三島由紀夫の自選短編集。単行本の発行は1971年。当初、三島が自作解説を書く予定だったのが、1970年の自死により自作解説は無し、代わりに高橋睦郎が解説を書いています。そのときの題名は『獅子・孔雀』で、1971年の文庫化の際に『殉教』と題名が変更されました。
自選の第三短編集とありますが、第一が『花ざかりの森・憂国』、第二が『真夏の死』かな。
『軽王子と衣通姫』1947年、三島22歳、 . . . 本文を読む
十代の頃に三島文学を好きになったのは、綿密な心理描写と美しい文体がその理由だったと思います。ぶっちゃけていえば、読み終わったあとに、「ああ、本を読んだなぁ」という達成感や満足感が得られるわけです。そんなことから、当初は三島作品は小説ばかり読んでいて、後年になって戯曲や評論も読むようになって徐々に三島の思想や美学への理解が深まっていきました。
しかし、最後まで謎だったのが、あのボディビルでした。な . . . 本文を読む
ばあさんが、これ読んどけと言わんばかりに机の上にほっていった一冊。
夫原病という言葉は初めて聞いた。ホラー小説と呼んでいいかと思います。こないだ読んだ『倉橋由美子の怪奇掌譚』よりも怖かった^^;;垣谷美雨の作品は、『七十歳死亡法案、可決』に続いて2冊めです。背筋が凍り付く気分で読みましたよ。
2022年にドラマ化もされてるんですね、郷ひろみが主役を演じたんだ。
登場人物でもっとも印象に残 . . . 本文を読む
2025年は三島由紀夫生誕100周年ということで、改めて三島作品を読み直してみたいと思います。まずは、最初の自選短編集です。
短編集なので、いくつかの作品は何度か読み直していましたが、通して読み直したのは、初めて読んだとき以来、40年以上経ってます。
未来だけを見ていたティーンエイジャーの頃に読んだ印象と、老い先が見えてきたじじいになって読んだ印象は、あたりまえかもしらんけど、全く違います . . . 本文を読む
倉橋由美子の怪談集です。
文章で「怖がらせる」のは難しいと思います。「泣かせる」とか「笑わせる」よりも難しいんじゃないでしょうか?才能ある作家は、この「怖がらせる」ということをさりげなくやってくるように思います。たとえば、三島由紀夫なら、『月澹荘奇譚』や『雛の宿』などの作品からは、じわりとした怖さが伝わってきます。
そして、倉橋由美子の文体にも、静かな怖さが含まれます。怖さ一辺倒ではなく、 . . . 本文を読む
昨年の11月、安部公房展に行った時に買った公式図録です。本棚に眠らせてしまい、やっと読みました^^;
展示されてた資料等の写真とキャプチャ、寄稿からなります。安部公房が愛用していた、ワープロ、シンセサイザー、カメラ、車等の写真がじっくりと見られます。エッセイは、安部ねり、川上弘美、多和田葉子のが面白かった。特に安部ねりのエッセイは、『グスコーブドリの伝記』を読むきっかけとなりました。
. . . 本文を読む
倉橋由美子の長編を2篇読んだところで、超短篇、というか童話を読んでみます。
古今東西のお伽噺をモディファイ(換骨奪胎)したものといえば、太宰治の『お伽草紙』を思い出します。作者曰く、骨と筋肉だけの文章で書いてみようとしたとのこと。情景描写を捨て、淡々と進めるストーリーこそ、童話の面白さが感じられます。近代の児童文学(大人が子供に読ませようとしている文学)をいかがわしいと断じ、お伽への回帰性を . . . 本文を読む
昨年の安部公房展で購入した公式図録をいま読んでいるのですが、その中で安部ねりのエッセイがありました。安部ねりは、安部公房の一人娘で「ねり」という名前は、宮沢賢治のグスコーブドリの伝記の登場人物から取った、と書いてありました。
宮沢賢治と安部公房の関係も興味深いところですが、安部公房が娘の名をつけたという、グスコーブドリの伝記は読んでおかねばならぬ、と青空文庫で読んでみました。
***
グスコ . . . 本文を読む
倉橋由美子の後期作品、アマノン国往還記を読みました。
モノカミ国からアマノン国へと渡った宣教師Pの物語。架空の世界を舞台に繰り広げられる冒険譚は、『スミヤキストQの冒険』に似た構成です。主人公をPとしたのも、Qとの類似性あるいは連続性を意識したものかもしれません。
女性の目からみた女性化社会が描かれていますが、これも「読者が、現実社会との対応を解釈しようとすること」は倉橋文学の楽しみ方から . . . 本文を読む
ばあさんが、「これ読んでみろ」と机の上に置いてった一冊。
こちらが内容紹介。ばあさんがこれ読めと持ってくるときは、腹に一物があることが多いのですが、これは(我が家でホットな話題の)認知症に関係するシーンが多出するところを読ませたかったのかな、と推察しました。認知症というか介護施設に関わる小説はあまり読んだことがないので、そこらへんは興味深くは読めました。
5つのサブストーリーからなる長 . . . 本文を読む
昭和文学ばかり読んでるとジジイヘッドになってしまうので、たまには近年の本も読まねばと書店散歩中に手に取った一冊。
三島由紀夫賞は、新潮社が取材する芥川賞といった感じの賞で、「文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に授与する」そうです。この賞を受賞作、候補作の作家は芥川賞をとっているケースも多くみられます。
5篇の短篇からなります。
『楽観的な方のケース』近所に出来た美味しいパン屋をめぐる、男 . . . 本文を読む
2024年下期の芥川賞受賞作2作め。
レストランのドリンクバーに置いてあったティーバッグに書かれたゲーテの言葉、この言葉の出典を探す主人公の統一。次々と飛び出す箴言や古典作家の名、最初はペダントリー小説か?と思いつつ読み進めると、現代的なテーマあり、パロディあり、と小説の世界に没入してしまった、面白い。
23歳の作者の知識の背景については、とてつもない才能を感じます。いったいどのくらいの本 . . . 本文を読む
2024年下半期の芥川賞は、上半期に続いての2作品受賞。そのひとつがこのDTOPIAでした。安堂ホセはこれまで読んだことはなかったのだけど、『ジャクソンひとり』、『迷彩色の男』で芥川賞候補に名を連ねていたのは知っていました。三度目の正直といったところの受賞でしょうか。
DTOPIAというのは、テレビのバラエティ番組で、男女がカップリングするまでの過程を映像化したもののようです。昔やってた『パ . . . 本文を読む
昨日の神奈川新聞に共通試験問題が掲載されていたので、ヒマにまかせて国語の問題を解いてみたところ、すらすら解けて(ケアレスミスが一か所あって)98点でした。大学入試問題もずいぶん易しくなったもんだと思って改めて見直すと、大学ではなく高校入試問題だった!ぎゃふん!となりました(古文や漢文の問題が無かったから途中からおかしいなと思った)。
そんなのほほんとした日々を過ごしているのですが、パルタイに続い . . . 本文を読む
このところ安部公房を集中的に読んでいたのですが、あまり安部公房に傾倒すると頭がアバンギャルドになってしまいそうなので、ちょっと休んで他の作家も読んでみようと思ってたところ、どういうわけか浮かんだきたのが倉橋由美子でした。
倉橋由美子といえば、十代の頃に何冊か読んでいたと思うのだけど、内容があんまり思いだせない。それが気になって、久しぶり(40年近くぶり?)に読んでみよっかな、と。どの作品を読んだ . . . 本文を読む