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森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

人間のこと,社会のこと,未来のこと,いろいろと考えたことを書きます

人類をまっぷたつにする日本の憲法論議

2013-07-16 11:24:40 | 人類の未来

この7月13日にウィーンのオペラ座で長く歌手をされたアンネット・カズエ ストゥルナート先生の門下生による声楽の発表会「野の花の集い」が開催されました.私も2曲唱いました.これで今年前半は終了です.後半は真剣勝負のコンクールなどは予定していませんが,新しい曲を始めたいと思います.

ここ数回,憲法改定の可否に関わる討論会や講演会に出て,新しく学んだことがあるのでここに述べて,私の記録としておきます.現在の日本国憲法(平和憲法)は米国の押しつけと言われますが,例えば第25条(生存権)は米国の発想にはなく草案になかったもので,日本が独自に主張して加えたものです.ここに非常に大きな特徴,日本人というか日本国のオリジナルがあります.それは,極端な言い方をすれば現存する全人類をまっぷたつに分けるほどの大きな違いをもっています.

人間は,この世に生を受ければ最低限,誰でも生命を保ち人間として生きることが尊重され保証されます.これが現日本人の「人間に対する認識」です.ところが現在の米国には(少なくとも先の大戦以降),こういった考え方は主流ではないようです.競争の結果,それに破れた者は理論的には生存できなくてもやむを得ないということです.ただし,理論的に正しいといって餓死に任せるのではなく,宗教(基督教)的な側面から敗者を救うべく最大限の努力はします.けれども,それはあくまで経済的勝者の自由意志による恣意的な寄付,施し,つまりチャリティーによるということです.

第13条(国民の権利および義務)で,現憲法では「個人として尊重される」が,改定案では「人として尊重される」に変わっています.この「個人」から「人」への変換が,個々に尊重されるべき対象から戦争時の砲弾のように単なる数としての「人」,それぞれ個別に名前と個性をもつ具体的な個人から,数でひとくくりにする抽象的な単位に入れ替わっています.軍隊もそうでしょうが,現社会を構成する企業などでも「この地域の営業が弱い.あと10人投入しよう」などと,人間を数としてみます.

これは,人間社会がそれぞれ異なる目的をもった組織でできている限りやむを得ない面があるのかもしれません.しかし,それを国の形をなす憲法にまで入れて,国を構成する国民を投入すべき物資のひとつ,単なるナンバーとしてしまうのは,いかがなものでしょうか.

 

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ミニシンポジウムを終えて

2013-04-15 19:56:41 | 人類の未来

4月13日(土)午後3時から,立教大学タッカーホールにて日本生物地理学会主催,立教大学共催のミニシンポジウム「次世代にどのような社会を贈るのか?」が開催されました.お忙しいなか,沢山の人においでいただき有り難うございました.お陰さまで,気さくで楽しく,また大変充実したシンポジウムになりました.ご講演くださった上村雄彦先生,池田香代子先生そして会場から質問やご意見をくださった参加者のみなさん,会場を手伝ってくださった立教大学理学部動物生態学専攻みなさん,有り難うございました.

池田香代子先生が,ご講演の最後にご紹介くださった衝撃的なDVD(橋本公 作製)をここにご紹介します.広島や長崎に落ちた核爆弾をはじめ,今迄に造られた核弾頭,ひとつひとつを小さな銀色の玉で表現しています.これも一つの表現法でしょう.そのあまりの膨大さを穏やかな表現で表しています.

さらに,池田香代子先生らは,デモクラTVというインターネット放送を開設されました.これも紹介しておきます.

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4月3日(土),4月4日(日)とさくら音楽コンクールにチャレンジしました.予選を突破し,本選もなんとかまとめられて「審査員特別賞」をいただきました.まだ初めて日が浅いので,新人賞のように考えています.これからも練習を積み,もっと豊かな表現ができるようになりたいと思います.

伴奏をしてくださった谷地先生,石川先生,講評をくださった審査の先生に御礼申し上げます.

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4.13シンポジウム「次世代のどのような社会を贈るのか?」

2013-03-25 11:15:53 | 人類の未来

おはようございます.今日は曇り空で湿っぽく何か梅雨みたいです.以下の通り無料の一般公開シンポジウム「次世代にどのような社会を贈るのか?」を開催いたします.

