世間的には、鉄道と軌道は同じものと思われています。しかし、法律の世界においても鉄道と軌道は別物です。鉄道については鉄道事業法や鉄道営業法などがあるのに対し、軌道については軌道法があります。他にも鉄道と軌道の違いはいくつかありますが、最もわかりやすいのは、鉄道は原則として道路の上を走ってはならないのに対し、軌道は原則として道路の上を走らなければならない、というところでしょう。この「道路の上」という言葉の意味は広く、英語の前置詞を使えばon、つまり道路に敷いた線路の上を電車が走る場合を指すばかりでなく、同じく英語の前置詞を使えばover、つまり道路の真上に設置した高架橋の上を電車が走る場合も指します。onの例が路面電車、overの例がモノレールや新交通システムなのです。実のところ、overについての経緯は複雑であったりするのですが、その点は脇に置いておきましょう。
今回は、onの話です。東京都にある路面電車としての軌道は、都電荒川線および東急世田谷線です。ただ、世田谷線のほとんどは専用軌道であり、路面電車としての面影は若林駅のそばの踏切(環状7号線のほうです)くらいしかありません。それに対し、都電荒川線のほうはといえば、王子駅前電停から滝野川一丁目電停までの区間に道路の真上を走る部分がありますし、早稲田電停から面影橋電停の先の高戸橋交差点付近など、道路の真ん中に線路が敷かれた所があります。路面電車らしさだけで言えば都電荒川線のほうが濃いと言えます。
そこで、今回は、都電荒川線にあって東急世田谷線にないものを紹介します。
まずは早稲田電停の東側にあるホームです。都電荒川線は基本的に複線なのですが、この部分は単線で、車両の両側にホームがあります。左側が降車専用、右側が乗車専用です。これから荒川車庫前行きの8800形8803が発車していきます。
次の面影橋電停に向けて8803が走って行くのですが、右側に同じ8800形が停まっています。
右側に電車が停まっているのは、降車専用ホームに到着して乗客を降ろしたからです。実は、このホームは1枚目の写真にある左側のホームとつながっています。
複線部分にあるホームは、常時使用されている訳ではありません。右側の電車が到着した時には1枚目の写真の電車が出発を待っていたために、このホームの場所に停車して乗客を降ろした訳です。メインのホームの場所に電車が停まっていなければ、電車はそのまま単線部分に入ってきます。
このように、降車専用ホームが長く、乗車部分は単線部分にしかないという形態は、都電荒川線の三ノ輪橋電停など、路面電車の起終点では時々見かけるものですが、東急世田谷線にはありません。
荒川車庫前行きの8803が発車してから少し後に、降車専用ホームから電車が発車し、メインのホームに向かいます。この電車も8800形で、2009年から10両が荒川線で運用されています。
8802でした。行先表示が「早稲田」のままですが、果たして三ノ輪橋行きなのか荒川車庫前行きなのか回送なのかがわかりません。実は、この電車、比較的短い停車時間が過ぎてから、「早稲田」の表示のまま、面影橋電停に向けて発車しました。
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