女性管制官がアメリカで医者になった場合ーアメリカンドリーム

アメリカでアメリカンドリームを達成するには?
マーティンもと子(旧姓多尾もと子)の場合は?

老人パワー!!

2010-11-16 18:05:13 | Weblog
皆様、お元気でいらっしゃいますか。
数々のお見舞いのコメント、ありがとうございました。
まだまだ快復していないのですが、今日は自分に元気をつけるためにもこんな話題です。

今日は3人の元気な若女たちをご紹介します。

私の母は今年78歳。

父を亡くしたあと ケアハウスに入りそこから看護学校に通い統計学を教えています。ケアハウスに入居後も現役で働きに出ている元気な人は母だけです。
未だに統計学者としてのナイチンゲールの姿を紹介するべくあちこちで講演を行っています。

私の自慢の母です。

そして母の妹。
今年72歳。

母の実家を守りながら長年英語の教師として勤め上げた近江兄弟社学園をリタイアしたあとも、
「帰ってきてコール」にあい、今年オープンした高校のインターナショナルコミュニケーション科の長を務めます。

http://www.ob-sch.ac.jp/senior-high/News/2010/0925.php

この説明会でがんばっているのが彼女。
とても72歳にはみえませんよねぇ。

私の自慢の叔母です。

そして3人目が母の従妹、73歳。
内科医だった夫を亡くしたあと、62歳の時リクルートされ、老人ホームの薬局で薬剤師として働いています。
老人ホームの住民から発する香ばしい??香りから身を守るため、自ら香水をふりかけてがんばっているという叔母様。
免税の香水をアメリカから持参してプレゼントしただけのことはありました。

私の自慢のもう一人の叔母です。

以下は母の略歴です。
よろしかったらどうぞ。


クリックしてくださいね。

どうぞこの3人からパワーをもらってくださいね!!

診断クイズ

2010-11-10 22:42:01 | Weblog
??歳アジア人女性。
医療関係者。

ハロウィーンの一日前から間欠的な発熱と咳。
今日で12日目の発熱。

目だった既往はなし。
ノンスモーカー。

3日前から咳が止まらなくなり、
かかりつけの医師に予約を入れようとするが、来年の一月まで空きがないとのこと・・・

5日間コースのアジスロマイシン(マクロライド系の抗生物質)を終えた後も症状は改善せず。

プラン

1、胸部X線
2、喀痰の培養
3、血液検査
4、レボフロキサシン 750mg 10日間服用
5、Mucinex (咳止め)


(画像は医師国家試験より拝借)

診断 肺炎=医者の不養生

肺炎にかかるとここまで苦しいとは思いもしませんでした。
皆様、どうかご自愛くださいませ。
今日は自分自身のプレゼンで失礼しました。





職業訓練校にて

2010-11-09 18:25:00 | Weblog


息子は午前中高校にいて、スピーチセラピーなどを受け、午後になると
職業訓練校(Occupational Center)というところに移ります。

そこで、職業訓練を受けるんですね。

まだ中学生だった頃は、毎週月曜日にPeter Piper Pizzaというピザ屋さんに学校から行って ピザ用の箱を折るお仕事をしていました。
その報酬はお昼ご飯のピザです。
とっても楽しかったみたいですよ!





懇談会で伺ったのがちょうどハロウィーンの前でした。
植物を育てたり、芝を刈ったり、温室の管理をしたり・・・
出来上がったお花は売りに出すそうですよ。







すばらしいのが外の景色です!
いっしょに楽しみましょう。
なんという自然の恵みでしょうか。






そんな息子も今や高校生

2010-11-08 17:04:17 | Weblog
そんな息子も今や高校3年生になりました。

障害のある場合は21歳まで高校にいられます。
息子の場合は学校の始まりの9月1日で21歳で 9月30日生まれのためなんと、22歳まで高校にいられるそうで、ラッキーです。

そのあとは デイケアのようなアクティビティのある施設に昼間通うことになるでしょう。
ところが、何年ものウェイティングリストがあり、卒業時にすんなり入れるかどうか、でもまだ5年以上ありますからだいじょうぶでしょう。
こういう施設は万国共通で、不足気味ですね。