日時:4月13日(土)午後3時−(開場は2時)

場所:立教大学タッカーホール(JR池袋東口より歩7分)

私は生物学者ですが,現在の世界の動向,人類の未来は,経済つまりお金を集めようとすることから引き起こされるように思います.
今,アベノミクスによって日本は経済と軍事に大きな変換が訪れようとしています.他国との武力による衝突は地球環境の破壊を導き未来の人類に大きい損失を与えます.資源,エネルギー,水が今後乏しくなるなかで世界がどのように共存するか大きな課題です.そのためには,生物としての生命すら維持できないような水準に特定の国家や個人を追い込んではならず,国際的な税の徴収が必要です.今朝の新聞(毎日)の第一面トップに掲載されていますが,原子力委員の設立したNPOに電力資金が1800万円も流れていたとのことです.これほどの事故を起こしてもまだそれを材料に汚職腐敗が続いているのかと思うと暗い気持ちになります.

国際連帯税の日本の権威である上村雄彦教授(横浜市大),「夜と霧」,「ソフィーの世界」,「世界が100人の村だったら」および反原発で著名なドイツ文学者の池田香代子さんをお招きし.グローバル・タックスの理論と人類の未来について縦横無尽にお話し頂きます.ドイツの状況や原発についてもお話があります.私も趣旨説明で30分以上話すつもりです.また会場参加者とのやり取りも積極的に行う予定です.

初めてなのですが,小さな教室ではなく1000人のホールでの開催なのでなるべく沢山の人に来てもらいたいと思います.
みなさまのご来駕をお待ちいたします.

 

なお,4月3日のさくら音楽コンクールに声楽(テノール)で出ることにしました.「遥かなるサンタルチア」を唱います.まだ伴奏者との音合わせもやっていませんが,楽しく唱えればと思います.

  

 

 


安藤昌益を知っていますか?

2012-11-24 10:02:13 | 人類の未来

安藤昌益(1703-1762)は,江戸時代の医師であり,思想家です.

彼の残した書物「自然真営道」のなかで“男女ヲ人ト為ス.一人ヲ以テ人ト為ル則ハ失リナリ.“転定ハ一体ニシテ上無ク下無ク,統ベテ互性ニシテ二別無シ”と言っています.

男女6才にして席を同じくせずとされた,男女差別の非常に激しい時代,身分差別が厳然とあった時代に,なんと“男女”と書いて“ひと”と読ませたのです.そして人間には上も下もなく,身分の違いはないと世間に断言したのです.“転定”は“てんち”と読み,天も地も,いわゆる天の身分をもつ人も地の身分の人も人間として何ら差はないという意味です.

日本の民主主義の原点として,今見直されています.

この人を発見したのは,狩野亨吉という人で京都大学の初代学長を務めた人です.夏目漱石と仲が良く,漱石の「我輩は猫である」に出てくる“苦沙弥先生”のモデルといわれ,ものすごく優秀な人だったそうです.

その後,再び埋もれてしまいました.再発見したのはカナダ人で在日カナダ大使を務めたE・ハーバート・ノーマンです.この人は太平洋戦争直後に,進駐軍(GHQ)として日本に来ました.進駐軍は,野蛮な国日本を人間らしい民主主義国家に導いてやるといってやってきたのです.ところが日本には,米国よりも早く真に人間の平等と民主主義に目覚めた人がいたのです.吃驚仰天したノーマンの顔が目に浮かびます.

そして現代が第三のブームです.今年の10月25日に「現代を生きる安藤昌益」(御茶の水書房)が出版されました.私も「日本のヘーゲル 安藤昌益」と題した小論を啓上しています.そして11月4日に「3.11と安藤昌益の集い」と題した大きなシンポジウムが東京電機大学・丹羽ホールで開催され,500名の会場が超満員でした.講演のなかでは,竹下和男氏の食育のお話が大変面白く心を打ちました.子どもがどう生きていくかというテーマは人の心を打ちます.これはに日本だけではなく世界に普遍でしょう.そして,12月21-24日には,千住ミルディスI番館(北千住マルイ)内のシアター1010で「自り伝」と題した安藤昌益の劇が催されます.

“ヒト”は生物のひとつです.男女が未来に命をつなぎます.私は生物学者として,“男女”ともって人とした安藤昌益に驚きます.さらに,空間的に離れた別個体を併せて一つのものとした安藤昌益に驚きます.安藤昌益は仏教を否定したけれども,唯識(仏教)と共通するものがあるのではないかと私は思います.

ヘーゲルは彼の著作「大論理学 有と無の統一」において,“むしろ両者が同一のものではないということ,両者は絶対に区別されるが,しかしまた分離しないものであり,不可分のものであって,各々はそのままその反対の中に消滅するものだということである”と述べています.

生命(ここではヒトと同じですが)とは,個々に識別でき決して同じではないが,同時にまた一つであって分離できないものであるということに気づいているように,私は思います.ヘーゲルは,現実には男と女つまり性による社会的な役割を固定的に捉えた,封建的な面をもっています.しかし,それらの封建的な面にとらわれて彼を除外してしまえば,彼の人類に残した大きな遺産をも捨ててしまうことになるでしょう.

