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ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

運転士不足で減便ダイヤ まだまだ続く

2025年01月09日 00時00分00秒 | 社会・経済

 RKK(熊本放送)の2025年1月8日11時32分付「熊本電鉄 運転士不足で “2月から減便” 始発最大30分繰り下げ・終電最大55分繰り上げに」(https://newsdig.tbs.co.jp/articles/rkk/1653961?display=1)で知ったのですが、熊本電気鉄道のサイトに「『列車』ダイヤ改正のお知らせ(2025年2月3日)」(https://www.kumamotodentetsu.co.jp/news/202501072315.html)という記事が掲載されており、やはり2024年問題あるいは2023年問題は続いていると思いました。

 熊本電気鉄道の記事には「今回のダイヤ改正は、運転士の退職に伴い、現行ダイヤの維持が困難となったことから現行ダイヤから便数を減らしたダイヤでの運行を行う必要が生じたものです」と書かれています。RKKの記事にはもう少し詳しく書かれており、2024年に7人在籍していた常勤の運転士のうち、3人が今月と来月に相次いで退職するため、減便せざるをえなくなったということです。7人という数字も厳しいものと考えられるのですが、3月までには4人しかいない訳です。RKKの記事の書き方では非常勤の運転士がいるようにも読めるのですが、どうなのでしょうか(あまり聞いたことがないのですが)。熊本電気鉄道の記事によれば、3年ほど前から定数(これが何人かは不明です)を「下回る運転士での運行を行って参りました。その間、採用活動を行い補充を行うも採用した運転士を上回る離職者が発生し、慢性的な運転士不足の状態となっておりました」、「2024年12月に入り、新たに運転士からの退職の申し出があり、現行ダイヤの維持が難しくなったことを受けダイヤを改正する必要が生じたものです」とのことです。また、「例年2月に入ると通学のお客様の一定数が登校されなくなることを受け、ご利用のお客様への影響を最大限軽減する必要があることから、2月よりダイヤを改正するものです」とも記されています。おそらく、沿線にある大学(熊本大学、崇城大学、九州ルーテル学院大学)を念頭に置いているのでしょう。

 一方、熊本電気鉄道の記事には「現行ダイヤではコロナ禍以後、お客様の回復に合わせ慢性的な遅延が発生していることを受け、ダイヤの間隔に余裕を持たせることで適正な運行を目指し、列車の安全運行を更に向上させることも併せて行います」とも書かれています。

 その上で、2025年1月7日付で熊本電気鉄道のサイトに、熊本電気鉄道株式会社鉄道事業部名義の「『列車』のダイヤ改正について」(https://www.kumamotodentetsu.co.jp/news/uploads/eeabc6991fe61e22b63e05199bc2e8cf5381cf04.pdf)という文書(以下、文書とのみ記します)が掲載されており、内容が書かれています。全部を引用する訳にもいかないので、一部のみを紹介します。

 まず、藤崎宮前駅から御代志駅までの運行系統(厳密には、藤崎線全線と菊池線の北熊本駅から御代志駅までの区間)ですが、「朝ラッシュ時(6時30分~9時)と夕ラッシュ時(16時~20時)」については、現行の15分間隔から20分間隔に、「昼間(9時~16時)と夜間(20時~21時)」については、現行の30分間隔から40分間隔に変わります。

 次に、上熊本駅から北熊本駅までの運行系統(菊池線の残りの区間)ですが、こちらは終日、現行の30分間隔から40分間隔に変わります。但し、13時台のみ30分間隔が維持されます。これは「北熊本駅での接続列車調整のため、30分間隔」とのことです。

 始発電車、終電車については詳しく触れませんが、基本的には始発電車は繰り下げ、終電車は一部を除いて繰り上げです。

 やはり気になるのは運行本数です。次のようになります。

 平日(月曜日〜木曜日):159本から121本に減ります。

 金曜日:161本から121本に減ります。

 土曜日;148本から97本に減ります。

 日曜日・祝日:120本から91本に減ります。

 付け加えて、藤崎宮前駅から御代志駅までの運行時間も、現行の26分から31分に変わります。他方、上熊本駅から北熊本駅までの運行時間は9分のままです。

 さて、減便ダイヤが実施された後に、果たして増便されることはあるのでしょうか。文書には「現在、新たな運転士や運転士見習い者の募集を行っているものの、運転士の応募がなく、更に運転士見習い者が免許を取得するには 1 年以上の日数を要することから、当面の間は今回の新ダイヤの継続が必要と考えております。その後、運転士の補充が完了した場合には改めてダイヤの構成を検討するものです」と書かれています。熊本市周辺は、最近、豊肥本線の乗客増も増えたと報じられていますので、熊本電気鉄道の乗客も増えたのでしょうか。私が熊本電気鉄道を利用したのは一度か二度しかないので、詳しいことはわかりませんが、あまり乗客はいなかったと記憶しています。このブログには、2003年3月23日に上熊本駅で撮影した写真2011年8月8日に藤崎宮前駅で撮影した写真同日に上熊本駅で撮影した写真を掲載していますので、この両日に利用しているはずです。

 文書を読んで「?」と思ったのは、「今回の2月時点でのダイヤ改正に伴う減便によるお客様の積み残し等は発生しないと考えており、今年度中の代行バスの運行等、代替え輸送の予定はございません」と書かれている点です。先程の熊本電気鉄道の記事には、再び引用させていただくならば「現行ダイヤではコロナ禍以後、お客様の回復に合わせ慢性的な遅延が発生していることを受け、ダイヤの間隔に余裕を持たせることで適正な運行を目指し、列車の安全運行を更に向上させることも併せて行います」とも書かれています。「慢性的な遅延が発生している」ということは、積み残し等はないということでしょうか。また、減便ダイヤ実施後に積み残しはないとしても遅延はないのでしょうか。2月および3月は、大学の講義期間ではないので通学客は減るでしょう。ただ、4月以降はどうでしょうか。

