goo blog サービス終了のお知らせ 

Humdrum++

ツリオヤジのダイアリシスな日々 ~ 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 (葉隠 聞書第一0202)

富士山 - 平野啓一郎 (新潮 2023年1月号)

2022-12-26 09:52:34 | 読書メモ
平野啓一郎の短編が掲載されているとのことで、新潮を買ってきました。 「富士山」は、マッチングアプリによって出会い、結果的にマッチングしなかった男女が、その後のある事件によってマッチングしていた可能性に気づいたことによる葛藤の話です。 と、書くと面白くもなんともなさそうな話に思えますが^^;、それは私の筆力の問題で、「富士山」は期待を裏切らず、面白く読めました。 他に、坂口安吾の発掘作(未 . . . 本文を読む

聊斎志異 (上) - 蒲松齢 訳:立間祥介 (岩波文庫)

2022-12-20 05:32:47 | 読書メモ
実はわたし、怪異小説が好きなんです^^;。こどもの頃に読んだ水木しげる先生のマンガの影響でしょうか。遠野物語、千夜一夜物語、ラーマヤナなどが好きな本です。 聊斎志異(りょうさいしい)は清代前期の小説で、作者は蒲松齢(ほしょうれい)。 数ページから十数ページの短編からなります。上の目次は一部で、上巻には51編が収められています。幽鬼や狐、夜叉などが登場する奇譚で、さらりと読めて、なかなか味の . . . 本文を読む

星の子 - 今村夏子 (朝日新聞出版)

2022-11-29 10:38:59 | 読書メモ
このところ古い小説ばかり読む傾向があるので、たまには近年の作品も読まねばと手にしたのは、「むらさきのスカートの女」、「こちらあみ子」の今村夏子作品、「星の子」。 帯に記された紹介文。 主人公のカルト宗教2世の女の子から見た社会の詳説です。今村作品は、重いテーマを軽く、ときにはコミカルに描きます。文体はさわやかでぐいぐいと読めるのですが、読後感がやたらに重いのは、「こちらあみ子」で感じたのと . . . 本文を読む

故郷/阿Q正伝 魯迅 訳:藤井省三 (光文社古典新訳文庫)

2022-11-21 05:30:41 | 読書メモ
子どもの頃、家ににあった子供向け世界文学とかいうシリーズの中で「阿Q正伝」という題名をみて、変な名前だなぁ、と感じたのを覚えているのですが、手にして読むまでは至りませんでした。光文社古典新訳文庫で出ていることを知り、この歳になってやっと、読んでみようという気に^^; 魯迅(ろじん、ルーシェン)は文学革命時代に活躍した中国の作家。 こちら裏表紙の内容説明。中華民国建立の怒涛の時代に生きた作家 . . . 本文を読む

メルヒェン - ヘルマン・ヘッセ 訳:高橋健二 (新潮文庫)

2022-11-09 05:39:33 | 読書メモ
たまにはドイツの本も読みますか、と手にしたのはヘッセのメルヒェン。 9編の短編からなる一冊です。 子どもからお年寄りまで広く楽しめるメルヘンです。特に最初の、「アウグスツス」は、愛されること、愛すことの価値について考えされられる話で、「別な星の奇妙な便り」、「ファルドウム」は、物の存在、物の価値について考えさせられる話です。「夢から夢へ」、「アヤメ」は、シュールリアリズムの中に美意識を . . . 本文を読む

赤と黒 上/下 - スタンダール 訳:小林正 (新潮文庫)

2022-10-29 09:42:01 | 読書メモ
先日MAGMAのライブに行ったり、その前からスタンダールを読んでたりと、このところフランスづいてます。特に理由はなくたまたまなんですが..., この本も翻訳がいろいろ出ていて迷います。このところカラマーゾフの兄弟や戦争と平和では、光文社古典新訳文庫がむちゃくちゃ読みやすかったので、赤と黒もそれにしようとしたしたのですが、この本に限ってはどうも評判がよろしくない。こちらのWikiやWiki内の引用 . . . 本文を読む

小さき者へ・生れ出づる悩み - 有島武郎 (新潮文庫)

2022-10-17 09:57:19 | 読書メモ
ばあさんが「或る女」を読んでいるのをみて、そういえば本棚に有島武郎が一冊あったような、、と取り出して、どんな話だったけ?と開いてみたところ、内容に引き込まれそのまま最後まで読んでしまいました。 こちら目次。「小さき者へ」と「生れ出づる悩み」の2編+評論が収録。 裏表紙の内容紹介。 「小さき者へ」は、母を亡くした我が子へのメッセージ、「生れ出づる悩み」は、漁夫として家族の生活を支えるた . . . 本文を読む

フォンタマーラ - シローネ 訳:齋藤ゆかり (光文社古典新訳文庫)