この生命(人間)について12月1日(土)に,東大(駒場)で開催される日本人間進化学会(会長 長谷川眞理子)で発表し,参加者と議論する予定です.生命とは何かという問いかけに対する人間の深い理解が,人間を成長させ,核兵器の廃絶,全世界の戦争の放棄や地球環境の破壊から人類を解放する力になるのではないかと私は思います.


PS.  11月25日(日)は私の歌の発表会です.「遥かなるサンタルチア」「アヴェ・マリア(マスカーニ)」の2曲を歌います.12月4日(火)は横浜みなとみらいホールで第66回全日本学生音楽コンクール全国大会(声楽)です.キップを買いました.初心者で大変僭越ではありますが,可能であれば前回のようにそれぞれお聴きした率直な感想をブログに上げるつもりです.あくまでも一人の観客(素人)としての印象ですので,誤解のないようにお願いいたします.

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   拙著「プルトニウム消滅!」,「マジ」のタグのついたエネルギー本に関する感想ブログ・書評レビューランキングで1位になりました.生物学,経済学,公共哲学を統合した本書全体を貫く主張の真面目さを,読者の皆様に感じとって頂けたのではないかと思います.

 読み易い本です。是非読んでみてね


日本再生への道

2012-09-16 18:49:03 | 人類の未来

以下に,昨今の急変する世界情勢に鑑み,今日私が考えた日本再生への道を書きます.

日本再生ですから,日本が落ちるところまで落ち,その後新しく生まれ変わる過程を示します.見方によっては,非常に暗い最悪の日本ともみえます.あくまでもシミュレーションのひとつではあるけれども,実際に現実になる可能性はあると私は思います.

想定外と称して考えたくないことを考えない,見たくないものを見ないのではなく,生じ得る最悪の状況を想定して,そこからどう立ち直るのか,突っ込んだ思考が必要です.これこそが,我々日本人が福島の原発事故から学んだことであり,この思考法があって初めて,我々日本人は今後来る非常な苦難を乗り越えることができると思います. 

日本再生への道

韓国の李明博大統領が竹島に上陸し,その理由は日本軍による慰安婦強制連行の問題で,日本の不誠実な姿勢に失望してその最終判断につながった可能性が高いと報じられています.また,昨年韓国憲法裁判所が,韓国政府がこの慰安婦問題で国際交渉の努力をしないことは違憲である,との判決を下しています.日本では,河野談話を見直せという主張や彼の参考人招致が要望されましたが,さらなる具体的な動きはなく,韓国に対する明確なアクションも始まらず膠着状態になっています. 

一方欧州は,ギリシャ,イタリア,スペインなどの経済破綻問題に伴い,ユーロ危機を乗り切るべくドイツをはじめとして鋭意努力がなされています.しかし,各国の中央銀行を救うべく融資を増やすばかりで,抜本的な改革はなされておらず,単に金融破綻時期が先延ばしになっているだけのようにみえます.

しかし,ユーロ危機だけが既に長く世界の注目を浴びているだけで,米国も同様の破綻の縁にいます.貧富の差の拡大,貧困層の増加だけでなく,重大な金融破綻危機が継続し,雇用も低位の状態が続いています.一方で,ムスリムが許すことのできない米国の映画が発端となり,イスラムの世界に火の手が上がっています.これはインドネシアなどアジアまで広がり火消しは容易ではないでしょう.FRBは,雇用増と金融破綻回避のため2012.9.13にQE3を開始しました.これは,毎月400億ドル(約3兆円)で住宅ローン担保証券を無期限に購入するという形で行われ,2013.1.2にくる「財政の崖」を考えると,オバマ大統領も大統領選を挽回するための,米国内の雇用の安定化や金融資本救済など,切羽詰まった止むを得ずの対応であるようにみえます.

しかし,QE3は単に金融機関の破綻を防ぐための融資であり,欧州の場合と同じく抜本的な解決ではありません.ドルを大量に刷って市中に出せば当然ながらドルの価値は落ちます.なんとカナダドルの価値が米ドルを抜きました(2012.9.14買い終値東京,1カナダドル=80.62円,1米ドル=78.37円).これは,事前説明がされているかどうか知りませんが,中国にとっては非常に大きな打撃であり,不誠実と思われても仕方ないでしょう.FRBを除いて,世界で最も多く米国債を抱えているのは中国だからです.中国が米国に対して怒り,米国債を明示的に売却すれば米国債は暴落し,米国は瓦解するでしょう.米国も非常に困った状態に追い込まれています.