 今回は熊本電気鉄道を取り上げましたが、既に他の私鉄で同様の減便ダイヤが実施されましたし、今後も生じる可能性が低くないものと思われます。

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名鉄広見線の新可児駅〜御嵩駅の区間の行く末は

2025年01月05日 00時00分00秒 | 社会・経済

 昨日(2025年1月4日)になってから知ったのですが、2024年12月12日19時40分付で、 NHKが「名鉄広見線の県内一部区間 名鉄が財政支援協定更新せず」(https://www3.nhk.or.jp/lnews/gifu/20241212/3080014776.html)として報じていました。

 名古屋鉄道、略して名鉄は、かつて日本で2番目に営業キロ数が長い私鉄でしたが、断続的に鉄道路線の廃止を行っており、現在は3番目の私鉄となっています(1番目が近鉄、2番目が東武)。その分、採算が合わない鉄道路線をたくさん抱えていると言えます。また、関東の大手私鉄を見慣れている者からすれば「何故?」、「本線でこんなに編成が短いの?」、「利便性が低いんじゃないの?」と首を傾げたくなるようなことも少なくありません(鉄道ファンの間でよく取り上げられる名鉄名古屋駅など、私に言わせれば利便性の低さを象徴している大規模駅です。私は何度か利用しましたが、これほどわかりにくくて面倒な駅は他にないと感じました。これではJR東海道本線を使うか自動車を運転するかのどちらかを選択したくなる気持ちも理解できます)。さらに言えば、日本の大手私鉄でもとくに無人駅が多いことも注目すべき点です。

 さて、現在、名鉄の中でも存廃問題の渦中にあるのが、広見線の新可児駅から御嵩駅までの区間です。同線は犬山駅から御嵩駅までの路線ですが、歴史的経緯によってスイッチバックとなっている新可児駅を境に、実質的には犬山駅から新可児駅までの区間と新可児駅から御嵩駅までの区間は別の路線と言ってもよいでしょう。やはり、末端区間が廃止の瀬戸際にあるということです。

 原因は様々でしょう。名鉄の路線網は、大手私鉄の中では飛び抜けて高度な自動車社会となっている地域にあります。また、名古屋市やその近郊は良いとして、その他の地域では人口減少が進んでいると考えられます。また、広見線の末端区間の場合、明智駅から分岐して八百津駅までの路線であった八百津線の廃止も理由になっているかもしれません。八百津線は、富士重工製のLE-Carの試運転が行われ、そのままLE-Carを使い続けていたほどの鉄道路線でしたから、相当の赤字路線であった訳ですが、それでも八百津線が廃止されることで広見線の新可児駅から明智駅までの区間の乗客も減少したことでしょう。

 ともあれ、新可児駅から御嵩駅までの区間は典型的な赤字ローカル線です。そのため、名鉄は沿線自治体(市町村としては可児市および御嵩町)から年間で1億円の財政支援を受けていました。これは2010年度以降、名鉄が可児市から年間3000万円、御嵩町から年間7000万円の財政支援を受けるという協定が結ばれていたためです。しかし、名鉄は、2024年夏に、2025年度限りでこの協定を更新しない旨を可児市および御嵩町に伝えていました。このことは、12月11日に開かれた御嵩町の定例議会で町長が明らかにしたのでした。

 名鉄が協定を更新しないと伝えたということは、おそらく、名鉄はこの区間を廃止する意向であるということでしょう。しかも、御嵩町に対して、仮に新可児駅から御嵩駅までの区間を維持とするならば、15年で17億6000万円という追加支援が必要であると説明していたらしいのです。

 それでは、今後の広見線の末端区間はどうすべきなのでしょうか。選択肢としては、上記NHK記事の表現を借りるならば「名鉄が土地や車両の所有権を保有したまま、沿線の自治体が維持管理費を負担する方式」とするか(これは現在とほぼ同じである、またはあまり変わらないと言えます)、上下分離方式を採用して鉄道路線として維持するのか、鉄道路線の存続を断念してバス路線化するか、ということになるでしょう。可児市と御嵩町の意向は鉄道路線の存続ということでしょうが、そうなると財政の問題が浮上します。住民の意向にもよりますが、維持しうるのでしょうか。名鉄は、2025年6月に結論を出すようです。

 困ったことに、名鉄には、存廃問題が他にもあります。西尾線の西尾駅から吉良吉田駅までの区間と蒲郡線の全線(吉良吉田駅から蒲郡駅まで)です。この付近では三河線の碧南駅から吉良吉田駅までの区間が2004年4月1日に廃止されており、鉄道離れが顕著だと感じさせる地域になっています。

 もう少し書きましょう。存廃論議にはなっていませんが、知多新線も失敗路線として話題になることもあり、今後、議論の対象となりうるのではないかと考えています。

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鉄道は通学需要の面からも見放されるか

2024年12月26日 07時00分00秒 | 社会・経済

 JR東日本にも赤字の鉄道路線は多く存在します。関東地方、甲信越地方および東北地方に路線網を拡げるJR東日本ですから、或る意味では当然のことでもあります。ただ、ここに来て極端なくらいに輸送密度が低い路線が増えており、いわゆる内部補助によってどうにかできるような状況ではなくなっています。

 今回は、北関東の群馬県の話です。朝日新聞社が2024年12月25日10時45分付で「JR吾妻線に並行バス運行なら…高校生ら『利用』7割超 検討会議」(https://www.asahi.com/articles/ASSDS41TTSDSUHNB001M.html)として報じており、「これはもしや?」と思わされたので、紹介しておきます。

