
第167回の芥川賞は、候補が全員女性作家という珍しい状況。
受賞作の「おいしいごはんが食べられますように」を読んでみました。
タイトルから、たべもの小説か?と思うかもしれませんが、もちろんそんなことはなく、中企業を舞台にした人間模様を描いた作品です。企業勤務経験のある身としては、読んでいて非常に生々しい内容と感じました。
二谷さんと押尾さんという、二人の視点がかわるがわる主体になるストーリー展開がうまく臨場感を出しているのと、芦川さんのキャラクターが強烈に刷り込まれることに快感を覚えながら、一気に読んでしまいましたが、読み終わって、タイトルの「おいしいごはんが食べられますように」という意味がじわじわと染みてくる一冊でした。
選考委員の選評も、人それぞれ個性があって面白かった。
芦川さんについての表現も、「女性が天敵と恐れる猛禽類登場(山田詠美)」「特性のない女(島田正彦)」「最も恐ろしいのは芦川さん(小川洋子)」「ほとんど恐怖小説(松浦寿輝)」「おそらく読者全員をいらいらさせる存在(川上弘美)」、などやはりみなさん、芦川さんのキャラクターが印象的だったと感じます。
そんな中でも、平野啓一郎の書評が(彼らしく、読者に知識を求めますが)、食のハビトゥス(*1)の活用を例に出し、綺麗にまとまっているように感じました。
この書評を読んで、あらためて平野啓一郎の三島由紀夫論を読みたいと思ったのだけど、単行本はいつでるのだろうか。
(*1) 食のハビトゥス (Habitus, 身体知) - 磯野真帆インタビューを参照。
他の候補作は読んでいませんが、タイトルでいくつか気になったこと。
「あくてぇ」の意味は、快速アクティの訛りかと思いましたが、そうではなく「悪態」が訛ったようです。
「N/A」は、ソフトウェア等で使うエラーなんですが、わたしはずっと、Not Avairable (無効) の意味で使っていました。Not Applicable (非該当) という意味もあるんですね、知らなんだ^^;。この小説タイトルは後者のようです。いま改めて調べていたら No Assign (未設定)という意味でも使うようです。
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