2012.4.17に石原都知事がワシントン(米国)で,東京都が尖閣諸島を購入すると発表しました.それをひとつの契機に日本と中国の関係が悪化し,2012.9.11に日本政府と所有者との購入契約締結に及んで,その悪化は決定的になりました.つまり中国の怒りは,米国から日本に向かいました.米国は,経済危機に関する世界の注目が欧州から米国へ移ることを回避し,さらに中国の怒りを米国から日本に向けることに成功したと思います.石原氏の米国での発表は米国が仕組んだ訳ではないので,米国の陰謀ではなく,一連の事象の流れを米国がうまく利用したということでしょう.

中国は,自由主義陣営(韓国,日本,オーストラリア,米国)を一度に相手にするのは,種々の理由で無理,無駄なので,実際に紛糾中の日本に的を絞るでしょう.しかし,だからといって,武力紛争にはなりません.これは私も絶対的に否定しますが,民主党も自民党も著名な政治家のほとんど総てが武力紛争を否定するでしょう.中国ももちろん,何の得もなく全く無意味であり,ただ米国を利するだけであることを分かっているでしょう.

まず中国で日本製品のボイコットが起こるでしょう.次に中国の対日輸出禁止,日本もそれなりの対抗策をとらざるを得ないでしょう.武力以外の様々の相互の敵対行為が生じるでしょう.こうしてどちらかが音を上げるまで,じっと我慢比べです.米国はあからさまに日本に味方することはないでしょう.先に述べた米国債のことがあり,中国は米国に釘を刺すでしょう.言うまでもなく韓国も日本の味方はしません.石原都知事は,武力以外の2国間の抗争,つまり言葉を代えれば経済戦争で日本が勝つという目処をもって尖閣諸島購入の発表をすべきだったと思います.結局この抗争は,尖閣諸島の領有権について決着するまで終わらないでしょう.米国が仲介し,最悪の場合は日本の尖閣諸島の放棄,あるいはそれに近い不利な条件で日本が合意せざるを得ないまで追い込まれると私は思います.日本の累積債務は1千兆円以上です.急激な日本国債の暴落が起これば日本経済は破綻するでしょう.

領有権の問題は,非常に難しいと思います.両国家がものすごく仲が良くてひとつの国家になるような場合なら,全く問題は生じないでしょう.両国が仲が悪くて,戦争かあるいは他の理由で片方が滅ぶという場合も,明確に決着がつくでしょう.双方が国家として,対立しながらもどちらも成立している場合は,棚上げという知恵,つまり非常に仲良くなってひとつになるか,さもなくばどちらかが滅びて自然に決着がつくまで放っておくという策は,現実的な解決策として有用な選択肢であったと思います.ここに至っては,もう遅いでしょうが.

最も有利にことが運ぶ時に,その交渉を行うのが外交の鉄則のひとつでしょう.韓国は、日本が中国との抗争において最も困窮している時に,慰安婦強制連行について河野談話の見直しを求めるでしょう.日本軍の慰安婦強制連行に関して,「事実はただ一つ.それは悪いことであり,実際に起こった」と知日派のアーミテージ(日経,2012.8.25)が断定するのですから,韓国は米国に仲介を頼むかも知れません.財政破綻し困窮状態にある日本は河野談話を見直し,正式の謝罪と賠償を了解せざるを得ないところへ追いつめられる可能性があります.こうして慰安婦問題と竹島問題は新しい明確な決着に向かうでしょう.もちろんロシアも機をつかんで同様の外交を行うでしょう.北方領土を日本は失うか,非常に不利な条件で合意し,こちらもひとつの決着をみるでしょう.

うまく紛争を回避しながら,一方日本国内の様々の意見を集約し暴動を抑えながら決着を図る・・,首相は誰が務まるでしょうか.こういった修羅場をうまく乗り切るためには若い方よりも艱難辛苦を乗り越えてきた経験豊かな方の方が適任かもしれません.こうして,日本は尖閣諸島,竹島,北方領土を失い,財政破綻のなかで,最悪のどん底に落ちます.しかし,そこに初めて新生の明るい光が射してきます.不本意なきっかけによって,結果的に国土が少し小さくなるのを防ぐことはできませんでしたが,逆には過去の戦争による歴史的なしがらみは消え,それらに気を病み心を奪われることはもう二度となくなりました.戦争を憎み,堂々と胸を張って平和を求める真に誇りある日本人として,新しく世界に羽ばたくことができます.多くを失う悲しく悔しいことになってしまったけれども,その代わりにまったく意図しなかった明るい陽射し,先の大戦の終戦時と同じような明るが戻ってくるような気がします.

憲法九条の精神と,拙著「プルトニウム消滅!」に著された,人間は識別可能の個別の存在でありまたひとつの存在でもあるという二重性に基づく精神,ポジション・トークつまり私益を半分に抑えもう半分は未来の人類の利益のためにという精神が合わさり,それを活かすことのできる新生日本が生まれると,私は思います.