 吾妻線は、上越線の渋川駅から嬬恋村の大前駅まで、55.3kmの路線です。JR東日本が公表している「路線別ご利用状況(2019~2023年度)」によると、渋川駅から長野原草津口駅までの区間の平均通過人員は1987年度に4506人/日であったのが2023年度に2468人/日まで落ちており、長野原草津口駅から大前駅までの区間の平均通過人員は1987年度に791人/日であったのが2023年度に260人/日となっています。つまり、2023年度の平均通過人員は、渋川駅から長野原草津口駅までの区間で1987年度の約59%、長野原草津口駅から大前駅までの区間で1987年度の約33%にすぎないということになります。少子高齢化、人口減少が大きな要因ではあるものの、それだけはないでしょう。

 JR東日本は「ご利用の少ない線区の経営情報(2023年度分)の開示について」も公表しています。吾妻線については長野原草津口駅から大前駅までの区間しか掲載されていませんが(平均通過人員が2000人/日未満の路線・区間を対象としているためです)、それを見ると、かなり厳しい数字が並んでいます。2023年度については、次の通りです。

 運賃収入:1700万円。

 営業費用:5億1200万円。

 収支:4億9400万円の赤字。

 営業係数:2870円。

 収支率:3.5%。

 こうした状況では、JR東日本も存続か廃止かを決定せざるをえないということになるでしょう。

 問題の長野原草津口駅から大前駅までの区間について、JR東日本の高崎支社が、2024年12月24日、長野原町役場で検討会議を開いたそうです。この検討会議の場で、高校生およびその家族を対象としたアンケート調査の結果が報告されました。何故、対象者が高校生およびその家族かというと、この区間の主な利用者は高校生であり、およそ8割を占めているからです。つまり、他のローカル線と変わらない訳です。

 アンケート調査は、今年の7月から8月にかけて「JR吾妻線(長野原草津口・大前間)沿線地域交通検討会議」が実施したもので、長野原町および嬬恋村に居住する高校生およそ330人およびその家族、県立長野原高校および県立嬬恋高校の在校生およそ80人およびその家族に対して、利用状況、および別の交通手段の利用意向などを尋ねています。

 回答率が低く、高校生146人で36%、家族177人で44%にすぎませんが、参考にはなります。主な交通手段は高校生の約8割(回答者の約8割ということでしょう)が鉄道であり、しかも通学に2時間以上をかけている生徒が半数以上になっていました。

 このアンケートには、仮に長野原草津口駅から中之条駅や渋川駅までをノンストップで結ぶバスが運行されたら利用するか、という趣旨の設問が入っていたようです。すると「回答者の7割以上が利用する意向を示したことが明らかになった」とのことでした。もう少し厳密に言えば、是非とも利用したい、あるいは「ちょうど良い時間に運行していれば利用してみたい」という回答を合わせると7割以上であったということです。是非とも利用したいという回答と「ちょうど良い時間に運行していれば利用してみたい」という回答は、毛色が多少とも違うのではないかと思われるのですが、いかがでしょうか。

 また、検討会議は長野原草津口駅から大前駅までの区間について検討する場のはずですが、何故に長野原草津口駅から中之条駅や渋川駅までをノンストップで結ぶバスを想定し、質問したのでしょうか。意図がわからないという部分もあるのですが、長野原草津口駅から大前駅までの区間が、通勤需要どころか通学需要の面からも見放されているからでしょうか。少なくとも、同区間の廃止が前提となっていなければ、渋川駅から長野原草津口駅までの区間についてノンストップのバスを走らせることなど想定しないでしょう。場合によっては吾妻線の全区間を検討の対象とするのでしょうか。記事には「アンケート結果を受けて、今後は作業部会を設けて交通体系のあり方を協議することになった」と書かれていますので、気になるところです。

 もっとも、一つの記事だけではわからないのも当然のことです。注意しなければならない点は多いでしょう。ただ、事情によっては、鉄道路線が高校生の通学需要に合わない、あるいは需要から外されているということなのかもしれません。

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錦川鉄道錦川清流線の存廃論議はどうなるか

2024年12月06日 20時30分00秒 | 社会・経済

 1980年代の国鉄改革で特定地方交通線が指定され、廃止が議論されました。この時は、住民などの意見に流されず、比較的に徹底して廃止が行われました。ただ、少し甘いとも考えられました。第三セクター化による存続の方法が残されていた上に、除外要件もあったからです。俎上に上がった路線の全てを完全に廃止していれば、現在も再び存廃論議になることはなかったでしょう。もとより、日本全体で人口が減少しているので他の鉄道路線の多くについても存廃論議の対象になったでしょうが、今ほど少なくはなかったはずです。

 このブログで錦川鉄道錦川清流線の話題を取り上げたのは、2023年9月9日7時0分0秒のことです。それから1年以上が経過し、2024年11月29日10時30分付でに朝日新聞社が「岩国・三セク錦川鉄道の清流線 存廃どうなる 沿線住民は『存続を』」(https://digital.asahi.com/articles/ASSCX3R1XSCXTZNB019M.html)として報じていました。月が変わってから気付きました。

 さて、2023年9月の時点においては、錦川鉄道錦川清流線の存廃を2024年度中に岩国市長が決定する旨が報じられていましたが、1年延びたのでしょうか。上記朝日新聞社記事によると、2024年度末に報告書がまとまり、2025年度に結論を出すとのことです。

 岩国市は、2023年5月から錦川鉄道錦川清流線の在り方を見直すことにして検討プロジェクトチームを設置しました(副市長がトップに立っているとのことです)。また、有識者会議も設置しており、2024年11月14日の有識者会議(第3回)において市が具体案を示したのでした。

 その具体案は、一部を上記朝日新聞社記事の表現を借りるならば、①現状維持、②「鉄道の運行・管理方法を見直して全線を存続させる」、③「路線の一部をバスに代替させて存続させる」、④完全バス路線化です。