息子の通う高校です。アメリカの高校は4年制です。
青い屋根で統一されてとても美しい建物です。
後ろに見えるのがフランクリン山で、高校の名前もフランクリンと言います。



うちから歩いてもいける距離なのですが、身障者なので、特別にスクールバスが送り迎えをしてくれます。



お教室の中。
まるで、幼稚園ですね。



すわっているところは 彼の大好きなスポットだそうです。
とってもご機嫌がよろしいようで・・・

冬時間

2010-11-07 14:43:20 | Weblog
アメリカではタイムゾーンというおもしろいコンセプトがあります。



黄色のゾーンはEastern time
緑のゾーンはCentral time
青のゾーンはMountain time
赤のゾーンはPacific time

というふうに区分けをしています。

つまり、黄色の時間帯がたとえば午前12時だとしますね。
緑のゾーンはまだ午後11時。
青のゾーンは午後10時。
赤のゾーンは午後9時というふうに時間が1時間ずつずれます。

ですから、黄色のゾーンに住んでいる、たとえばマイアミの住民が赤のゾーンに住んでいる、たとえばロスアンジェルスの友人に今から電話しても ひんしゅくをかわないということになりますねぇ。
マイアミは夜中の12時だけど、ロスはまだ午後9時です。

何せ東と西で3時間も時間が違うわけですね。
ちなみに私のすんでいるテキサス州は緑のゾーンです。

アメリカに住んでいると日本にはない時間の切り替えというおもしろい事態に遭遇します。
夏時間と冬時間ですね。

それで、今朝がその冬時間の切り替えだったのですが、こんな感じでした。
午前2時になったとたん、時計が午前1時に・・・
信じられます??

それで、ERのスタッフは全員ため息!!
なぜならドクターを含め、スタッフ全員時給で雇われているから。
1時間余計に働いてもその分は支払われませんからね。
空白の一時間はいずこへ~?

看護師さんは朝のクルーと夜のクルーに分かれていて、それぞれ午前7時ー午後7時、午後7時ー午前7時というふうに働きますが、昨夜のクルーは1時間余分に働いてその分支払いゼロで、朝へとへと・・・それで、引継ぎの朝のチームは1時間余計に眠れて、朝すっきり目覚めて、「おはよう!!」
この違いは大きいですね。

午前2時になったとたん、私のブラックベリーは午前1時になっていました。
私のお部屋にある目覚ましも自動的に一時間時間が変っていました。
かしこい時計、アメリカ国内の旅行に最適です。
タイムゾーンの違うエリアに旅行した時 プラグを差し込んだら自動的にその地域のローカル時間にリセットされた時刻が表示されます。
これたしか、何かの電波をひろっているんでしょうね。
すごいハイテックです。

http://www.brookstone.com/searchResults.jsp.vr?NOCACHE=true


自閉症児を抱えた医学生生活

2010-11-06 14:38:20 | Weblog
勉強勉強で追いまくられる医学生生活を長男の自閉症と向き合いながら送ったなんて言ったら、いったいどこまで信じてもらえることでしょうか。
ふつうは健常な子供を育てながらでもたいへんなものです。

ところが、私が実際に泣き言を言ったのは小児科の教授から「自閉症の疑いあり」と言われたときだけなんですよ。
そのあとはただただ前へ進みました。
辛いことはなかったといえばうそです。
長女(健常児)になかなか目が行かなかったことも事実です。
でも、私は泣きませんでした!

耐えられない試練が私に与えられているとは思えなかったから。



メディカルスクールの授業が3時過ぎに終わると、学生のラウンジのようなところへまっすぐ行って保育園のお迎えの6時半ぎりぎりまで勉強。
保育園から帰ったら夕飯をいっしょに食べ、少し遊んでお風呂にいっしょに入って寝かしつけながらそのまま私も休みました。
そして毎朝早く起きて、子供たちを起こす前に一生懸命勉強しました。

週末はよくマイアミビーチへ。
長男は、車の心地よい振動と、移り変わる窓の景色が大好きで お決まりのコースをドライブ。
車に乗っている間は、とってもうれしそうです。


