ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

二子塚公園に残されているもの

2016年03月25日 00時00分00秒 | まち歩き

 私が住んでいる川崎市高津区の二子六丁目に、二子塚公園があります。元々、この辺りに古墳が二つあったようで、そのために二子塚と名付けられたそうですが、古墳の痕跡らしきものは残っていません。

 さて、この二子塚公園ですが、実はもう一つ、隠れた遺産が残されています。「知る人ぞ知る」という表現が相応しいかどうかはわかりませんが、鉄道ファンなどの間では比較的知られているようです。それが、次の写真です。

 一見すると、ただのバスの車体に見えます。「こんなものが『隠れた遺産』なのか?」と思われるかもしれません。

 しかし、隠れた遺産です。「昭和の」という言葉を付け加えておかなければなりませんが、川崎市の歴史を語る際に必要な物であることに変わりはありません。

 実は、この車体は自動車としてのバスではありません。トロリーバスの車体なのです。

 トロリーバスは、自動車と電車との中間のような存在であり、鉄道事業法施行規則第4条第5号では「無軌条電車」という言葉で表現されています。つまり、日本では立派な鉄道の一種でありまして、架線から電気を入れて走るバスと考えていただければよいでしょう。

 日本では、現在、トロリーバスは立山黒部アルペンルートの2箇所、関電トンネルトロリーバス(関西電力)と立山トンネルトロリーバス(立山黒部貫光)のみとなっていますが、かつては東京都(都区部)、川崎市、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市で活躍していました。これらはいずれも公営です。また、戦前には宝塚市と川西市に日本無軌道電車という会社のトロリーバス路線がありました(これが日本最初のトロリーバスです)。

 公園の案内板にも書かれているように、トロリーバスが走っていたのは川崎駅前から水江町までです。つまり、川崎区内を走っていたこととなります。同じ時期には川崎市電も、やはり川崎区内のみで走っていました(ちなみに、川崎市が政令指定都市となったのは1972年のことです)。トロリーバスが運行されていたのは昭和26年、つまり1951年から、昭和42年、つまり1967年までのことですから、わずか16年ほどしか走らなかったということになります。

 1967年の廃止前には19両も在籍していたのですが、現在はこの1両しか残されていません。川崎区内を走っていたこの車両が、何故に、川崎駅から10キロメートル以上も離れ、トロリーバスとも市電とも縁のない高津区の二子六丁目に保存されることになったのか。その経緯はわかりません。

 車体はかなり傷んでおりますが、窓ガラスに貼られた白黒の写真が、活躍していた当時の様子を伝えてくれます。現在、車両の内部に立ち入ることはできません。

 実は、私がこのトロリーバスの存在を知ったのは最近のことです。小学生時代から、この二子六丁目や五丁目、隣の坂戸一丁目を自転車で何度も走っていますし、すぐ近くの二子坂戸緑道も通っているのですが、二子塚公園のことは知らないままに過ごしてきました。せっかくのことなので、見ておこうと思い、訪れてみた訳です。

 貴重なトロリーバスの静態保存を見たい、という方のために、簡単な道案内を記しておきましょう。

 路線バスを利用する場合:東急バス溝02・溝03または川崎市バス溝05の南二子バス停が最寄りとなります。小杉駅方面から乗車の場合、このバス停で降りて目の前のセブンイレブン(川崎二子店)の手前にある細い道に入ってください。その道を進んで次の角を右に曲がれば、すぐに二子塚公園に着きます。溝の口駅または高津駅方面から乗車の場合は、南二子バス停で降りて少し手前に戻り、サイエンスパーク入口交差点で交差する道に入り(左折、ということになります)、かながわサイエンスパーク(KSP)の方向へ進みます。すぐに、左側にセブンイレブン(川崎二子6丁目店)、右側にうなぎ割烹みや川が見えますので、そこの四つ角を左折します。少し歩けば、二子塚公園に到着します。

 田園都市線の高津駅から:同駅西口を出て、国道409号(府中街道)を小杉・川崎駅方面に進みます(改札口を出たら左のほう、つまり灰吹屋や亀屋万年堂のほうへ歩きます)。サイエンスパーク入口交差点を右折し、次の交差点(セブンイレブン川崎二子6丁目店とうなぎ割烹みやがわが目印)を左折してください。そのまま進めば、左側に見えます。

 南武線の武蔵溝ノ口駅から:やや離れていますので、バスを使われるほうがよいかもしれません。バスターミナルで溝02に乗り、南二子バス停で降りてください。また、歩いて行く場合は、ペデストリアンデッキを使って溝口中央商店街(ノクティと、カラオケの鉄人やスギザキなどがあるビルとの間の道。右にも左にも回転寿司屋があるので、それらを目印にしてもよいでしょう)に出るのが最もわかりやすいでしょう。この商店街を真っ直ぐ進みます。そうすると二ヶ領用水という川に出ますので、橋を渡ってから右に曲がり、二ヶ領用水に沿って歩いてください(かなり歩きます)。すると、二子塚橋(セブンイレブン川崎二子6丁目店、順風一路という中華料理屋が目印)に出ます。左折して、すぐに右折してください(セブンイレブンの裏のほうへ進む感じになります)。


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1 コメント

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セブンイレブンなどが集中出店? (川崎高津公法研究室長)
2016-03-25 00:45:33
 サイエンスパーク入口交差点と言えば、今年2月まで最もわかりやすい目印として「ブックセンターいとう」の高津店があったのですが、閉店してしまいました。
 本文にセブンイレブンが二箇所も登場します。本当に、同じ二子六丁目の、府中街道とそのすぐ裏の道に、それぞれ店舗があるのです。歩いて1分もかからないでしょう。
 ついでに記すなら、サイエンスパーク入口交差点のそばには「まいばすけっと」もあります。以前はローソン100か何かでした。この「まいばすけっと」も、二子や溝口など、高津駅の周辺にいくつもの店舗があります。
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