 岩国市は、廃線ありきではないという立場を採ると言っていますが、これは表面的な態度なのでしょうか。錦川鉄道の経営状況も悪いでしょうし、岩国市の財政状況も悪いはずで、第三セクターが地方公共団体の懐に悪影響を及ぼしかねないことは、いくつかの住民訴訟が提起されたことからしても明らかです。1988年度の輸送人員が584,170人であったのに対し、2023年度の輸送人員は130,643人でした。つまり、2023年度の輸送人員は1988年の輸送人員の約22.4%でしかないということです。過疎化、少子化、自家用車社会化という御馴染みのセットで、一度も黒字になったことがなく、鉄道経営対策事業基金の取り崩しで何とか維持されているという状況ですが、その基金の残高も錦川鉄道設立時には6億6190万円であったのが、2023年度には3378万9千円にまで減りました。つまり、2023年度の残高は当初残高の5.1%にまで減った訳です。赤字額も2017年度に1億円を超えており、さらに岩国市が過疎債を起債しています。これでは廃止が検討されてもおかしくありません。

 上記朝日新聞社記事には、住民アンケートのことが書かれています。中学生以上4500人を対象としており、回答は2086人、率は46.4%でした。

 このような記事を読む度に思うのですが、住民アンケートにどの程度の意味があるのでしょうか。むしろ有害にしか思えません。

 理由は簡単です。存続を求めることが多数となるからです。また、設問の仕方によって回答は変わりうるものですし、回答者の住所などにも左右されます。例えば駅から半径500メートル以内に住む人と、半径3キロメートル超に住む人とでは、利用の頻度なども変わってきます。

 アンケートで存続を求める意見が多かったとしても、実際に利用する人が一定の水準を超えなければ、存続する意味はありません。

 よくあることで、私が最も憤りを感じるのが、次のような住民の意見あるいは態度です。

 自分は乗らない(利用しない)けれど、鉄道路線は必要である。

 無責任以外の何物でもありません。自分にとって要らないのであれば、素直に廃止を選択しなさい。

 こと鉄道路線の存廃については、住民アンケートを行わず、客観的なデータだけで決定する。住民や鉄道ファンの意見に流されず、むしろ存続を求める意見ほど当てにならないものはないことを常に念頭に置く。

 これこそ基本線にすべきことです。

 また、上記のアンケートでは、回答率が半数に達していないことにも注意を向ける必要があります。

 アンケートの回答では、存続を求めるとする人が50.8%、廃止もやむをえないとする人が49.2%だったそうです。拮抗しているとしか言いようがないのですが、46.4%の中の50.8%と49.2%であるということを忘れてはなりません。結局、アンケート対象者全体からすれば、存続を求める意見は23.5%、廃止もやむをえないとする意見は22.8%、その他は無回答なのです。せいぜい参考意見程度にすぎないことがわかります。

 そして、岩国市には、全体的な交通政策の見通しを立てることが求められるでしょう。その際、錦川清流線を抜きにして検討することも必要になります。大正時代の鉄道敷設法、赤字83線、特定地方交通線。この三つの要件が錦川鉄道錦川清流線に揃っています。『鉄道ほとんど不要論』(中央経済社)という本において、福井義高教授は、1980年代の時点で赤字ローカル線は全て廃止すべきであったと記しています。2023年には極論と考えていましたが、2024年12月においては極論ではなく、全ての路線に妥当する訳ではないものの、多くの路線について正論であると認めざるをえません。

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弘南鉄道大鰐線の廃止は確定のようです

2024年11月28日 02時00分00秒 | 社会・経済

 昨日(2024年11月27日)の19時50分0秒付で「久留里線と大鰐線(メインは大鰐線)」を掲載しましたが、今回は続編です。

 やはり、大鰐線の廃止は事実上決まったようです。東奥日報社が昨日付で「弘南鉄道大鰐線廃線へ/27年度末で運行休止」として報じているのですが、全文を読むには会員登録が必要な記事でしたので、仕方がなく、Yahoo! Japan Newsに掲載された同タイトルの記事を参照しておきます。

 弘南鉄道が昨日の協議会(非公式の会合であったようです)において表明した大鰐線の運行休止の方針は、やはり廃止の方針と同じことであったようで、沿線自治体である弘前市および大鰐町のほうから異論は出されなかったとのことです。2027年度末で運行休止としたのは、2025年の春に高校に入学する生徒たちが卒業するまで交通手段を確保したいからとも表明されています。大鰐線には弘高下駅、弘前学院大学前駅、聖愛中高前駅および義塾高校前駅と、学校名に由来する駅名が4つもあるからでしょう。

 ただ、2028年3月まで維持できるのかという疑問は残ります。弘南鉄道の本線級路線である、というより本来の弘南鉄道の路線である弘南線でも輸送人員が減少し、赤字を計上するようになっています。弘南線の営業状況が良くなるのであれば大鰐線の維持も可能かもしれませんが、それも大鰐線次第であることに変わりがありません。実際、弘南鉄道の社長はCOVID-19の勢いが減っても利用客が戻らなかった旨を述べています。既にモータリゼイションが進行している地域ですから、公共交通機関から自家用車や自転車にシフトしていてもおかしくありません。

 東奥日報社記事によると、大鰐線の利用客は1974年度がピークで390万人ほどでしたが、2023年度には27万1777人でした。つまり、2023年度の利用客は1974年度の約7%しかいないということです。また、非常に乱暴な計算ではありますが、2023年度の利用客を単純に365日で割ると、1日あたりで744.6人しか利用していないということになります。これでは、廃止もやむをえないでしょう。

 気になる赤字額は、2023年度で1億3068万円でした。この数字は、沿線自治体からの支援の存続のための条件を満たしていないものです。このブログでは詳細がわからなかったので記さなかったのですが、2020年に沿線自治体などが維持活性化のための基本方針を定めていました。それによると「2023年度末の営業成績で中長期計画に基づく収支改善がなされない場合、支援は2025年度までとする」となっていたそうです(東奥日報社記事およびYahoo! Japan News記事によります)。とりあえず、2025年度までは沿線自治体が支援するということですが、2026年度および2027年度については未定ですが、弘前市および大鰐町は支援を決定するかもしれません。ただ、市議会および町議会では議論が行われることでしょう。休止の時期が早まる可能性も否定できません。

