以下に,昨今の急変する世界情勢に鑑み,今日私が考えた日本再生への道を書きます.
日本再生ですから,日本が落ちるところまで落ち,その後新しく生まれ変わる過程を示します.見方によっては,非常に暗い最悪の日本ともみえます.あくまでもシミュレーションのひとつではあるけれども,実際に現実になる可能性はあると私は思います.
想定外と称して考えたくないことを考えない,見たくないものを見ないのではなく,生じ得る最悪の状況を想定して,そこからどう立ち直るのか,突っ込んだ思考が必要です.これこそが,我々日本人が福島の原発事故から学んだことであり,この思考法があって初めて,我々日本人は今後来る非常な苦難を乗り越えることができると思います.
日本再生への道
韓国の李明博大統領が竹島に上陸し,その理由は日本軍による慰安婦強制連行の問題で,日本の不誠実な姿勢に失望してその最終判断につながった可能性が高いと報じられています.また,昨年韓国憲法裁判所が,韓国政府がこの慰安婦問題で国際交渉の努力をしないことは違憲である,との判決を下しています.日本では,河野談話を見直せという主張や彼の参考人招致が要望されましたが,さらなる具体的な動きはなく,韓国に対する明確なアクションも始まらず膠着状態になっています.
一方欧州は,ギリシャ,イタリア,スペインなどの経済破綻問題に伴い,ユーロ危機を乗り切るべくドイツをはじめとして鋭意努力がなされています.しかし,各国の中央銀行を救うべく融資を増やすばかりで,抜本的な改革はなされておらず,単に金融破綻時期が先延ばしになっているだけのようにみえます.
しかし,ユーロ危機だけが既に長く世界の注目を浴びているだけで,米国も同様の破綻の縁にいます.貧富の差の拡大,貧困層の増加だけでなく,重大な金融破綻危機が継続し,雇用も低位の状態が続いています.一方で,ムスリムが許すことのできない米国の映画が発端となり,イスラムの世界に火の手が上がっています.これはインドネシアなどアジアまで広がり火消しは容易ではないでしょう.FRBは,雇用増と金融破綻回避のため2012.9.13にQE3を開始しました.これは,毎月400億ドル(約3兆円)で住宅ローン担保証券を無期限に購入するという形で行われ,2013.1.2にくる「財政の崖」を考えると,オバマ大統領も大統領選を挽回するための,米国内の雇用の安定化や金融資本救済など,切羽詰まった止むを得ずの対応であるようにみえます.
しかし,QE3は単に金融機関の破綻を防ぐための融資であり,欧州の場合と同じく抜本的な解決ではありません.ドルを大量に刷って市中に出せば当然ながらドルの価値は落ちます.なんとカナダドルの価値が米ドルを抜きました(2012.9.14買い終値東京,1カナダドル=80.62円,1米ドル=78.37円).これは,事前説明がされているかどうか知りませんが,中国にとっては非常に大きな打撃であり,不誠実と思われても仕方ないでしょう.FRBを除いて,世界で最も多く米国債を抱えているのは中国だからです.中国が米国に対して怒り,米国債を明示的に売却すれば米国債は暴落し,米国は瓦解するでしょう.米国も非常に困った状態に追い込まれています.
2012.4.17に石原都知事がワシントン(米国)で,東京都が尖閣諸島を購入すると発表しました.それをひとつの契機に日本と中国の関係が悪化し,2012.9.11に日本政府と所有者との購入契約締結に及んで,その悪化は決定的になりました.つまり中国の怒りは,米国から日本に向かいました.米国は,経済危機に関する世界の注目が欧州から米国へ移ることを回避し,さらに中国の怒りを米国から日本に向けることに成功したと思います.石原氏の米国での発表は米国が仕組んだ訳ではないので,米国の陰謀ではなく,一連の事象の流れを米国がうまく利用したということでしょう.
中国は,自由主義陣営(韓国,日本,オーストラリア,米国)を一度に相手にするのは,種々の理由で無理,無駄なので,実際に紛糾中の日本に的を絞るでしょう.しかし,だからといって,武力紛争にはなりません.これは私も絶対的に否定しますが,民主党も自民党も著名な政治家のほとんど総てが武力紛争を否定するでしょう.中国ももちろん,何の得もなく全く無意味であり,ただ米国を利するだけであることを分かっているでしょう.
