やはり、JR九州の状況が気になります。読売新聞社のサイトに、今日(2023年9月6日)の15時4分付で「JR九州、12区間で1日の平均利用者1000人未満」という記事(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230906-OYT1T50203/)が掲載されています。
これは、今日、JR九州が2022年度の路線別・区間別の利用状況を発表したことを受けたニュースです。1日あたりの輸送密度が1000人未満の路線は10、区間は12でした。これらは、今年改正された「地方公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく再構築協議会を国土交通大臣の判断で設置することのできる対象となります。
JR九州が発表している資料があるかと思い、サイトを見たら「線区別ご利用状況(2022年度)」というページがあり、「(1)平均通過人員・旅客運輸収入」と「(2)線区別収支(平均通過人員が2,000人/日未満の線区)」という資料があります。
上記読売新聞記事では輸送密度と書かれていますが、JR九州(をはじめとしたJRグループ)は平均通過人員という言葉を使います。JR九州の資料に基づいて、平均通過人員が一日あたりで2000人未満の路線・区間をあげておきます。ありがたいことに、JR九州は同社が発足した1987年度の平均通過人員も示していますので、それもあげておきます。
(以下、路線名:区間、1987年度の平均通過人員⇒2022年度の平均通過人員、減少率の順に記します。2022年度の平均通過人員が1000人未満の区間については赤字で示します。)
①日豊本線:佐伯〜延岡、3,428→604、▲82%
日豊本線:都城〜国分、2,029→1,068、▲47%
②筑肥線:唐津〜伊万里、728→196、 ▲73%
③宮崎空港線:田吉〜宮崎空港、1,494(1987年度には未開業)
④筑豊本線:桂川〜原田、2,981→385、▲87%
⑤日田彦山線:城野~田川後藤寺、3,287→1,945(2016年度には2,595)、▲41%
日田彦山線:田川後藤寺〜夜明、1,103→2016年度には299
⑥後藤寺線:新飯塚~田川後藤寺、1,728→1,205、▲30%
⑦久大本線:日田~由布院、2,564→1,401、▲45%
久大本線:由布院~大分、3,890→1,793、▲54%
⑧唐津線:久保田~唐津、3,649→1,818、▲50%
唐津線:唐津〜西唐津、1,315→765、▲42%
⑨豊肥本線:肥後大津~宮地、2,711→768、▲72%
豊肥本線:宮地~豊後竹田、1,028→171、▲83%
豊肥本線:豊後竹田〜三重町、2,384→806、▲66%
⑩肥薩線:八代〜人吉、2,171→2019年度に414
肥薩線:人吉~吉松、569→2019年度に106
肥薩線:吉松~隼人、1,109→493(2019年度に605)、▲56%
⑪三角線:宇土~三角、2,415→825、▲66%
⑫吉都線:都城~吉松、1,518→394,▲74%
⑬指宿枕崎線:喜入~指宿、3,687→1,862、▲49%
指宿枕崎線:指宿~枕崎、942→220、▲77%
⑭日南線:田吉~油津、2,129→914(2020年度には934)、▲57%
日南線:油津~志布志、669→2020年度には171
いずれも「やはり」と納得できるものでした。
上記読売新聞記事にも「豊肥線の宮地―豊後竹田は171人、筑肥線の唐津―伊万里は196人でいずれも200人を下回った」と書かれているように、この2路線・区間は際立っています。私はいずれの区間も利用したことがあり、普通列車の利用状況の低さが手に取るようにわかったのです。
一度、夜に宮地駅発豊後竹田行きの2両編成の普通列車に乗った時に、前の車両には運転士と乗客1人、後の車両には車掌と私しかおらず、寂寥という言葉がふさわしいような状態でした。しかも、豊肥本線の宮地~豊後竹田には特急列車も運行されているのですが、その特急列車の本数も少なく、高速バスのほうが利便性が高いのでした。
また、筑肥線の唐津〜伊万里(正確には山本~伊万里と思われます)は、姪浜~唐津と同じ路線名であることが不自然の極みに感じられる程、性格が違います。唐津〜伊万里には特急などの優等列車もなく、佐賀や福岡への直通列車もないので、利便性が低いのが平均通過人員の数に現れているのでしょう。
〈なお、かつての筑肥線は博多〜伊万里の1本の路線(但し、東唐津でスイッチバック)でしたが、福岡市営地下鉄空港線との直通運転や、結局開業しなかった呼子線建設などとの関係で博多~姪浜および虹ノ松原~鏡~久里~山本(但し、東唐津は移転)が廃止され、虹ノ松原~東唐津(移転後)~和多田~唐津が開業したことにより、路線が分断されてしまいました。唐津線の山本~唐津には筑肥線のディーゼルカーも走りますが、あくまでも唐津線です。また、唐津線の唐津〜西唐津は電化されており、筑肥線の電車も走ります。〉
他の路線・線区を見ると、本線と名付けられている路線にも平均通過人員の低いところがあることも注目に値するでしょう。とくに、日豊本線の佐伯〜延岡、筑豊本線の桂川〜原田の落ち込み方には目を見張ります。
日豊本線の佐伯〜延岡には特急列車も走ります。というより、普通列車よりも特急列車のほうが多いのです。私が大分大学に勤めていた時でも佐伯〜延岡の普通列車は3往復、市棚~延岡は1往復だけしかなかったのですが、今や、佐伯から延岡まで運行される普通列車は朝の1本だけ、延岡から佐伯まで運行される普通列車は早朝の1本と夜の1本だけですから1.5往復しかありません。佐伯から重岡までの普通列車も夕方および夜の2往復だけ(そのうちの1本は大分行き)ですから、宗太郎駅、市棚駅、北川駅、日向長井駅、および北延岡駅に停車する普通列車は1.5往復しかない訳です。大分県南部と宮崎県北部とを跨がるような通勤または通学の需要はかなり少ないでしょうし、とくに佐伯から宗太郎駅までの大分県の区間の人口は少なく、もとよりモータリゼイションも進んでいますが、それにしても普通列車の少なさは目立っており、もはや本線の名に値しないとも言えるでしょう。
また、特急列車が走るといっても、現在のにちりん号は基本的に大分から宮崎空港または南宮崎までの区間でしか運行されておらず、本数も8往復しかありません(私が大分市に住んでいた時には10往復以上あったと記憶しています)。大分駅で特急ソニックに接続するにちりん号もあるのですが、利便性はどれほどなのでしょうか。東九州道も開通していますし、様々な状況を考え合わせても、日豊本線、とくに大分県・宮崎県境を跨ぐ区間の活性化はかなり難しいのではないかと思われます。
筑豊本線の桂川〜原田についても触れておきましょう。この区間には、かつて寝台特急あかつきなども運行されたことがあるのですが、現在は8往復の普通列車しか運行されていません。また、途中の駅には列車交換施設がないのです。桂川から博多へ行くには篠栗線に乗ればよいですし、原田から黒崎や小倉、そして門司へ向かうのであれば鹿児島本線を利用するほうが便利であるはずですし(距離的にどうであるのかわかりませんが)、やはり博多を通ることの意味は大きいのです。旅客輸送という点からすれば、桂川〜原田の需要は見込めません。かつて、筑豊本線は石炭輸送で賑わった路線でしたが、炭鉱が次々に閉山され、貨物輸送も行われなくなった鉄道路線の行く末を、筑豊本線はよく見せてくれたのです。
この他の区間についても、あれこれと考えさせてくれます。今後、存廃論議が生ずる、あるいは再燃する路線・区間が新たに生ずる可能性も否定できません。
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