 私にとってまだよくわからないのは、2027年度末で休止し、その後に廃止に向けた手続を進めるとしていることです。何らかの理由なり事情なりがあるのでしょう。休止予定日まであと3年以上もありますし、休止した後の再開も考えられていないようですから、2027年度末で廃止、より正確には2028年4月1日廃止としてもよいように思われるのです。あるいは冬季の輸送手段としての意義も考慮されているのかもしれませんが、わざわざ休止期間を置く必要もないのではないでしょうか。

 いずれにしても、東北地方から、また、一つの私鉄の路線が消滅することとなります。

 やはり、東急東横線や田園都市線に馴染んでいる私としては、弘南鉄道を走っている初代東急7000系を見に行こうか、などと考えました。10年程前には福島交通飯坂線で初代東急7000系に乗りましたし、5年前には養老鉄道養老線で初代東急7000系の改造車である東急7700系に乗っています。

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久留里線と大鰐線(メインは大鰐線)

2024年11月27日 19時50分00秒 | 社会・経済

 今日は三題噺ならぬ二題噺です。二題ともこのブログで取り上げたことがあります。

 まずはJR東日本の久留里線です。2024年11月27日、つまり今日、JR東日本千葉支社長が記者会見の場で例の久留里線の末端区間について発表しました。内容は「鉄道運行を取りやめる方針」であり、「今後、バスなど新たな交通体系への移行について市と協議する」とのことです(共同通信社が今日の15時41分付で報じた「JR東日本、久留里線の一部廃線発表 久留里~上総亀山間―バスなどへ移行協議」より)。但し、あくまでも方針を発表したのであり、廃止の時期などについては明言されなかったようです。実際のところ、明確な時期を示すことは無理でしょう。

 もう一つ、私にとってはこちらのほうが驚きでもあり、実は容易に予想されたことでもありましたが、弘南鉄道の大鰐線です。東奥日報社が今日付で「弘南鉄道、大鰐線を27年度末で運行休止の意向」として報じています。速報扱いですので短いですが、今日、弘前市役所で沿線市町村側との協議会が開かれたとのことです。2027年度末で運行休止する意向の理由として「物価高騰や人員不足で、収支改善が見込めない」ことがあげられています。こちらのほうも、弘南鉄道が一方的に決めるという訳にも行かないでしょう。そのため、もしかしたら運行休止にならないかもしれませんが、現在の大鰐線の状況からすれば、せいぜい、運行休止の時期がずれるくらいでしょう。

 むしろ、よくぞここまで延命したものだと思います。元々は弘前電気鉄道という会社によって運行されていた路線ですが、1960年代に廃止の危機に見舞われ、結局、弘前電気鉄道が解散し、大鰐線は弘南鉄道の手に渡ります。救済というところでしょうか。しかし、あまり儲かる路線でもなく、乗客も少なかったのか、弘南線と比較してもあまりに古すぎて見劣りする車両ばかりが走っていたくらいで、黒字になったことは一度もなかったとのことでした。弘南線が黒字であったから続けられたという訳でしょう。もっとも、弘南鉄道は国鉄の赤字ローカル線であった黒石線を引き受けて運行していましたが、この路線を1990年代に廃止させています。内部補助の限界に達した可能性もありますし、そもそも電化線と非電化線との違いなども理由として考えられるでしょう。

 私が知る限りですが、21世紀に入ってから、まず2013年6月27日、弘南鉄道の株主総会において大鰐線廃止の方針(のようなもの)が弘南鉄道社長から発せられました。このことについては「弘南鉄道の大鰐線が廃止されるか」(2031年6月30日15時8分8秒付)において取り上げました。株主総会の議題にも入っておらず、総会の冒頭における挨拶で述べられたので、会社として正式に決定した方針ではないということにはなりますが、どう考えても会社としての検討事項が公表されたと考えるべきでしょう。ただ、2016年度末、つまり2017年3月末に廃止という方向性も示されたことが周囲の反発を受けた可能性もあります。

 その後、2020年に沿線自治体(弘前市、平川市、黒石市、田舎館村および大鰐町)が弘南鉄道に対して2019年度および2020年度における経常損益の赤字分の全額補塡を行う方針を固めたと報じられました。このことは「鉄道関係二題」(2020年2月15日11時35分0秒付)で取り上げています。弘南線は2016年度まで黒字でしたが、2017年度から赤字が続いていたのでした。なお、「弘南鉄道への財政支援/JR北海道への支援策」(2021年1月25日0時0分0秒)も御覧ください。

 そして2024年2月28日、弘前市議会で大鰐線の廃止を求める発言が相次いだと報じられました。これについては「弘南鉄道大鰐線の廃止を求める声が」(2024年3月4日20時30分0秒付)で取り上げました。その記事で私は次のように述べました。

 「大鰐線の廃止は現実的に最も大きな選択肢であると思われます。この路線は、起点の大鰐駅から義塾高校前駅までJR奥羽本線と完全に並行しており、義塾高校前駅から中央弘前駅まではJR奥羽本線から少し離れた所を走っているものの、並行路線と言えます。また、終点の弘前中央駅は大鰐線のみの駅であり、弘南線の起点でもある弘前駅から1キロメートル以上離れています。弘南鉄道の路線となる前に廃止の議論が出ており、しかもその原因の一つが弘南バスとの競争に敗れたことという歴史を考えると、存続してきたことが一つの驚異とも言えます。」

 こうした流れを見ていけば、2027年度末、つまり2028年3月末で運行休止という選択も理解できます。むしろ、もう少し早めるほうがよいとも考えられます。下手な延命では傷もふさがらず、出血が続くでしょう。

