ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

西鉄宮地岳線乗車記(1)

2013年01月17日 22時09分34秒 | 写真

  私のサイトに設けている「待合室」では、関東や九州を中心に、これまで歩いてきた街の様子などを、写真と文章で紹介しています。その中で、存続か廃止かで論議された鉄道路線の様子を取り上げた回があります。今回はその再掲載です。なお、一部を修正しています。

 「待合室」および「ひろば」を御覧になられている方は、私がいかに出歩くことが好きか、街中などを歩くことが好きか、ということがおわかりかと思います。

 「いつからそうなったのか」と問われるならば「幼い頃から」としか答えようがありませんが、大分大学に就職してからその傾向が強くなったことは確かです。大分市に住んでいた7年間は、自宅から一歩も出ない日のほうが珍しいくらいでした。仕事のためにあちらこちらに行くことは当然として、仕事以外でも、最初の2年半は日産パルサーJ1Jで、残りの4年半は日産ウイングロードXで、大分県内をはじめとして福岡県、熊本県、宮崎県などを走りました(九州島内で、車で走ったことがないのは長崎県だけです)。列車で大分市中央町へ、足を伸ばして佐伯市、当時の湯布院町、竹田市、日田市、さらに福岡県などにも行きました。

 時には、とくに目的地を決めることなく移動を楽しんでいました。私の場合は、自分で車を運転することも好きですし、列車に乗るのも好きですので、移動の過程を楽しんでいるのかもしれません。九州に住んでいると、車さえ持っていればどこへでも足を伸ばす気になりますので、休日などのドライブの距離が長くなります。福岡の天神まで行けば往復で300キロメートルを超えますし、大分県内を走り回っていたらやはり300キロメートル以上になっていたことがあります。1999年の夏休みには、川崎に帰らず、南九州を一回りする自家用車の旅に行きましたが、やはり運転している時が一番楽しかったような気がします。

 しかし、移動の過程を楽しむといえば、列車に乗る時が一番かもしれません。私は、首都圏でも京阪神地区でも、とくに私鉄の通勤電車や地下鉄に乗るのが好きです。車両を楽しむということもできます。それだけでなく、新幹線やJRの特急電車では味わえないものがあるのです。車内で飛び交う方言などです。福岡での集中講義の際にも、ホテルから大学までは地下鉄を使っていますし、講義が終わってから、あるいはオフの日などには、それこそ福岡県内のJR、西鉄、地下鉄を使ってあちらこちらをまわったりします。福岡や大分などの場合は、ローカル線という楽しみがあります。もっとも、乗り換えなどで長時間待たされたりするのですが、それはそれとして面白さがあるのです。

 2006年9月は、台風に備えてという意味もあって、少し早めに福岡市に入りました。大分大学時代のゼミ生たち、つまり卒業生たちと会い、それから、1日で200キロメートル以上をまわるという変な旅をしました。さすがに、こんな旅に付き合おうという人はあまりいませんので、私一人でまわったのです。今回は、その第1弾として、西鉄宮地岳線乗車記その1をお送りします。

 宮地岳線の起点、貝塚駅です。午後、地下鉄箱崎線に乗り、何年ぶりか覚えていないのですが終点の貝塚に出ました。福岡市東区、九州大学箱崎キャンパスの北側にあります。すぐそばをJR鹿児島本線が通っていますが、そちらのほうには駅がありません。従って、貝塚駅はJR箱崎駅と千早駅との中間にある、ということになります。

 これから宮地岳線に乗るのですが、これは当初から予定に入れていました。2006年3月31日に、宮地岳線の西鉄新宮~津屋崎の廃止が届け出られており、このまま行けば2007年の3月末日限りで廃止される可能性が高く、その区間については2006年9月が私にとって最後の機会となる可能性も高かったからです(実際に、そのようになりました)。

 貝塚駅の、宮地岳線のほうの改札口です。天神大牟田線には(一部の駅を除いて)自動改札機が導入されていますし、よかネットカードも使えたのですが、宮地岳線では使えません。そのため、津屋崎までの切符を買わなければなりません。

 最近では首都圏でも女性の駅員が増えているようですが、西鉄の場合は以前から宮地岳線などに女性の駅員がいます。もっとも、宮地岳線の場合は売店の店員を兼任しているような場合などが多いようです。そう言えば、まだ、西鉄電車で女性の運転士や車掌を見たことがないのですが(西鉄バスなら女性の運転手は多いのですが)、宮地岳線はワンマン運転ですので男性でも車掌はいないと思われます。