2022-10-04 05:34:41 | 読書メモ
「カラマーゾフの兄弟」、「戦争と平和」とロシア文学を読んでみて、こりゃもっといろんな国の本を読まないといかんな、という気分になりました、次はイタリアいってみましょうか。イタリアってったらピノキオくらいしか読んだことないし、、、「神曲」を読もうかな、と思ったのですが、あまり昔の時代のも大変なので^^;、選んだのはこちらの本。 裏表紙の内容紹介。時代背景がムッソリーニ時代のイタリアだったことで、 . . . 本文を読む

戦争と平和 1~6巻 - トルストイ 訳:望月哲夫 (光文社古典新訳文庫)

2022-09-26 05:31:52 | 読書メモ
こないだカラマーゾフの兄弟を読んで、ロシア文学への興味が膨らみ、トルストイの戦争と平和も読んでみました。 カラマーゾフの兄弟が読みやすかったので、今回も光文社古典新訳文庫。 全6冊と、かなり長いです。これまで読んだ小説の中で最長不倒距離かも? これは第一巻の内容紹介。この本はジャンルが分けにくいですが、最後にトルストイ自身が書いているのは、長編小説でもないし、叙事詩でもないし、歴 . . . 本文を読む

さかなクンのあいうえお魚くいずかん 改訂版 - さかなクン (小学館)

2022-09-15 05:26:02 | 読書メモ
孫ちゃん1号の誕生日に、ばあさんが買ったプレゼントをわしが先に読ませてもらいました。 さかなクンのあいうえお魚くいずかん。小学館から発行されています。 これは文句なしに面白い。ツリオヤジが読んでも面白い。 クイズとコラムでまとめられた魚図鑑ですが、さかなクンの知識の豊富さ、絵の巧みさが実によく表れている本です。さかなクンがまだ宮沢くんの名前だった頃、TVチャンピオンの魚通選手権で、は . . . 本文を読む

おいしいごはんが食べられますように - 高瀬隼子 (文藝春秋2022年9月号)

2022-08-22 05:11:49 | 読書メモ
第167回の芥川賞は、候補が全員女性作家という珍しい状況。受賞作の「おいしいごはんが食べられますように」を読んでみました。 タイトルから、たべもの小説か?と思うかもしれませんが、もちろんそんなことはなく、中企業を舞台にした人間模様を描いた作品です。企業勤務経験のある身としては、読んでいて非常に生々しい内容と感じました。 二谷さんと押尾さんという、二人の視点がかわるがわる主体になるストー . . . 本文を読む

癩王のテラス - 三島由紀夫 (中公文庫)

2022-08-06 05:32:17 | 読書メモ
三島由紀夫が最後に書いた小説は「豊饒の海」でしたが、これは三島最後の戯曲。読むのは初めてです。 初演の配役はこちら。 舞台は14世紀のカンボジア。クメールの王、ジャヤ・ヴァルマン7世が主人公。ジャヤ・ヴァルマン王は自らの信仰を体現し、後世に残すための大寺院バイヨンの建設に着手します。しかし、王の体は癩病に蝕まれつつありました。弱っていく王の肉体と、完成に近づく寺院の間での人間模様と精神の葛 . . . 本文を読む

美しい星 - 三島由紀夫 (新潮文庫)

2022-07-24 05:00:50 | 読書メモ
こないだカラマーゾフの兄弟の読書メモの最後で、「この小説のポリフォニーに面して、ああ、似ているなと頭の中を過った三島の小説があるのですが」と書いたのですが、それがこの「美しい星」です。 主人公は宇宙人、という三島の中では毛色の変わった作品。木星人の大杉重一郎と白鳥座星雲から来た羽黒が、地球人の存続を巡ってディベートを展開するのですが、カラマーゾフの兄弟を読んだときに、本書のこのシーンが頭に浮 . . . 本文を読む

あなたが、いなかった、あなた - 平野啓一郎 (新潮社)

2022-07-15 10:07:31 | 読書メモ
平野啓一郎で未読だった短編集。 作者自ら、実験期と呼んでいる時期の短編集で、その後のテーマのもとになっているそうです。義足が頻出することから、かたちだけの愛のテーマになっているのは感じるのですが、分人主義のもとになる要素はどこにあるのかはわかりませんでした。 しょっぱなの「やがて...」は、老化を砂化(砂漠化)をモチーフにした内容に、フットノートで津波の風景が描写されているという作品だ . . . 本文を読む

カラマーゾフの兄弟 1~5巻 - ドストエフスキー 訳:亀山郁夫 (光文社古典新訳文庫)

2022-07-10 05:27:16 | 読書メモ
大人になってから海外文学をほとんど読まなくなりました。小さい頃は児童向けの本なら海外文学も少しは読んでいたのですが、高校生になってからはほぼ100%日本の作家ばかり、ごくたまに音楽つながりでエミリー・ブロンテとかポール・ギャリコを読んだりしてましたが.... で、どの本だったかは失念してしまいましたが、カラマーゾフ兄弟の大審問官の箇所を解説していて、それが難解ながら哲学的で面白そうに感じて、一度 . . . 本文を読む