まず中国で日本製品のボイコットが起こるでしょう.次に中国の対日輸出禁止,日本もそれなりの対抗策をとらざるを得ないでしょう.武力以外の様々の相互の敵対行為が生じるでしょう.こうしてどちらかが音を上げるまで,じっと我慢比べです.米国はあからさまに日本に味方することはないでしょう.先に述べた米国債のことがあり,中国は米国に釘を刺すでしょう.言うまでもなく韓国も日本の味方はしません.石原都知事は,武力以外の2国間の抗争,つまり言葉を代えれば経済戦争で日本が勝つという目処をもって尖閣諸島購入の発表をすべきだったと思います.結局この抗争は,尖閣諸島の領有権について決着するまで終わらないでしょう.米国が仲介し,最悪の場合は日本の尖閣諸島の放棄,あるいはそれに近い不利な条件で日本が合意せざるを得ないまで追い込まれると私は思います.日本の累積債務は1千兆円以上です.急激な日本国債の暴落が起これば日本経済は破綻するでしょう.
領有権の問題は,非常に難しいと思います.両国家がものすごく仲が良くてひとつの国家になるような場合なら,全く問題は生じないでしょう.両国が仲が悪くて,戦争かあるいは他の理由で片方が滅ぶという場合も,明確に決着がつくでしょう.双方が国家として,対立しながらもどちらも成立している場合は,棚上げという知恵,つまり非常に仲良くなってひとつになるか,さもなくばどちらかが滅びて自然に決着がつくまで放っておくという策は,現実的な解決策として有用な選択肢であったと思います.ここに至っては,もう遅いでしょうが.
最も有利にことが運ぶ時に,その交渉を行うのが外交の鉄則のひとつでしょう.韓国は、日本が中国との抗争において最も困窮している時に,慰安婦強制連行について河野談話の見直しを求めるでしょう.日本軍の慰安婦強制連行に関して,「事実はただ一つ.それは悪いことであり,実際に起こった」と知日派のアーミテージ(日経,2012.8.25)が断定するのですから,韓国は米国に仲介を頼むかも知れません.財政破綻し困窮状態にある日本は河野談話を見直し,正式の謝罪と賠償を了解せざるを得ないところへ追いつめられる可能性があります.こうして慰安婦問題と竹島問題は新しい明確な決着に向かうでしょう.もちろんロシアも機をつかんで同様の外交を行うでしょう.北方領土を日本は失うか,非常に不利な条件で合意し,こちらもひとつの決着をみるでしょう.
うまく紛争を回避しながら,一方日本国内の様々の意見を集約し暴動を抑えながら決着を図る・・,首相は誰が務まるでしょうか.こういった修羅場をうまく乗り切るためには若い方よりも艱難辛苦を乗り越えてきた経験豊かな方の方が適任かもしれません.こうして,日本は尖閣諸島,竹島,北方領土を失い,財政破綻のなかで,最悪のどん底に落ちます.しかし,そこに初めて新生の明るい光が射してきます.不本意なきっかけによって,結果的に国土が少し小さくなるのを防ぐことはできませんでしたが,逆には過去の戦争による歴史的なしがらみは消え,それらに気を病み心を奪われることはもう二度となくなりました.戦争を憎み,堂々と胸を張って平和を求める真に誇りある日本人として,新しく世界に羽ばたくことができます.多くを失う悲しく悔しいことになってしまったけれども,その代わりにまったく意図しなかった明るい陽射し,先の大戦の終戦時と同じような明るが戻ってくるような気がします.
憲法九条の精神と,拙著「プルトニウム消滅!」に著された,人間は識別可能の個別の存在でありまたひとつの存在でもあるという二重性に基づく精神,ポジション・トークつまり私益を半分に抑えもう半分は未来の人類の利益のためにという精神が合わさり,それを活かすことのできる新生日本が生まれると,私は思います.