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ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

富山のポートラムが初めて利用客増 鳴り物入りのデビューから9年が経って

2015年05月05日 10時28分44秒 | 社会・経済

 おそらく富山版の記事であると思われますが、朝日新聞社が今日の3時付で「富山)ポートラム、初の利用者増 14年度、新幹線効果」(http://digital.asahi.com/articles/ASH4K533JH4KPUZB00T.html)として報じています。

 ポートラムは、厳密に言えば、富山ライトレールという会社が運営する富山駅北から岩瀬浜までの富山港線を走るTLR0600形電車の愛称ですが、記事では富山港線のこととして書かれています。元々は国鉄富山港線(富山~岩瀬浜)という路線で、さらに遡ると富岩鉄道→富山電気鉄道→富山地方鉄道という歴史を持っています。第二次世界大戦中、いくつかの私鉄が国に買収されましたが、富山港線もその一つでした。新潟県を除く北陸地方の国鉄(後にJR西日本)の路線では、非電化路線を除けば交流電化が一般的であり、七尾線が電化されるまでは唯一の直流電化路線でした。旧性能車の72系が活躍したことでも知られています(故宮脇俊三氏のデビュー作『時刻表2万キロ』にも登場します)。国鉄の分割民営化後はJR西日本の路線として存続していましたが、本数が少なく、平日の朝夕ラッシュ時に電車が走り、その他の時間帯にはディーゼルカーが走るなどの合理化が行われました。21世紀に入ってから、JR西日本は富山港線のLRT化を表明します。その結果、2004年に富山ライトレールが設立され、2006年3月1日、JR西日本の富山港線が廃止されます。同年4月29日、一部経路の変更を経て、富山ライトレールの富山港線が営業を開始しました。当時はかなり期待を持たれたようで、全国的にも大きく報じられました。鳴り物入りのデビューと表現してよい状態であったようです。

 LRTは路面電車の一種です。富山市には、既に富山地方鉄道富山市内軌道線という路面電車の路線があります。富山駅の高架化が実現されれば、富山港線と富山市内軌道線との直通運転が行われることとなっているようです。

 富山ライトレールの路線となってから、富山港線の利便性は高まったようです。しかし、乗客数などとなると慎重な評価を必要とするようです。開業年度である2006年には165万1730人を記録しましたが、これが最高の数字で、2012年には156万5680人、2013年度には151万4940人でした。単純に一日あたりの乗客数を算出すると、2006年度は4901人(4月29日~2007年3月31日として計算したため)、2012年度は約4289人(小数点以下を切り捨て)、2013年度は4150人(同)でした。よくわからないところもあるのですが、富山港線については一日あたり4000人の乗客数というのが目標または目処とされているようで、その点では健闘していると評価してよさそうです。

 但し、決算をみると一貫して赤字が続いているようで、2006年度でも営業損益で1億円以上の赤字、2013年度では鉄道事業の営業損失が6588万6369円、自動車事業の営業損失が5155万3321円、経常損失が1億1572万6777円となっています(富山ライトレールの公式サイトが公表している2013年度の貸借対照表および損益計算書によります)。

 このままでは2014年度の乗客数も減少するところとみられていましたが、153万610人となり、2013年度よりも1%ほど伸びました。3月14日に金沢まで延伸した北陸新幹線の影響によるものです。3月の乗客数は、2013年度(つまり、2014年3月)に12万3550人でしたが、2014年度(つまり、今年の3月)は14万6010人に増えました。同月としては過去最高ということです。

 この傾向が定着するのか、それとも一時的なもので終わるのかどうかは、まだわかりません。富山県は1世帯あたりの乗用車台数が1.709で、都道府県別で福井県に次ぎ2位です(神奈川県は45位、東京都は47位)。また、人口1人あたり乗用車台数が0.645で、都道府県別で群馬県、栃木県、茨城県に次ぎ4位です(神奈川県は45位、東京都は47位)。富山港線は富山市内のみを走るため、県内他市町村よりは公共交通機関にとって有利な条件を備えているかもしれませんが、厳しいことも事実でしょう。しかし、新幹線効果が富山市にも及び、公共交通機関の利用者数が増えることも考えられます。

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