 先ほどの改札口と反対の方向を見ると、地下鉄貝塚駅の改札口があります。やろうと思えば線路をつなげることができそうです。地下鉄のほうは自動改札機があり、よかネットカードも使えます。6両編成ですがワンマン運転です。お客が少ないのは日曜日だから、というだけでもなさそうです。私が箱崎線に乗っていて、混んでいた例(ためし)がないからです。

 ちなみに、ここにはかつて福岡市内線の路面電車が来ていました。そもそも、宮地岳線の本来の起点は新博多でしたが、新博多~貝塚は福岡市内線に編入されており、貝塚起点になったのです。福岡市内線が廃止されたことにより、中途半端な路線になってしまいました。もし、新博多~貝塚を福岡市内線に編入していなければ、宮地岳線はもう少し発展したかもしれませんが、よくわかりません。新博多は、後に名を千鳥橋と改めており、現在の西鉄バス千代営業所にあったようです。川崎に帰ってから地図を読み、車で通ったことを思い出しました。御笠川に沿っていて、千鳥橋を渡って那の津通りを通れば天神や長浜に出られます。

 もうじき出発時刻です。この電車、313形に乗って津屋崎へ行きます。左に見えるのは地下鉄の線路ですが、車止めが置かれていて、宮地岳線にはつながっていません。そして、公園(?)があり、何故か飛行機が置かれています。

 先ほど、貝塚が起点であると記しました。たいていの本にそう書かれているからです。しかし、これから乗る津屋崎行は上り電車です。どう考えても下り電車に乗るようなものなのですが。

 津屋崎側の車両です。私はこちらの車両に乗りました。乗ってからわかったのですが、外見とは裏腹に、昔の国電や多くの路面電車のように低いモーター音が唸る吊り掛け駆動の電車でした。そのため、線路からの衝撃などをまともに受け、かなり揺れます。走っている間の吊り革の揺れ具合が何とも言えない雰囲気を出していました。なお、この電車が発車した時の乗車率は、私が見たところでは50パーセント弱という感じでした。

 宮地岳線は全線単線です。ここで折り返す電車が来なければ、津屋崎行が発車できません。その折り返し電車が到着しました。かつては天神大牟田線を走っていた600系で、線路の幅が違うために台車を履き替えて宮地岳線に移ってきたのでした。

 駅前の公園(?)です。貝塚駅の西側にあります。以前乗った時にも貝塚駅を利用していますし、車でもこの近所を何度か通っていますが、飛行機が置かれていることは知りませんでした。中に入れるかどうかまではわかりませんが(おそらく入れないでしょう)、いい遊び場にはなっているようです。

 さて、出発時間がやってきました。私は先頭車両のほうに乗りました。音といい揺れ具合といい、昭和時代の目蒲線や池上線を思い出させます。名島を通り、以前は名香野と称していた西鉄千早で最初の列車交換をします。最近になって鹿児島本線に駅ができ、宮地岳線も高架化されています。香椎宮前も高架駅です。この高架区間は、最近、西鉄香椎まで伸びました。西鉄香椎までは完全な住宅地ですが、この駅を過ぎると急に丘の掘割を通ったりします。西鉄香椎の次の香椎花園は、文字通り香椎花園の最寄駅で、すぐに遊園地が見えるのですが、夏休みが終わったとはいえ、お客が少ないのは気になりました。北九州市にあった到津遊園も、私が大分大学に在職していた時に閉園となっていますが、ここも西鉄が経営していました。

 宮地岳線は単線ですが、よく見ると、敷地は複線分が確保されているという区間が多いようです。複線化されていたらもう少しスピードアップしていただろうと思うのですが、西鉄のワンマン運転の仕方では、扉が閉まってから発車するまで、停車してから扉が 開くまで結構な時間を食います。

 しばらく、写真がありませんがお許し下さい。唐の原を出ると、しばらくしてJR香椎線の線路が寄り添ってきます。そして和白に到着します。ここでJR香椎線に乗り換えることができます。香椎線には一昨年の8月下旬、集中講義の中入りの日に乗りました(西戸崎から海ノ中道を通り、神宮皇后が応神天皇をお産みになった場所であるという宇美八幡宮に行きました)。現在は違う会社となっていますが、元々、宮地岳線と香椎線は同じ会社の路線で、いずれも博多湾鉄道汽船という会社が運営していました。戦時体制のために西日本鉄道に統合されたのですが、香椎線は後に国有化されました。