 また、運行休止という表現に引っかかる方もおられるでしょう。おそらく、弘前市および大鰐町の住民などからの反発を予想して、廃止ではなく運行休止としたのでしょう。しかし、弘前市議会での動きなどを見ると、弘前市で大鰐線の廃止に反対する声は出るとしても大きくならないでしょうし、普段利用もしない人が廃止に反対する資格などありません。はっきりと廃止と表明すべきでしょう。遅きに失したとも言いうるからです。

 休止と言えば、同じ青森県に南部縦貫鉄道の例があります。野辺地駅〜七戸駅の南部縦貫鉄道線は、1997年に運行を休止しました。直接の理由は、野辺地駅〜西千曳駅の区間の路盤でした。ここは元々が東北本線であった区間であり、千曳駅の移転に伴って南部縦貫鉄道が国鉄から借り入れていたのです。JR東日本発足後も同様でしたが、1995年12月、当時の国鉄清算事業団はこの路盤の買い取りを南部縦貫鉄道に要請しました。これが南部縦貫鉄道にとっては大きすぎる負担であるということで、1997年5月の連休明けから南部縦貫鉄道線は運行休止となりました。その後、南部縦貫鉄道線はこの路盤を購入したそうです。しかし、休止の間に南部縦貫鉄道線全線の鉄道施設が荒廃してしまったようで、復活運転をするには多額の費用がかかるということで、結局2002年8月1日に廃止されてしまいました。

 弘南鉄道大鰐線が実際に運行休止するとなると、直接の理由は南部縦貫鉄道と異なりますが、結末は同様になるでしょう。つまり、休止が始まってから何の維持管理もなされなければ鉄道施設は(おそらく短期間で)荒廃してしまう訳です。そうなったら、営業を再開するにしても莫大な費用がかかることになります。まして、大鰐線の場合、2023年8月に脱線事故が発生し、同年9月25日には線路の不具合を理由として弘南線とともに運休が始まりました。元々路盤がよくないという可能性もあります。少なくとも線路規格はJR奥羽本線よりも格段に落ちるでしょう。無期限の運行休止ということであれば、とりもなおさず廃止ということです。

 今後、事態がどのように展開するかをみていく必要がありますが、大鰐線の運行休止あるいは廃止は、時間の問題でしょう。初代東急7000系が今でも運転されているので、見に行ってみたいとは思っていますが……。

 

 最後に。時代遅れのリニア新幹線と全国新幹線整備計画は一刻も早く廃止すべきです。北陸新幹線と西九州新幹線がいつまで経っても全通の見込みがないという無様さなのに、四国新幹線だの何だのと狂気の沙汰です。北陸新幹線の敦賀駅から新大阪駅までの区間やリニア新幹線を早く建設して開通させろという鉄道ファンもいますが、「何を考えているのやら」と言いたいところです。筒井康隆さんのエッセイ集のタイトルではないけれど「狂気の沙汰も金次第」なのでしょうか。

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烏山線の話

2024年11月24日 00時00分00秒 | 社会・経済

 栃木県といえば、宇都宮ライトレールによるLRTの隆盛が最近の明るい話題と評価できるでしょうが、勿論、公共交通機関の状況が全県で良好という訳ではありません。

 同県におけるJR東日本の鉄道路線は、東北新幹線の他、東北本線、日光線、両毛線、水戸線および烏山線です。このうち、東北本線、両毛線および水戸線が幹線に、日光線および烏山線が地方交通線に分類されています。とくに烏山線は、県内のJR路線では唯一の非電化路線であるとともに(但し、電車が走っています。後に述べます)、1960年の時点で廃止が提言され、1960年代後半には赤字83線に指定されたほどです。しかし、それほど営業係数などが悪くなかったということなのか、以後は特定地方交通線に指定されることもなく、存続しています。

 そうは言っても、輸送人員が多いという訳でもなく、JR東日本が2024年10月29日付で発表した「ご利用の少ない線区の経営情報(2023年度分)の開示について」によると、烏山線(宝積寺〜烏山)の状況は次の通りです。

 運賃収入:6200万円

 営業費用:7億8900万円

 収支:7億2700万円の赤字

 営業係数:1265円

 収支率:7.9%

 1987年度の平均通過人員:2559

 2023年度の平均通過人員:1144

 1987年度の平均通過人員と2023年度の平均通過人員とを比較した場合の増減率:55%減

 平均通過人員の増減率が−90%以上となっている路線(奥羽本線の新庄〜湯沢が93%減、久留里線の久留里〜上総亀山が92%減、飯山線の戸狩野沢温泉~津南が90%減 )もあり、減少率が80%台や70%台となっている路線・区間も少なくないことからすれば、烏山線は健闘していると言えるかもしれません。ただ、赤字額は大きく、営業係数も4桁となっています。しかも、赤字額が2022年度より9300万円ほど増えていますし、営業係数も2022年度より悪くなっています。ただし、平均通過人員は2022年度より24人増えているそうです。

 そこで、沿線自治体である那須烏山市(鴻野山駅、大金駅、小塙駅、滝駅および烏山駅の所在地)は、乗客の増加に向けての取り組みを行っています。朝日新聞社2024年11月23日10時45分付記事「JR烏山線、23年度は7億2700万円の赤字 地元は乗客増へ催し」(https://www.asahi.com/articles/ASSCQ3R53SCQUUHB00HM.html)によると、那須烏山市は2023年秋には烏山線全線開業100周年記念イベントを実施しており、「利用客への助成金制度もつくった。小学生から高校生までを対象に通学定期券の料金の4分の1を補助したり、市民3人以上で利用すると運賃を全額補助したり。市はこうした取り組みが増客に奏功したとみる」とのことです。助成金制度がどの程度まで乗客増に貢献したかは検討の対象となるでしょうが、何もしないよりはよいということです。とくに、烏山線の場合、ほとんどの列車が宇都宮駅から烏山駅までの運行となっているため、那須烏山市の住民にとって同線は通勤通学のための重要手段であるということです。

