(4)控訴
判決結果は納得のいくものではありませんでした。
この裁判は残っている本について、無償で著者が受け取れるものかどうか、つまり所有権が著者にあるか、それとも制作者にあるかが争われたものです。
制作した2000冊のうち、判決では私は700冊もらったことになっていました。私と制作を担当した(株)S・Fとの覚書では、著者(甲)に100冊献本と書いてあります。そして残った本の300冊を著者に、となっています。100冊の献本というのがおかしい上に、さらに私は700冊ももらったことになっています。パブリシティー献本として(株)S・Fが取った100冊も私が取ったことになっています。
判決の通り著者に所有権はないとして、まずおかしいのは著者の得るべき収益からも倉庫代が引かれていることです。著者が所有者でなく本の購入者つまり顧客であるなら、なぜ倉庫代を顧客が支払わなければならないのか?
色々と調べてみると、著者が出資をする共同出版という出版形態があることがわかりました。この場合は、著者のとる原稿料(印税)が高くなるだけで、著者が販売促進の責任を負うことはありません。“U出版”という出版形態の特徴は、通常の共同出版ではなく、著者が本の中身はいうまでもなく、本の制作費も全額出し、さらにその本の販売にまで責任を持つという出版形態であり、確かに他にはないユニークな出版形態です。
著者が販売に責任を持つのであるから、著者が行う講演会やいろんな場でできる限り自著を売る責任が生じます。普通それは出版社がやることであって、たまにサイン会などはありますが、著者が販売促進を義務付けられるというのは聞いたことがありません。その場合に販売の時に自著をその場に置く必要があります。その段になると著者は共同販売促進者ではなく書籍購入者(顧客)に変わります。書店を通さないので書店の利益を差し引いた定価の80%、いわゆる著者割りで著者が買って、それを著者が売るのです。ある時は共同推進者、またある時は自著の購入者(顧客)になります。
著者が著者割りで自著を買うのは普通です。しかし、その場合は全ての制作費を出版社が出し、書籍が出版社のものである場合です。制作費を全額出させ、さらに著者のお金で作ったその書籍を販売のために著者に買わせ、覚書の期限が来れば、その後は制作者の所有物として他社に売り渡す。どう考えてもまともではないと思います。
出版さえできればいいと考える人、出版さえできれば文句を言わない人を対象としたビジネスです。
著者は制作費全額を出資し、販売促進の義務まで背負いながら、最後は単なる顧客だったというこの出版形態・・、私はこの日本社会に許されるものではないと思います。
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