 和白の次が三苫で、福岡市はここまでです。ここで折り返す列車もあったくらいで、乗客はかなり減ります。次の西鉄新宮で数えたら、先頭車には私を含めて10人ほど、後の車両には4人か5人くらいしか乗っていません。

 西鉄新宮を発車し、古賀ゴルフ場前という無人駅を過ぎて西鉄古賀に到着したら、後の車両に乗っている客はいなくなりました。上の写真がその様子です。ワンマン運転ですから車掌はいません。従って、後の車両には、文字通り、誰も乗っていません。前の車両に乗っている客は、私を含めて8人になりました。


YouTube: 西鉄宮地岳線の西鉄古賀駅から花見駅まで

 西鉄古賀を発車し、かつては列車交換ができたことがホームの構造や敷地のスペースなどからわかる無人駅の花見では乗り降りがなく、交換駅でありながら無人駅である西鉄福間(JR鹿児島本線の福間駅にも近い)で客は私を含めて4人になりました。いかに日曜日の午後とはいえ、お客が少なすぎます。一応は福岡市内まで走っている路線で、貝塚から西鉄福間まで18.1キロメートルしか離れていないのですが、もっと離れているかのように思えてきました。

 西鉄福間駅を発車して、次が宮地岳駅です。写真は、その宮地岳駅のホームではなく、反対側を撮影したものです。

 線名にもなっている宮地岳駅は、終点の一つ手前にあり、やはり無人駅です。ここも、かつては列車交換ができました(ホームの形や敷地の広さなどですぐにわかります)。ついに、この宮地岳駅で、乗客は私を含めて2人になりました。私は、単に趣味的に乗っている神奈川県在住者、もう1人は、本格的な一眼レフなどを持ち歩いている、鉄道ファンかどこかの記者かフリージャーナリストかという風体の男性です。

 宮地岳線の沿線というのは、他の沿線とは比較し難い雰囲気を持っています。通勤路線なのかローカル線なのかわからないからです。住宅の多さなどからすれば、天神大牟田線の西鉄小郡~宮の陣、および試験場前~新栄町よりもよほど通勤路線らしいのですが、マンションなどがあってもどこかひなびた印象を与えるのです。すぐ近くに鹿児島本線が通っていますが、同線の筑前新宮駅や古賀駅、そして福間駅の周りであれば、新興住宅地という印象を当てます。宮地岳線の沿線のほうが、古い家も目立ちますし、田畑や空き地も目立ちます。とくにJRの福間駅と西鉄福間駅とは、あまりに歴然とした差があります。JRの福間駅は、特急などで通ったことしかないのですが立派な駅で、もちろん駅員もいます。しかし、西鉄福間駅は無人駅です。通り一本でつながっているので、差が目立つ訳です。

 貝塚を発車してから40分ほどでしょうか、終点の津屋崎に到着しました。降りたのは、私を含めて2人だけです。折り返しの列車に乗ろうとした客が1人だけいたのでしょうか。日曜日の午後、閑散とした駅でした。

 終点の津屋崎駅は、御覧のように小さな駅です。駅員がいますが、改札口の右側にある売店の店員を兼ねているような女性の駅員が1人か2人いるだけです。日曜日の午後、駅の周囲にはほとんど人がいません。一般的には、首都圏でも、平日より休日のほうが、鉄道の利用客は少ないものです。しかし、ここまで少ないと言葉を失います。まして、1時間ほど前までは天神にいたのですから。

 津屋崎は海水浴場としても知られています。私は、この後、海のほうに向かって歩きました。季節はずれの海水浴場も、結構オツなものです。

 なお、9月24日、宮地岳線の存続を求める会の方からメールをいただき、御教示などを賜ったことを記しておきます。

 

  (以上は2006年9月26日、第186回として掲載したものです。その後、2007年12月31日に、第188回および第189回と統合し、一部変更の上で、別室9として再掲載しました。2010年10月17日に別室8へ移行しましたが、2010年11月10日に掲載を終了しました。)


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