森中定治ブログ「次世代に贈る社会」

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日本学術会議会員の非任命問題に思う

2020-11-08 11:57:01 | 原発・エネルギー

首相の日本学術会議会員6名の非任命が大きな問題となって世間を騒がせています。
日本学術会議としては、法律違反だとか、学問の自由を損なうので憲法違反だとか、今までの慣習を踏みにじる行為だとか、あるいは過去の中曽根発言との相違を理由にして、首相に日本学術会議が推した6名を速やかに任命するよう主張しています。
首相は法律違反には当たらないと、堂々と明言しています。

自分自身が、自分自身の名において人を選ぶのに、自分自身が納得しない人を選ぶということ自体に無理があるように思います。それを首相は自分が選ぶ立場になってみて、はたと思い当たったのでしょう。これじゃ私は日本学術会議のロボットじゃないか! 昔ならいざ知らず、現代の民主主義社会でおいてこんなことが通るはずがない! この人たちは自分だけが正しいと信じ込んでいて、目が見えなくなっている! だからこそ、人間をロボットにしていることに気がつかないのだ。そこを突けば容易だ。この人たちは自分が正しい、相手が間違っていると手を替え品を替えて言うだけだ。その間違っている相手がどう言う戦略を取ってくるのか、何も考えていないし、むろん相手の戦略に対応する策も何も考えていない。ただ自分は正しいと、そればかり言い張っているだけだ。これじゃ楽勝だ・・。

法律違反 vs 法律違反ではない・・・そのどちらが正しいか、法廷で決着をつけようということになるでしょう。この時点で日本学術会議の負けだと思います。裁判になれば長い時間がかかります。そのうちに、さして関心のない一般市民の多くは忘れてしまいます。つまりその6名は任命されないまま月日だけが進むわけです。
しかも一般市民が冷静に考えてみて、なぜ私が私の名前で任命するのに、私が納得できない人を選ばなければならないのか、と首相が社会に訴えればむしろ、そうだ!首相の言う通りだとなりかねません。
日本学術会議の言いなりに首相が任命しなければならないとしたら、首相は日本学術会議のロボットじゃないか!と言う声が社会から上がってくるでしょう。裁判に負けてしまう可能性も出てきます。
だから任命者が納得できなければ、当然ながら任命しなくていいと私は思います。どちら側かに与する立場ではなく、私自身の頭で冷静、公平に考えてみて、任命者が他人の意志を強いられることには賛成できません。過去に中曽根首相が述べたことは、その時はその時の中曽根首相の判断があったのであり、それを今も無理強いしていると一般社会に訴えられれば、そんな過去の慣習など、変えてしまえ!と言うことになりかねません。

では、この問題のどこが間違っているのでしょうか。
首相が6名を外したことに問題はないと私は思います。けれども慣習に従って推薦された人を自らの意思で外す場合は、当然ながら公正な理由が必要です。首相だからといって恣意的に好き勝手に外したのであれば、それは誰も認めないでしょう。だから、どういう理由で外したかが重要なのです。外した理由が公正かどうかなのです。
だから、首相がその6名を外した理由について、それが受け入れられる正しい理由なのかどうか、日本学術会議と首相で納得いくまで討議すべきなのです。
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事件を起こした被告が、検察からなぜあんなことをしたのか、その理由は?と問われて、正直にその真の理由を言えばそれは犯罪なので、有罪になります。有罪にはなりたくない。さりとて嘘を言えば、今度は偽証罪になります。そんな場合どうするでしょうか。被告は黙秘をするのです。「黙秘権」は一般社会に認められた権利です。こう考えると、首相は、任命しなかったその本当の理由を言いたくないし、さりとて嘘も言いたくない。だから「黙秘権」を使っている状況だと、私は思います。
だから、任命されなかった6名が公式の記者会見をして、我々はなぜ外されたのか。その理由が、なるほどと納得できるものであれば我々6名は粛々とそれに従います。だからその理由を教えて欲しいと言えばいいのです。
首相は、それは個人情報だから公表を控えると言いますが、その当事者本人が、なぜ任命されなかったのか、それが知りたい。その理由に該当する個人情報などいくら公表してもらっても構わないと、記者会見で明言すればいいのです。
これで個人情報だから公表できないと言う論法は使えなくなります。そうすると「黙秘権」は被告のような弱い立場の人に認められた権利なのか、それとも人を任命するような強者の権利なのか、と言う議論になります。このような議論展開を図るのです。
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裁判官が被告に「懲役3年の刑に処する」と言ったとします。そしてその理由はと問われて、「それは個人情報だから申し上げられない」と言ったらどうでしょうか? 俺は罰として懲役3年の刑を受けるのに、その理由はわからない! こんなバカげた話と同じことになります。非任命の6名は、いわば社会的に罰せられたと言えるでしょう。それはおかしいと、この問題に関心のない人も含め一般社会の誰もが分かります。このように一般社会に分かるように訴えるべきではないでしょうか。
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デビュー戦のリングで、首相が新任の挨拶代わりに、ちょっとしたジャブを放ちました。ところがそのジャブは、相手にはストレートパンチのような強烈な打撃を与えてしまい、食うか食われるかの生命を賭けたラウンドになりかけました。
ここでセコンドからタオルが投げられそうになりました。
つまり、複数の野党から、首相がその6名を存じ上げないと言うのであれば、では改めて日本学術会議会長がその6名を指名したら首相は任命してくれるかと質問しました。首相は、それは満更でもないとの様子・・。もしこれでその6名が任命されたら、私には、本当にバカバカしく思えます。

既に首相は、日本学術会議に手を突っ込むワーキング・チームを立ち上げました。民間の機関にしろとか、解体しろとまで声が出てきています。
ちょっとしたジャブを放ってみたら、結果として首相は予想外の大きい成果を得られるかもしれません。大山鳴動して結果は今まで通り、その一方で首相は少なくとも日本学術会議の中へ手を突っ込み、都合のよいように改革をなせるところまで持っていきました。これは歴代の首相ができなかったことであり、このままでは現首相の大手柄となるでしょう。首相のあのニンマリ顔は、ここまで見通しているように思います。

日本学術会議議長が、その6名を再指名してはならないでしょう。首相がその6名を知っていたか、知らなかったのか、そんなことは問題ではありません。
再指名するのではなくて、今の状態のままで任命しなかった理由について議論するリングを作り、そのリング上でジャブを打ち返す必要があると私は思います。その討議の上で任命するのか、非任命なのか改めて明確にし、そのワーキング・チームの解散も含めて討議の結論を出すべきだと、私は思います。

歴史ある日本学術会議、あらゆる分野の日本最高峰の叡智の集団が、こんな新参の首相のジャブに苦もなく捻られたら、おそらく今後右傾化は眼に見えるように進むでしょう。

涙が出ます。

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