 また、那須烏山市は、2024年6月に市長を委員長とするJR烏山線利用向上委員会を設置しており、11月8日に開かれた委員会では「助成金制度の条件を緩和して通勤定期券も対象にする案や、車両に自転車を持ち込める『サイクルトレイン』の導入案などを検討していくことが決まった」とのことです。

 私が気になるのは、烏山線で運行されているEV-E301系(通称ACCUM)という、蓄電池駆動電車です。これは、電化区間(東北本線)ではパンタグラフを上げて架線から集電し、非電化区間(烏山線)ではパンタグラフを下げて蓄電池でモーターを回して運行するというものです。ディーゼル車よりは環境に優しいと言えるかもしれませんが、現在のところ、電気自動車と同じで走行可能距離が短く、烏山駅には充電のための架線が張られているそうです。一体、どの程度の費用がかかるのか、気になっているのです。世界的には蓄電池駆動電車の例が増えているかもしれませんが、日本では、最初に営業運転を開始した烏山線の他、筑豊本線(とくに若松線という通称がある若松〜折尾)、男鹿線(但し、奥羽本線の秋田駅まで直通運転)および香椎線でのみ運行されています。第三セクターの鉄道では導入例がないことからしても、それなりのコストがかかるのではないでしょうか。那須烏山市は、JR東日本の協力を得ながらACCUM運行のための費用と効果との関係を調査する必要があると考えられます。

 

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南武線などで2025年春からワンマン運転開始

2024年11月07日 00時00分00秒 | 社会・経済

 以前から知っていた話ではありますが、共同通信社が2024年11月6日17時05分付で「常磐線、来春からワンマン運転 南武線も、JR東が省力化実現」(https://nordot.app/1226805176662900858)として報じていました。

 JR東日本が11月6日に正式に発表したことで、南武線の川崎駅から立川駅までの区間(どうして共同通信社は起点と終点を逆に書いているのでしょうか? 誰が考えても東海道本線の古い駅を起点にするでしょう。裏街道が起点で表街道が終点だって?)、常磐線の各駅停車が運行される綾瀬駅から取手駅までの区間において、2025年春からワンマン運転を開始するということです。

 南武線の浜川崎支線、すなわち尻手駅から浜川崎駅までの区間では、既にワンマン運転が行われています。これに対し、川崎駅から立川駅までの区間は、とくに川崎市内で混雑度も高く、本数も多いので、その割にはホームドアの設置率も高くないので、ワンマン運転を開始しようとすることには不安もあるのですが、省力化の動きは止められないということでしょう。今後、乗務員を確保することが難しくなることは確実であるためです。首都圏では今後予測される人員不足に対処するためのワンマン運転が広がっており、東京メトロ丸ノ内線などが代表例としてあげられるでしょう。

 東京メトロ、都営地下鉄、東急、横浜高速鉄道みなとみらい線で行われているワンマン運転では、ATO(自動列車運転装置)またはTASC(定位置停止装置)を採用しています。こうした路線で運行されている電車の運転席にはモニターが設置されています。JR東日本でもこうした仕様にするようです(ただ、ATSがベースになると思われます)。

 ワンマン運転は、今後も導入されるようです。2026年には横浜線(東神奈川駅から八王子駅まで)および根岸線(横浜駅から大船駅まで。但し、横浜線直通列車のみのようです)、2030年までには山手線、京浜東北線+根岸線、中央本線各駅停車+総武本線各駅停車、埼京線+川越線で実施される方向とのことです。

 ちなみに、私鉄でまだワンマン運転が行われていないところもあり、大手私鉄では小田急、相鉄および京浜急行の3社となっています。

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美祢線の復旧は困難か、本音は廃止か?

2024年11月02日 23時10分00秒 | 社会・経済

 平成筑豊鉄道の話を昨日(2024年11月1日)に取り上げましたが、同じ日にJR西日本美祢線に関する記事も朝日新聞社のサイトに掲載されていました。「美祢線復旧後の運営方式めぐり JR西、自治体と共同参画『不可欠』」(https://www.asahi.com/articles/ASSB03QQFSB0TZNB00FM.html?iref=pc_preftop_yamaguchi)です。

 10月31日に山陽小野田市で美祢線利用促進協議会の部会が開かれました。その席で、JR西日本は、美祢線を復旧するならば上下分離方式が不可欠という考え方を示しました。

 昨今の鉄道事情に多少とも関心のある方であれば「やはり」と納得されることでしょう。JR西日本は、美祢線を単独で鉄道路線として復旧し、運行することは困難であるという態度を既に示しています。また、部会において、JR西日本は同社単独で維持して運行を続ける際の経費などを明らかにしていません。これは、上下分離方式でなければ美祢線を捨てる、つまり廃線にするということを意味するものと考えて間違いないでしょう。

 強気な沿線自治体ならば、JR西日本に対して「あんたはタカリ屋か?」と尋ねるでしょう。「いい加減にしろ! ふざけるな!!」と、多少は態度を荒げてもよいでしょう。こういう自治体が一つでも二つでも出てくれることが望ましいとも思うのですが、いかがでしょうか。大なり小なり、鉄道会社にはこういう気質があるように思われますし、「走らせてやってるんだぞ!」という意識が行動などに見え隠れしています(昔の国鉄について度々指摘されていたことでもあります)。

 JR西日本は、次のような試算を示しました。意味がわからないところがあるので、上記朝日新聞社記事をそのまま引用しますと「同社単独で復旧させる場合では、自治体は4億円を負担するのに対し、上下分離方式を前提に復旧させる場合には、自治体の負担額は5.3億円に膨らむ」とのことです。何のことはない、JR西日本単独では復旧できないか復旧する意思がないということです(その後の維持管理はJR西日本が行うということでしょうが)。沿線自治体の費用が4億円か5億3000万円というのは、果たして適正な算定なのかという問題もありますし、取りも直さず財政規模に比して額が大きすぎるとも言えるでしょう。