コンチネンタルの機長さんご夫妻は、よくうちへ長女を借り出しにやってきました。
自閉症の息子を健常者と遊ばせると、自閉症児教育に効果があるから。

しかし、あまりに度がすぎるようになり、私たちが長女と接する時間がなくなるのを恐れて丁寧にお断りをしました。

また、Baudhuin Preschoolの年長組には一クラスだけ、高機能の自閉症児と健常児を半々に混ぜて教育するというクラスがありました。
私は、毎朝同じバスで学校に行ってくれ、放課後も同じバスで保育園へ行ってくれるという点で便利だったこともあって、長女をそのクラスに入れました。

すると、クリニカルのインストラクターの家庭医が、

「君、それはいかんよ!すぐに娘さんをそのクラスから抜きなさい!
もし、自閉症の子供の真似をし始めて娘さんをダメにしてしまってからでは遅いよ!」

といつにないきつい口調で私を責めたではありませんか。

で、一年長女の博子は自閉症児と過ごしましたが、結果は?
今現在彼女の自閉症児への理解度が誰よりも深いことは言うまでもありません。
先生のおっしゃった批判はまちがいだったことになりますね。
長女には高機能自閉症児の親友ができ、毎日いっしょによく遊びました。
今でもその子のこと、よく覚えているそうです。

 クリックしてね。

自閉症児教育

2010-11-05 15:26:41 | Weblog
自閉症が確定した時、フロリダ大学のMailman Centerで、SSIという身体障害者に対する生活保護のようなものを受けるようにすすめられました。

http://www.ssa.gov/ssi/text-eligibility-ussi.htm


応募してみると、さすがに貧乏医学生の息子ということで、毎月400ドルあまりの保護を受けることができ、本当に助かりました。

長男は 耳は聞こえますが、口はきけません。
あ~ とか ま~などは言えても言葉はぜんぜん出ません。

そこで、PECS(Picture Exchange Communication System)が登場しました。



このように実物に限りなく近いカードを作り、バインダーにマジックテープで
収納できるようにします。



カードはこんな感じ。



そしてカードを選んでマジックテープに貼り付けて コミュニケーションを図るという仕組み。
これとは違って押せば録音された声が出てくるという機械もあります。
こんなビデオはいかがでしょうか。


http://www.youtube.com/watch?v=RO6dc7QSQb4
 
私の長男の障害はひどいですし、知能もかなり遅れていますが、最低限早いうちに教育を得られたおかげで トイレにはひとりでいけます。
これはほんとうに大きなことです。

Baudhuin Preschoolでは トイレを女の子のようにすわってするように教えましたが、過疎地域医療で半年間フロリダの過疎地域に行ったときにお世話になった保育園で 保母さんがほんとうに一生懸命になって教えてくださり、立っておしっこができるようになりました。
ほんとうにどんなに感謝してもしきれないものがありました。

食事もとても上手に自分で取れ、終わったら食器をすべて片付け 台所のシンクに入れます。
リスペリドンという抗精神病薬にはたよっていますが、薬のおかげで日常生活はとてもスムーズです。暴れたり、だだをこねないので、学校でも人気者なんですよ。

間食をあまりさせないこともあってか、食事をしっかり取り、いつも健康なので、先日全身麻酔で歯科検診を受けたとき、虫歯はたったの1本だけでした。

中学に入ったあたりから YESかNOは、首を使って言えるようになりました。

ノースカロライナ州ではこのような自閉症用のプログラム、TEACCHが有名で効果をあげているようです。


http://www.teacch.com/


いずれにしても早期教育が鍵ですね。

自閉症の診断が下った時

2010-11-04 15:31:16 | Weblog
マイアミの保育園の先生から レオナルドの発育度が遅れていると指摘されたのは私がまだ メディカルスクールに入学する少し前のことでした。

