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ツリオヤジのキドニーケアな日々 ~ 知れぬ事は知れぬまゝに、たやすく知れるのは浅い事 (葉隠 聞書第一0202)

赤と黒 上/下 - スタンダール 訳:小林正 (新潮文庫)

2022-10-29 09:42:01 | 読書メモ

先日MAGMAのライブに行ったり、その前からスタンダールを読んでたりと、このところフランスづいてます。特に理由はなくたまたまなんですが...,

この本も翻訳がいろいろ出ていて迷います。
このところカラマーゾフの兄弟や戦争と平和では、光文社古典新訳文庫がむちゃくちゃ読みやすかったので、赤と黒もそれにしようとしたしたのですが、この本に限ってはどうも評判がよろしくない。こちらのWikiやWiki内の引用を読んでみると、どうやら光文社版は避けた方が無難そう。

となると、新潮文庫か岩波文庫なんですが、わたし若い頃から岩波文庫には苦手意識がある(むずかしい本が多い^^;)のでやめにして、慣れ親しんでいる新潮文庫を選びました。

赤と黒は、王政復古時代のフランスを舞台に、野心に燃える若者を主人公とした恋愛小説です。
実在の事件(ベルテ事件)をモデルに書かれた小説だそうで、それを知った時三島由紀夫の金閣寺が想起されました。
主人公ジュリヤンは平民出身ながら明晰な頭脳を持った、自尊心の高い美貌の少年。ジュリヤンはラテン語の知識を買われ、町長の家の家庭教師に赴くことから物語が始まります。
情景描写は少なく、ジュリヤンはじめ登場人物の心理描写が頻出する小説です。

こちら下巻。
上巻のイラスト女性がレーナル夫人で、下巻はラ・モール令嬢でしょうか。

同一人物に複数の呼び名(ラ・モール令嬢=マチルダ)が使われることもあり、慣れるまではちょっと読みにくいです。

後半は、ロシア人のラブレター雛型を使うところあたりから、ストーリーはめまぐるしい変化を見せます。「もうちょっと考えて行動しろよ」と思う場面もしばしばありますが、訳者解説によれば、後半は前述のベルテ事件にに加えマリー・ド・ヌーヴィル事件(貴族の駆け落ち事件)も加味されたとのことで、2つの事件を組み合わせていることから強引な展開を感じるのかもしれません。

王政下における上流階級への皮肉もかなりたくさん含まれていますが、この本が書かれた直後に、7月革命が起こって自由主義社会へと進んだのは、興味深いところです。

最近読んだ中では、読むのに時間が掛かった本でした。最後に付属している小林正氏の解説を読むと、この小説が単なるメロドラマではなく、さまざまな思惑が交錯し、奥の深い小説ということが伺えました。

作者プロファイル。

訳者プロファイル。

新潮社の文庫化は1957年ですが、岩波文庫は1933年。フランスでの発売は1830年と7月革命と同時期ですが、作者注によると、書かれたのは1827年とのことで、巻末にも時系列が詳しく書かれています。

さて、若い頃の読書量の少なさをこの歳になってリカバリーしようと、ここ数年は古典/名作と呼ばれる小説を積極的に読んでいるところなのですが、ここまできたら、モーム先生の挙げる世界十大小説を全部読んでみようという気になっています。残りは5編。

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p.s. 今日明日は原稿書きで家籠り。


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