ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

やはり、岩泉線は廃止か

2012年03月30日 20時35分55秒 | 社会・経済

 ネット時代になって、ローカル版の記事などを(多少であったとしても)読めるようになったのはうれしいことです。ただ、記事を読んで、あれこれと考えさせられることも少なくありません。

 今日の朝日新聞岩手版などで報じられていますが(http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000001203300005)、JR東日本は、岩手県の岩泉線を廃止する方針を固めました。JR東日本盛岡支社も正式に発表しています(http://www.jr-morioka.com/pdf/press/pdf_1333088629_1.pdf)。

 岩泉線は、山田線の茂市から岩泉までの38.4キロメートルの路線で、1980年代に第二次特定地方交通線に指定され、廃止される予定でした。残ったのは、道路事情の悪さによるものです。しかし、この時でも輸送密度は667人で、赤字にして乗客が少なすぎることは明らかでした。国鉄がJRグループとなってからも輸送密度は減少の一途をたどり、1986年度には295人、1987年度には180人、2003年度には85人、2007年度には58人、そして2009年度には29人となっています。JR東日本の在来線はもとより、全国のJRグループの在来線では最も悪い成績です。今月で営業を終える十和田観光電鉄線や長野電鉄屋代線と比較しても低すぎます。岩泉線の輸送密度では、路線バスでも満席にすることはできないでしょう。

 JR東日本は、2009年度の平均通過人員の数を公表しています。これによると、第1位は山手線で106万7341人、第2位は埼京線で70万169人です。岩泉線は67位(最下位)で46人であり、66位の只見線が388人ですから、岩泉線は只見線の8分の1にも満たないのです。山手線と比較すると、岩泉線の通過人員は約23203分の1という数になってしまいます。JR西日本の三江線も輸送密度が極端に低いことで有名ですが、平均通過人員は83人となっています。

 また、1986年から2010年まで、茂市~岩手和井内が4往復、茂市~岩泉に至っては3往復しかありません。途中、1往復だけ増えたこともあったそうですが、すぐに廃止されてしまいました。

 2010年7月末日、岩泉線の押角と岩手大川との間にある落石シェルターの近くで土砂崩れが発生しました。この時、列車が走行しており、現場に突入の上、脱線しています。死者が出なかったのは幸いでしたが、負傷者は出てしまいました(重傷ではなかったそうですが)。

 その後、この事故の原因調査検討委員会が設けられています。同委員会は、2011年12月に、岩泉線の沿線で大規模な岩盤崩落が発生する恐れのある場所が23、列車の運行に影響のある落成崩壊が発生する恐れのある場所が88箇所あるという趣旨を指摘しています。JR東日本盛岡支社は、安全確保のために少なくとも約130億円の費用が必要であるとしています。期間については長期間としか言明していません。

 2009年度の収支が2億5700万円の赤字で、平均通過人員が46人では、どう考えても130億円以上の費用などをかけて復旧させるだけの意味がありません。今までよくぞ存続してきた、とすら言えます。しかも、東日本大震災で大きな被害を蒙った三陸鉄道とは違い、JR東日本は第三セクターでもなければ赤字会社でもないので、公費による復旧は望めません。

 以上からすれば、廃止はやむをえないところでしょう。残る問題は廃止後の道路事情で、代替バスがどのように運行されるかにかかっています。


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