確かに・・・言葉が遅れているなあと思っていた矢先のことで、
ある日、保育園のお迎えのあと

「ダイダイ~」

と手を動かしながらバイバイを言おうとしたのが、結局最初で最後の言葉になろうとは、夢にも思いませんでした。

1994年のことです。

彼が一足先にメディカルスクールに行っていたこともあり、さっそく小児科の教授に見てもらうことにしました。

言葉が遅れている。
おもちゃで遊ばない。
同じことをずっと繰り返している。(ティッシュペーパーを箱から出してはまた元に戻すことを繰り返す)
抱っこされてもいやいやする。
目と目を合わせない。
指差しを一切しない。

息子は自閉症の疑いありと診断を受けました。
自閉症は英語で Autism といい、スペクトラムの大きい発達障害で、高機能から低機能までその境があいまいなところがあるのが特徴です。

さっそくメディカルスクールに入学する前の夏休みじゅう、私は助けを求めて奔走しました。

まずは、Mailman Center(University of Florida)というところでの評価が行われ、Audiogram(聴力テスト)、EEG(脳波)や、脳のMRIも撮りました。
自閉症という診断は確認され、直ちに自閉症児のために特別に作られた学校への受け入れが行われ、スピーチセラピーも始められました。

見事なシステムです。

突然私たちを襲った悲劇に感傷に浸っている暇もありません。

レオナルドの受け入れられた学校は Baudhuin Preschoolという自閉症児専門学校で、当時2歳だった息子は毎日毎日スクールバスで通い始めました。
その学校がなんとうちのメディカルスクールの傘の下にあったことも幸いしました。

http://www.nova.edu/msi/earlylearning/baudhuin/index.html


Baudhuin Preschoolでは同じ障害を持つ親同士の交流も盛んです。
自閉症教育にまったく無知だった私の目を覚まさせて下さったご夫婦がいました。

ご主人はコンチネンタル航空の機長さん。
奥様とともにとても教育熱心で まずはABA(Applied Behavior Analysis) Therapy=Discrete Trial therapyを私に紹介してくださいました。

http://www.youtube.com/watch?v=NbVG8lYEsNs


ABA Therapyでは、インストラクターと生徒は必ず向き合って座ります。自閉症児は、他人と視線を合わせない障害がありますから、

”Look at me.”(私を見て)

などという簡単な指示からはじめ、このビデオのように段階を進めます。
生徒が 私を見て、の指示に従って少しでも教師を見返したとします。
すると、教師はすかさず、

”Good looking!””Good boy!”

などとと言い、ご褒美を与えます。
それはレギュラーサイズのではない小さいケーキ用のマーブルチョコのようなM&Mというチョコです。

そのチョコ(ほんとうに小さい丸いチョコです)を口の中に・・・
すると、ご褒美がもらえるということで自閉症の子のやる気がそそられるんですね。
Baudhuin Preschoolでも午前中1時間、午後1時間ABA Therapyをやってくれました。

私が元管制官だったことを知ると、うちにいらっしゃいとそれは親切にご招待くださり、私は息子とでかけました。

おうちは閑静な住宅街にあり、車庫は改造されて教育用コンピューター室に。
母屋はかなり散らかっていましたが、息子さんは家庭教師とABA Therapy の真っ最中。
なんでもこのABA Therapyを毎日何時間もやることで 自閉症の子が伸びるそうで・・・私はびっくりしました!
その当時ご夫婦は、免許のあるセラピストを自給で20ドルで雇っておられました。貧乏な医学生の私たちにはとてもまねのできる芸当ではありません。

お母さんいわく、子供の教育に忙しくてお掃除している暇がないのよ~
お父さんいわく、絶対この子をハーバード大学の医学部へ行かせるぞ~

まったくすごい夫婦です。

いろいろな資料やビデオをお借りして私も勉強しました。
それが私の医学生1年目のことでした。

http://www.youtube.com/watch?v=2afb4i7LMJc&NR=1



ニアミスの悪夢

2010-11-03 14:23:29 | Weblog
私は、日本初の女性管制官として1990年に運輸省(現国土交通省)に入省し、1991年に退職するまで、管制の現場で実際にマイクを握っていました。
現場にいる間は日々の緊張からニアミスの悪夢にうなされたことが何度もありました。