 また、同社の試算には続きがあり、上下分離方式を作用した場合の1年あたりの維持費は、JR西日本が2億5000万円、自治体が3億円以上とのことです。思い切ってJR西日本から美祢線を分離したほうがよいのではないかとすら思えてきますが、どうなのでしょうか。

 美祢線の被害状況は甚大であり、復旧工事には5年程度が必要であり、第6厚狭川橋梁(正式な名称かどうかわかりません)の改築などが必要であるために少なくとも58億円が必要とのことです。1980年代に幹線に指定された理由でもある貨物輸送が現在も行われていれば、莫大な費用をかけてでも復旧する意味はありますが、その貨物輸送はほぼゼロです。ちなみに、10月29日にJR西日本は「利用者が特に少ないローカル線の2021〜23年度の平均収支」を発表しており、「美祢線は年度平均で4.3億円の赤字」であるとともに、同線の収支率(費用に対する収入の割合)は10.9%であったとのことです。

 上記朝日新聞社記事によれば、「JR西は部会で、『利便性と持続可能性を確保した地域公共交通の復旧は必要だ』と強調した」とのことです。JR西日本ではなく沿線自治体の台詞なのではないかとも疑ったのですが、JR西日本が代行バスを運行しているようなので、JR西日本の台詞だったのでしょう。

 なお、今年12月には、代行バスについて、利用者や沿線住民を対象としたアンケート調査を行うことになるようです。その結果次第では、鉄道復旧は断念されるでしょう。

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平成筑豊鉄道に関して法定協議会が設置されるか

2024年11月01日 12時30分00秒 | 社会・経済

 平成筑豊鉄道が地域公共交通活性化再生法に基づく法定協議会の設置を要請したと報じられたのは、今年(2024年)の6月29日のことでした。それから4か月ほど経過して、平成筑豊鉄道の沿線自治体9市町村の首長が、昨日(2024年10月31日)、福岡県に対して法定協議会の設置を要請しました。朝日新聞社が、今日(2024年11月1日)の10時30分付で「平筑の今後を検討『法定協』設置へ 沿線自治体が県に要請」(https://digital.asahi.com/articles/ASSB04RXFSB0TIPE003M.html)として報じています。

 「ついに動いた」ということでしょうか。今年も平成筑豊鉄道は3億4000億円の経営安定化助成金の交付を受けているのですが、同鉄道が2億5000万円の追加支援を打診していました。しかし、9市町村がどのように対応するかが問われていました。助成金(補助金)の交付額は増加の一途となっていますので、とりもなおさず、平成筑豊鉄道の経営は危機的状況にあるということです。

 そこで、沿線9市町村(本社のある福智町、直方市、田川市、行橋市など)が法定協議会の設置を福岡県に要請したということなのです。これからも助成金(補助金)の増額が続くことが確実であるということからでしょう。田川市長が福岡県知事に「地域公共交通活性化再生法に基づく法定協の設置や地域公共交通計画の作成を求める要請書を」手渡しており、福岡県知事も「設置に向けて動く意向を示した」とのことです。平成筑豊鉄道に福岡県も出資している以上、当然と言えるでしょう。また、「設置されると、バスの運行実験など、新たな交通網整備を想定した調査などに国の補助金を利用できる。参加自治体は協議に応じ、結果を尊重することが求められる」ので、今後の動きが気になるところです。

 法定協議会が設置されるならば、存続するのか廃止されるのかが議論されることになりますが、JR西日本芸備線と異なり、存続一本槍とはならないと思われます。実際、上記朝日新聞社記事によると「現状からの変更案としては、①路線バス②バス高速輸送システム(BRT)③鉄道上下分離、の3案を中心に検討が進む見通しだ」とのことで、少なくとも現状維持は難しいのでないかと考えられます。もっとも、北陸鉄道石川線のように消極的選択として現状維持もありうるのですが、そうなれば9市町村の負担は増えるだけで、財政にも影響が出てくる可能性があります。「現状からの変更案」のいずれを選んでも最善の選択肢と言いうるかどうかはわかりませんので「どれを取っても……」ということになりかねません。

 一方、9市町村を通るということで、それぞれの市町村によって態度が異なるということもありえます。実際、上記朝日新聞社記事によると「沿線では、平成筑豊鉄道が観光の鍵となっている自治体もあり、鉄道存続の是非は自治体によって温度差が大きい」ようです。具体的に何処の市町村で、何線のことかは不明ですが、ありえないことではありません。平成筑豊鉄道には、かつての国鉄赤字ローカル線である伊田線(直方〜田川伊田)、田川線(行橋〜田川伊田)および糸田線(金田〜田川後藤寺)、北九州市が第三種鉄道事業者である門司港レトロ観光線(平成筑豊鉄道は第二種鉄道事業者)の4路線がありますが、記事の内容からして伊田線、田川線および糸田線の境遇が問題とされているのでしょう。

 これから本格的に議論が開始されることになるでしょうが、どのような選択をするにせよ、伊田線、田川線、糸田線、門司港レトロ観光線をひとまとめにするのではなく、線区別に考える必要があるでしょう。門司港レトロ観光線は特殊ですので脇に置いておくとしても、伊田線、田川線および糸田線の3路線は一体として考えられがちです。しかし、私がここにあげた全ての路線に乗った限りでは(一度しかないのですが)、それぞれ性格が異なるように思えます。とくに伊田線と田川線は、一体で運行されているとは言え、かなり性格が違います。伊田線は全線複線で開けた場所を通っているのに対し、田川線は山間地帯と言えるような場所を通り、しかもカーブが多く、伊田線より乗客が少なかったような記憶があります。そうは言っても、伊田線も乗客が多いという訳でもないので、さしあたりは単線化が現実的でしょう。

 ともあれ、今後の動きを注視していこうと考えています。

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