昼間の牛の脂が残ってるぞ…」
胃がムカムカとして軽い吐き気がするが、目の前には大量の海の幸が並び、特に名物のホタルイカは非常に美味しそうだ。
「いかんなぁ、脳と胃袋のギャップが大きすぎる…」
「お、これは美味いぞ!」
早くもマッチョはホタルイカの刺身を口に運んでいる。
私はホタルイカの沖漬けに箸を伸ばすと、ゆっくりと口に運び入れた。
「おお、美味ぇええ…」
続いてホタルイカの刺身にも箸を伸ばす。
「んー、やっぱり新鮮だわ」
当然、ボイルされたホタルイカも絶品だ。
まだ腹部に強い膨満感を感じているのだが、かろうじてこの三品は胃の中に入って行く。
「おい、この海老の焼いた奴も食ってみろよ」
「ああ…」
マッチョに勧められ、あまり食欲は無いが海老の焼き物を口に運ぶ。
見た目はなにやら不恰好だが、噛み締めると車海老よりも強い甘味が口の中に拡がる不思議な海老だ。
「旨いなぁ!あれ?もしかしてこれって…」
居合わせた中居さんに訊いてみる。
「あの、これってもしかして『がすえび』ですか?」
「はい、そうですけど」
「へぇ、初めて食べましたよ」
「なんだその『がすえび』ってのは?」
「石川県を中心にした日本海側でしか流通していない、脚の速い(鮮度の落ちが速い)海老だよ」
だがここまで食べるとさすがに限界点が近づいてきた。
「マッチョ、この天ぷら食っていいぞ…」
これも富山名産の『白海老』の天ぷらだったが、さすがに今の状況では揚げ物は食べられない。
「お待たせしましたぁ」
今度は中居さんがホタルイカのしゃぶしゃぶを運んで来た。
「おお、しゃぶしゃぶもあるのか!」
すでにヘロヘロな私は、マッチョが勝手にシャブシャブしたホタルイカを、機械的に口元へ運ぶ。
「んー、美味いけど腹が苦しい…」
苦しいはずなのだが、なぜかホタルイカだけは胃袋に入って行く。
「ぬぉおおお、マジで食えねぇ…」
なんだかんだと言いながら、気づくと私はメニューの90パーセント近くを平らげ、座椅子で完全にノックアウトしていた。
「大丈夫か、二時には起床だぞ」
「…そうだったな、とにかく部屋に戻って横になろうぜ」
早朝から動いていたこともあって、我々は部屋で布団に転がると、すぐに寝てしまったのだった。
深夜二時、携帯電話のアラーム音が鳴り響く。
「ぉおおお…」
アラームを止めると、芋虫のように布団から這いずり出す。
「おい、マッチョ、起きろ!」
部屋の明かりを点け、マッチョに起床を促す。
「何だよ、もう二時なのか?」
「おう、着替えてフロントに下りるぞ」
ボーっとした頭でフロントに下りると、夕食時に見かけた30代のカップルがすでにソファーに座っていた。
「おはようございます、じゃあとりあえずバスで港まで御送りしますんでね」
宿のオヤジが私とマッチョに話し掛ける。
「そちらの御二人もご一緒にどうぞ、今日はバスが出ますんでね」
どうやらカップルは宿の予約は楽天トラベルで、そしてこらから向かう『ホタルイカ海上観光』については滑川市観光協会(ほたるいか海上観光部)に直接申し込んでいた様だった。
「おじさん、今夜は出られそうなの?」
私は宿のオヤジに大事な質問をしてみる。そう、観光船は海が荒れると当然出られないのだ。おまけに外は小雨が降っている。
「いやぁ、どうだろうねぇ…」
オヤジの目線が宙を泳ぐ。
「(ふーん、なんか怪しいなぁ、ダメかもな…)」
私はなんとなくそんな印象を受けた。
※ 観光協会指定の宿に宿泊とセットで直接申し込むと、バスで送迎してもらえます。個人で別々に申し込むと、港までは自分で移動することになります。
港へ向かうバス
深夜二時過ぎ、ほとんど車は走っていない。
ほたるいかミュージアム
深夜二時半、他の宿からの宿泊客も集結し、異様な賑わいを見せるお土産コーナー。
「なんかここだけが異空間だな…」
日本中を探しても、深夜二時半に観光客で賑わう港はそうは無いはずだ。
ハンドマイク登場
皆の注目が集まる。
「えー、誠に残念ですが、本日の観光船の出航は中止となりました!」
「・・・」
「・・・」
なんとなく予想はしていたが、悲しいお知らせだ。
「まあ雨が降ってたからそんな気はしてたけどな」
「で、これからどうするんだ?」
ハンドマイクの人はさらに続ける。
「代わりといってはなんですが、これからほたるいかミュージアムで漁の様子の影像と、水槽で飼われている活ホタルイカの発光ショーをご覧になって頂きます。あちらの入口から順次お入りになって下さい」
海上でのホタルイカ漁の観光から、急遽深夜のほたるいかミュージアム観光に変わってしまうようだ。
試食コーナーに群がる人々
深夜二時半、ホタルイカの塩辛や沖漬けを、観光客はこれでもかと食べまくる。
ほたるいかミュージアムの水槽
なぜかカニがいる。
ムービー鑑賞
ホタルイカの生態や、ミュージアムの活ホタルイカをスタッフがどのように大変な思いで確保しているのかを、漁協の男性のナレーションで紹介してくれる。
綺麗なお姉さんのスムーズなナレーションでムービーが見たい方は、昼間の時間に『ほたるいかミュージアム』に行きましょう(笑)
最新の画像[もっと見る]
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- 新・くみたてんちゅ(アメリカ編1) 7年前
- バリウム検査とイカ墨パスタ(後編) 11年前
- バリウム検査とイカ墨パスタ(後編) 11年前
富山はたしか持ち家率が全国一位だったような記憶があります。
「いい歳をした男が賃貸アパートに住んでるなんてねぇ…」
とか、
「あの歳で家族を賃貸に住まわせるなんて、甲斐性の無い男ね!」
なんて言われちゃうと、東京から富山に移住した人が言っていました(笑)