夢なら覚めてほしいと夢の中で叫んでいた私・・・

自分の出した指示のために航空機が・・・

満席の大型ジェット同士がぶつかったら、500人+500人で最低限1000人の犠牲者がでます。
そして平均一人につき4人の家族がいたとして、ざっと4000人の人がさらに悲しむ・・・というような単純計算をよくして自分のなかの緊張度をさらに高めていたものです。

ちょうど2年ほど前、ようやく日本語でパソコンが使えるようになった頃、「女性管制管」で検索しましたら、偶然にも最近話題になった2001年に静岡県上空で起きたニアミスケースが出てきました。

私は、また、これは悪夢か!?と一瞬たじろぎ、もしかしてこれ、わ た しのこと?? 
私にも後輩の訓練をウォッチしたことは何度もありますしね。

そう、昔見た悪夢が蘇ってきたからなんですね。

はっきり言って緊張しないで仕事をしている管制官はいません

(【宮川光治裁判官の補足意見】今回の事故は2人が管制官として緊張感を持って意識を集中していれば、起こりえなかった。)

緊張していても間違えることがあるのが人間なのです。
人間の声による通信に頼る航空管制に聞き違えやいい違いはつきものです。
その人間の通信による管制の世界で個人の注意力によって安全を維持することを期待するには限界がありませんか?

医療の現場でも同じこと。
緊張して全力を尽くしたとしても、不幸にして間違いは起こりうるし、それが医療事故につながることはあり得ます。
日本では医療事故でもアメリカと違って刑事責任を優先させるようなそんな風潮がありますよね。
そんな中、医療関係者が萎縮していく、もう医者はできない、と一瞬でも思ったことのない方は少くないかも・・・と想像します。

幸か不幸か、私は人命を預かるという意味では共通のものがある航空と医療の世界でプロフェッショナルです。
なかなかできない二つの大きな職業を経験してみてこそ言えることでもあります。

個人の刑事責任をどうしても優先しがちな日本の法システムに疑問を持ちますね。
もちろんいい間違いが今回のニアミスのきっかけになった事実、それによってたくさんの方々が負傷されたことを否定しているわけではありません。

でも・・・

もっと注意していれば、
もっと緊張していれば、
もっと根性があれば、
もっとガッツを入れていれば・・・ということ?

ほんとうにほんとうにそれだけ???

ただただ日本の空の安全対策を個人の刑事責任より優先していただきたかったと残念でなりません。

日航機ニアミス事故、最高裁決定要旨
2010年10月28日22時58分

 日航機ニアミス事故で、管制官2人の上告を棄却した26日付の最高裁決定要旨は以下の通り。

 【多数意見】蜂谷秀樹被告が言い間違いで907便に降下指示を出した結果、空中衝突防止装置(TCAS)の指示で降下する958便と衝突する高度の危険性があった。蜂谷被告の訓練の監督者だった籾井康子被告が是正しなかったことも過失行為にあたる。

 907便の機長がTCASの上昇指示に従わず降下を続けた事情はあるが、異常操作とは言えず、管制官の降下指示を受けたことに大きく影響されたもので、誤指示とニアミスには因果関係がある。

 管制官2人は警報で異常接近を認識しており、TCASが958便に降下指示を出すことは十分予見可能だった。2機が降下を続けて異常接近し、衝突を回避するため急降下などの措置を余儀なくされ、乗客らが負傷する結果が生じることも予見できた。

 ニアミス発生の要因として、管制官の指示とTCASの指示が反した場合の優先順位が規定されておらず、航空機の性能が907便の機長に周知されていなかった(そのため、失速をおそれて降下を続けた)事情も認められるが、それは責任のすべてを2人に負わせるのが相当でないことを意味するに過ぎず、業務上過失傷害罪の成否を左右しない。

 【宮川光治裁判官の補足意見】今回の事故は2人が管制官として緊張感を持って意識を集中していれば、起こりえなかった。切迫した状況下では、管制官には平時にもまして冷静沈着に誤りなき指示を出すことが求められる。2人は907便から復唱があっても誤りに気づかず、不注意が重なっている。大惨事は間一髪で回避できたが、結果は重大で2人の行為を看過することは相当でない。

ヒューマンエラーを事故に結びつけないシステムの工夫が十分でなかったことは確かだが、情状として考慮しうるにとどまる。事故調査機関と捜査機関の協力関係には検討すべき課題があるが、刑事責任を問わないことが事故調査を有効に機能させ、安全性の向上に資するという議論は現代社会における国民の常識にかなうとは考えがたい。

 【桜井龍子裁判官の反対意見】誤指示が職務上の義務に反する不適切な行為であり、ニアミスのきっかけになったことを否定はしない。しかし、事故当時、TCASがいつ、どういう指示を出すか管制官に提供されるシステムではなかったことに照らすと、2人は指示の具体的内容を知ることはできなかった。

 TCASの指示に反することは極めて危険な行為で、907便がそれに反して降下を続けたのは、管制官にとって予想外の異常事態であった。従って、過失犯として処罰するほどの予見可能性は認められない。

 機長が降下を続けたのは、907便の航空性能情報が機長らに周知されていなかったことや、TCASの指示に反する操作の危険性に対する教育・訓練が不十分だった事情がある。機長の判断は客観的には誤っており、誤指示とニアミスの因果関係は認められない。

 航空機の運航のように複雑な機械とそれを操作する人間の共同作業が不可欠な現代の高度システムにおいて、誰でも起こしがちな小さなミスが重大事故につながる可能性は常にある。だからこそ、二重、三重の安全装置を備えることが肝要だ。弁護側は、今回のようなミスで刑事責任を問えば、将来の刑事責任をおそれてミスやその原因を隠す萎縮(いしゅく)効果が生じ、システム全体の安全性に支障を来すと主張するが、今後検討すべき重要な問題提起だ。







新しいCPRガイドライン 

2010-11-02 15:15:13 | Weblog
アメリカには American Heart Associationという組織があり、我々に常に新しい蘇生法のガイドラインを知らせてくれています。

実はこの10月17日付で ガイドラインが変りました。

それを紹介する前にひとつ。

アメリカでは Good Samaritan法という法律があります。
緊急援助を試みた人は、重大な過失がない限りその結果について責任を問われないとする免責法なんですね。

ですから 目の前で倒れた人を救おうとする行為が法律で守られています。
とてもすばらしいことですね。

今までのガイドラインは A=Airway エアウェイ、気道確保
               B=Breathing 呼吸
               C=Compressions 胸骨圧迫心マッサージ

の順番で つまり、ABCと覚えさせられていたのですが、
新しいガイドラインでは なんとCABという順番になりました。
CAB(キャブ)というとアメリカではタクシーという意味。



今目の前で誰かが倒れたとします。
もし自分ひとりで誰もいなければ、まずは991を呼びます。
そしてAEDを探します。



けれども他に誰かいればその人に911を呼ぶように指示し、AEDを持ってくるようにたのみます。

そのあと人工呼吸をしないで直ちに胸を押します。
2インチ(5cm)の深さで1分間に100回の速さで!!
細かいところはどうでも、とにかく早く、速く、深く胸を押す、ということです。
胸を押すことは誰にだってできますよね。
他人の口に自分の口をくっつけて空気を入れ込むのはほんとうに勇気が要りますが・・・

倒れた時点では まだ肺や血管に流れている血液にはまだ酸素が充分ありますよね。
その酸素を途切れることなく全身に循環させようという趣旨から 今回の変更に相成った模様です。ただし新生児の蘇生は今までどおりで変更がありませんのご注意!

ガイドラインの変更になる4日前に大学病院で蘇生に関する講義をして 研修医の前で ABC ABCと叫んできたばかりでしたが、ほんとうに情報は逐一変化します。
キープアップしないと。



みなさん、ファーストエイドの講習、ぜひお受けください。
消防局なんかでこちらも一般向けに40ドルくらいで講習しています。
AEDなんか、使い方は意外と簡単なんですよ。
一度中身を見たら安心すると思います。
だってスイッチをオンにしたあと、すべての指示は録音された声によって行われますからその通りにすればいいのです。



それではこちらのビデオをご覧ください!

http://www.youtube.com/watch?v=O9T25SMyz3A